益川敏英のレビュー一覧
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今、政府による強引な法改正が迫り、科学者の代表機関である日本学術会議が骨抜きにされかねない危機にあるという。門外漢ながら非常に気になっており、参考のために本書を読んでみた。
最初の2章が、タイトルにある「科学者は戦争で何をしたか」のまとめ。あとの4章は益川先生の思いと未来への提言のような内容。10年前の本なので、当時の安倍政権の暴走ぶりに対する懸念が前面に出ている。そんな中でも、世界はきっと良い方向に進むはずだと考える益川先生の、人間を信じる明るいご気性が感じられる。200年後には世界から戦争はなくなっているだろうと予想されている。10年後の今の世界の状況をご覧になったら先生はどう思われただろう。
科学が戦争に利用されてはならないという思いには心から同意するけれど、それは人間生活のすみずみにまで科学が広がり発展している現代では、もはや実現不可能な理想にすぎないようにも思われ、非常に悩ましい。科学者の良心だけに頼っていてもおそらく無理なので、オープンな相互監視のルールを作るなど、新しいシステムが必要かもしれない(しかしそんなことをしても無駄かもしれない)。 -
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ネタバレノーベル賞を受賞した益川敏英さんの15歳の寺子屋。フラフラしてもいい、興味を持ったことにあちこち足を踏み入れればいいんだよ、という考えから来ている題名。益川さんの場合、物理、数学、科学などの間をフラフラしていたわけだから、決して一般人が想像するフラフラではない。
フラフラの仕方がとてもかっこいい。
益川さんの教えは主に3つ。
人生の基礎力を鍛えよう。
世の中の動きに関心を持とう。
平和の大切さ。
これだけの天才の方が、すべての教科の基礎力をしっかり学ぶことが大切と言われてい。その理由も、子供たちにもわかりやすく書かれてあった。
以下、備忘録。抜粋。
◯夢中になる対象は、その時その時で変わっていいから、何にでも首を突っ込んでフラフラしてください。
◯高校時代までの先生というのは、知識を教えるから教師としての価値があるのです。でも、大学の先生にとっては、知識の有無はさほど重要ではなくて、研究とは何か、その方向性を示すことが重要だったのです。「わからないことがあったら、自分で調べ、自分の頭で考えるんだ」と、目から鱗が落ちました。56
◯激変の時代を生きていくには、今後、20年先、30年先を見通せるだけの視野の広さと、多様に変化していく社会に対応できる基礎的な知識を身に付けることだと僕は考えます。理科系の人も、文化系の人も、どんな科目もしっかりと基礎を学ぶよう心がけてください。日本語の勉強にあたる英語の「study」の語源には「知る楽しみ」という意味があるそうです。僕はこの「study」にこそ本来が学ぶことの意味が込められていると思います。自分の知らないこと、知りたいことが理解できるようになるというのはとても楽しいことだからです。ですから、僕は皆さんには、学校の教室を勉強する場ではなく、新しい知識を「study」しながら吸収していく場として考えてほしいと思います。68
基礎知識の大切さ
発明クラブの少年たちの発明を見せてもらった後、こんな話をした。「君たちの発明はなかなか面白かったけど、あれは科学遊びであって、その延長線上に科学があると勘違いしてもらっては困るんだな。現代の科学は想像を絶するほど進歩しますから、きちんと基礎から勉強してほしいな」70
今皆さんが学校で学んでいる事は、社会に出ていくための下準備なのですが、その下準備の中にぜひ「世の中の動きに関心を持つということも加えて欲しい。89
日本が進んでいく方向に賛成するのも反対するのも、それは皆さんの自由です。ただ、自分の意見をはっきり言えるだけの力を養っておいて欲しい。自分の意見をはっきりと言えるように、世の中の動きを理解するための基礎力も、今のうちから是非身に付けておいて欲しいのです。89
あまり早い時期に人生の目標を設定する必要はありません。フラフラと迷いましょう。大切なのは、自分から第一歩を踏み出すことだと思います。そしてその瞬間に1番重要だと思えることに、全力でぶつかってみることです。 -
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ネタバレ科学の発展を人類の幸福のために。
先日亡くなった益川敏英氏の著作。戦争を経験した世代だからこそ、反戦・平和運動に取り組む先輩の姿を見たからこそ、著者は声をあげる。研究だけに没頭してはいけない、科学者も社会運動を、科学は中立で良いものにするか悪いものにするかは人次第だ、と。
