益川敏英のレビュー一覧
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ネタバレ科学の発展を人類の幸福のために。
先日亡くなった益川敏英氏の著作。戦争を経験した世代だからこそ、反戦・平和運動に取り組む先輩の姿を見たからこそ、著者は声をあげる。研究だけに没頭してはいけない、科学者も社会運動を、科学は中立で良いものにするか悪いものにするかは人次第だ、と。
兵器につながる発見でノーベル賞を受賞した人がいる。それはある意味当然のこと。科学は中立だから。しかし軍事研究としてお金が出るのなら、明らかに政府から協力を求められたら、自分の研究のためにできる判断は何なのだろう。デュアルユースのジレンマを考える。
著者の不安を現実にしないように、ぜひ科学の道を志す人に読んでほしい。そし -
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ノーベル物理学賞を受賞した益川さんの自伝です。収録されている文章の初出は,2016年1月~3月まで『東京新聞』『中日新聞』に連載したものです。
益川さんと言えば,受賞当時には歯に衣着せないもの言いで,なかなかユニークな談話を発表していました。ノーベル賞のスピーチの際に過去の日本の戦争に言及したところ「不謹慎だ」「賞になじまない」と騒がれたことをもネタにして,今の日本の危うさにも言及しています。そもそも「ノーベル賞」とは,ノーベル自身が発明したダイナマイトによる大量殺人を憂いた彼の遺産を元にできた賞であり,まさに,最初から平和を願う賞なのですから。
好きなことができると夢中になるという勢い -
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ノーベル物理学者の益川教授とiPS細胞発見者の山中教授の対談をまとめたもの。日本を代表する学者の考え方が分かる面白い本であった。両者ともユニークな性格の変わり者で、変わった経歴を持っていることがわかった。印象的なフレーズを記す。
「染色体の端っこには「テロメア」と呼ばれるしっぽのような部分があって、分裂を繰り返すたびに短くなっていきます。テロメアがある長さまで短くなると、細胞はそれ以上、分裂できなくなる。つまり、細胞の老化が最後まで進んだことになるわけです」
「今のテレビは、外側のことはわかるけれど、中にどんな装置が入っていて、どういうしくみで動くのか、ほとんどの人にはわからない。皮肉なこ -
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まるっきり文系の自分にも、科学の面白さを感じさせてくれた一冊。まだメカニズムが解明されてないことが、こんなにあるのか、と純粋に驚いた。
もっと生命科学や物理科学のことについて知りたい!という気持ちになる。
対談形式の本って読みやすい。特に馴染みのない分野に踏み出したいときはまず対談の本から入ってみると良いかも。
CP対称性の破れ
ビックバンで、粒子と反粒子が同じ数だけ作られた。粒子と反粒子がぶつかって光になって消えていく中で、光にならずに消え残った粒子がある。宇宙も、地球も、人間も、その消え残った粒子から生まれたものである。
なぜ消え残った粒子があったのか?の理由は、クォーク(粒子よりさら -
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ネタバレ共にノーベル賞を受賞している2人の著名研究者が、自分たちの研究を振り返りながら、様々なトピックについて話している本書。
言わずもがな、示唆に富んだ発言の連続であるが、特に印象に残った発言は以下の通り。
「研究はフェアである。(山中 p.98)」
「実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果なんです。自分が予想していないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。(益川 p.99)」
「肯定のための否定の作業(益川 p.188)」
ノーベル賞受賞など、側から見れば華やかな経歴を持っているように見えるが、本書を読むとお2