兵器につながる発見でノーベル賞を受賞した人がいる。それはある意味当然のこと。科学は中立だから。しかし軍事研究としてお金が出るのなら、明らかに政府から協力を求められたら、自分の研究のためにできる判断は何なのだろう。デュアルユースのジレンマを考える。
著者の不安を現実にしないように、ぜひ科学の道を志す人に読んでほしい。そしてノーベル賞のニュースに簡単に「素晴らしいですね」とコメントする私たちが、きちんと政治を見つめられるように、もっともっとたくさんの人に読んでほしい。 -
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ノーベル物理学賞を受賞した益川さんの自伝です。収録されている文章の初出は,2016年1月~3月まで『東京新聞』『中日新聞』に連載したものです。
益川さんと言えば,受賞当時には歯に衣着せないもの言いで,なかなかユニークな談話を発表していました。ノーベル賞のスピーチの際に過去の日本の戦争に言及したところ「不謹慎だ」「賞になじまない」と騒がれたことをもネタにして,今の日本の危うさにも言及しています。そもそも「ノーベル賞」とは,ノーベル自身が発明したダイナマイトによる大量殺人を憂いた彼の遺産を元にできた賞であり,まさに,最初から平和を願う賞なのですから。
好きなことができると夢中になるという勢いが,ノーベル賞を受賞するほどの業績を上げることに繋がったんだなあということがよく分かります。師匠である坂田昌一先生とのやりとりも面白い。坂田先生の早世は残念でなりませんが。
小学校の宿題はせず,あげくに苦手な英語は捨て,大学院の入試試験でもドイツ語の答案を白紙で出した。研究者になって結婚してからも物理の謎解きと組合活動に明け暮れた。少し早く帰宅するようになったかと思えばオーディオに凝り,家じゅうにスピーカーを置いてクラシックばかり聴いていた。(p.212)
だからといって,小学生から宿題をしない子とだけを真似をしてもダメだけれども,好きなことにとことん取り組む姿勢は,どんどんマネしてほしいです。 -
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ノーベル物理学者の益川教授とiPS細胞発見者の山中教授の対談をまとめたもの。日本を代表する学者の考え方が分かる面白い本であった。両者ともユニークな性格の変わり者で、変わった経歴を持っていることがわかった。印象的なフレーズを記す。
「染色体の端っこには「テロメア」と呼ばれるしっぽのような部分があって、分裂を繰り返すたびに短くなっていきます。テロメアがある長さまで短くなると、細胞はそれ以上、分裂できなくなる。つまり、細胞の老化が最後まで進んだことになるわけです」
「今のテレビは、外側のことはわかるけれど、中にどんな装置が入っていて、どういうしくみで動くのか、ほとんどの人にはわからない。皮肉なことに、科学が発展すればするほど、科学的な事柄が人々の生活から乖離していく。僕(益川)はこのことを「科学疎外」と呼んでいる」
「(益川)科学の基本は国語ですよ。何にしてもすべての文章の言葉から入ってくる。読んでその世界が頭に浮かべられるかどうか。その力があれば、理解していける。そのあとは、吸収した知識を頭の中で思い描いて発展させていけるかどうか」
「振り返ってみると、そもそも整形外科医だったのが、ノックアウトマウスを使って動脈硬化の研究をするためにアメリカに留学し、気がついたらむこうでは癌の研究をしていましたし、癌の研究をしていたはずが日本に帰ってきたら今度は万能細胞を研究していました。自分の中では、その時々の研究結果から興味の対象がどんどん変わっていき、それに従って行動しているのですが、フラフラしているようにしか見えなかったかもしれません」
「(山中)今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠されているのかもしれません」
「(山中)科学者が成功するためには、良い実験をすることだけでなく、いかにしてその実験データをきちんと伝えるかという「プレゼンテーション力」にかかっている、というのが私の持論です。自分の持っているデータや研究成果を、いかにして発信するかということが大切なのです」
「(山中)欧米の研究機関では、プレゼン力、ディベート力、ディスカッション力を非常に重視します。自分の考えをきちんと示すことが、大切な技量だと考えているんですね」
「(山中)今も月に数日はアメリカに滞在しています。情報収集という意味でも、アメリカの科学のソサエティにまったくはいっていないというのは非常に不利なんです」
「(山中)日本人は概して勤勉ですから、努力は得意だと思いますが、明確なビジョンをつい見失いがちです。夜遅くまで実験や論文書きや諸々の仕事に追われていると、「自分はすごく頑張っている」と思い込み、満足してしまう。ふと気が付くと、何のためにその努力をしているのかわからなくなっている、ということも珍しくありません」
「(益川)壮大で奥深い自然現象を前にした時、科学者なら当然、徹底的な批判精神をもって接するべきです。「超常現象(超能力)」や「神」に説明を求める輩など、いうまでもなく、まったく信用できない。なぜこういう現象が起きたのか、あらゆる可能性を考えなければならない」 -
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まるっきり文系の自分にも、科学の面白さを感じさせてくれた一冊。まだメカニズムが解明されてないことが、こんなにあるのか、と純粋に驚いた。
もっと生命科学や物理科学のことについて知りたい!という気持ちになる。
対談形式の本って読みやすい。特に馴染みのない分野に踏み出したいときはまず対談の本から入ってみると良いかも。
CP対称性の破れ
ビックバンで、粒子と反粒子が同じ数だけ作られた。粒子と反粒子がぶつかって光になって消えていく中で、光にならずに消え残った粒子がある。宇宙も、地球も、人間も、その消え残った粒子から生まれたものである。
なぜ消え残った粒子があったのか?の理由は、クォーク(粒子よりさらに小さい物質の最小単位)を使って説明ができる。6つのクォークがあることを発見したのが、小林・益川理論。
ヤマナカファクター
細胞を初期化させるのに必要な4つの遺伝子 -
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ネタバレ共にノーベル賞を受賞している2人の著名研究者が、自分たちの研究を振り返りながら、様々なトピックについて話している本書。
言わずもがな、示唆に富んだ発言の連続であるが、特に印象に残った発言は以下の通り。
「研究はフェアである。(山中 p.98)」
「実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果なんです。自分が予想していないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。(益川 p.99)」
「肯定のための否定の作業(益川 p.188)」
ノーベル賞受賞など、側から見れば華やかな経歴を持っているように見えるが、本書を読むとお2人とも壁にぶつかった経験があることが分かる。しかし、同時に誰よりも研究を楽しみ、真理を探求するべく、真摯に研究に向き合っている姿に感化された。 -
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ノーベル賞を受賞したとき「たいして嬉しくない」と言った益川博士だが、受賞して本当に良かったと思う。
理論物理学は一般人にはよくわからない人が多いから、たとえ学会で認められていても、ノーベル賞がなかったらこういう本は出せなかっただろう。世界が認める一流の科学者だからこそ、政府やマスコミなど気にすることなく言いたいことが言える。どんどん言って、益川さん!(テレビで益川さんが特定秘密保護法を批判したら、すぐにわざわざ名古屋まで外務省の役人が来て「先生が心配されるようなことは一切ない」と言ったそうだが、それ、本当に言いたかったのは「マスコミでそういうことを言わないでくれ」ってことでしょう。一般人ならそういうことをされるとビビって自粛してしまうが、益川さんは全く意に介さず。素晴らしい。)
「科学者である前に人間であれ」という信念のもと、デュアルユースの問題ももちろんわかった上で、科学者だからこそ高い倫理観を持ち、自分の研究の利用のされ方を、未来のために考えなければならないというメッセージは、研究者にも読んで欲しい。
自身の戦争体験だけではなく、師であった坂田昌一の教えも大きく影響したことが何度も出てきており、もし学者としては一流であっても倫理観の低い師であったらと考えると、若い時に出会う先達の重要性がわかる。高い能力で戦争に荷担した科学者のことも語られている。
たいへん平易な言葉で語られているので、中学生でも読めると思う。
益川さんには、元気で長生きしていただきたい。 -
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シンプル2000自叙伝シリーズ「THE益川敏英伝」
益川先生がこうやって生きろ,と教えてくれる本.
やはり,他の著者に比較してこういう文章を書き慣れていない感じがする.
メッセージは,
「自分の夢を追い求めてください」
「自分自身をみつめてよく考えてください,何が好きで何に興味があって何をやりたいのか」
「本当に自分が欲していることを固めて,やりたいことに邁進する人生をみんなに歩んでほしい」,とのこと.
メッセージも論拠も,基本的に益川先生の経験に基づくもので一般性抽象性はない.だからこそ,この本には価値があるのは勿論である.益川先生はぶっ飛んだヤバい人であるという印象は受けないけれども,「かなり普通とは違う,人格や環境で人生を送ってきた人」の思考法や意思決定手段,価値観,何に重きを置いてどういう工夫をしてきたのかが,この本で垣間見れる.
これこそ,益川先生の述べる自分力であろう.
自分を知り,自分の得手不得手,やりたいことを知る.
これは良い人生を送るために最も重要なことなのである,という主張は鬼才が述べていることの中でも最も一般性・抽象性のあることであろう.
それが集中力を発揮し,自分にとっての成功を導く最も近道なのである. -
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ネタバレ対談でわかりやすい。iPS細胞と小林・益川理論の概要も理解できる。
<iPS細胞>
分化して皮膚や筋肉になった細胞を受精卵ができた瞬間まで戻す。皮膚などの細胞に「ヤマナカファクター」と呼ばれる4つの遺伝子を放り込むと、iPS細胞になる。膨大な数の遺伝子からこの4つの遺伝子を発見したことがすごい。(現在は4つのうち癌を起こす可能性のあるc-Mycを除いた3つでiPS細胞を作り出す手法が開発された。)
おまけ:iPS細胞の名前の由来
iPS細胞はinduced Pluripotent Stem cellの略。"i"が小文字なのは、iMacやiPodにあやかろうという気持ちが多少あったそう。また先に開発されたES細胞は二文字で覚えやすかったので、文字の見た目のイメージとしてそれに近づけたかったそう。
<小林・益川理論>
受賞理由は「クォークが自然界に少なくとも三世代(六種類)以上あることを予言するCP対称性理論の破れの起源の発見」という。=「約137億年前、ビッグバンによる高温で粒子と反粒子が同じ数だけ作られました。粒子というのは、物質を形作る基本構造です。反粒子というのは、粒子と正反対の性質を持っています。粒子と反粒子は、ぶつかると光になって消えていきますが、ほんの少しだけ、光にならずに消え残った粒子がありました。宇宙も、地球も、人間も、その消え残った粒子から生まれたものなのです。」益川さんはこの説明をする時、生徒一人一人に赤か青の風船を持たせる。赤は粒子、青は反粒子で、それぞれの風船を持った生徒がペアになる。益川さんは教室を回りながら、ペアになった風船をピンで割る。すると、最後に赤い風船を持った生徒が残る。この赤い風船がCP対称性の破れ。宇宙も人間もそこから生まれた。
CP対称性の破れの謎を解く鍵はクォーク(粒子よりさらに小さい物質の最終単位)にあると考えていた。当時のクォークはu(アップ)d(ダウン)s(ストレンジ)の三種類しか見つかっておらず、それではCP対称性の破れをうまく説明できなかった。もう一種類増えて四つになればうまい理論ができるのではないかと考えられていた。しかし四元クォークモデルではいくら考えてもうまくいかないので、「六つにしたらうまくいくんじゃないか!」と閃いたのがすごい。その後、実験でクォークが見つかっていく。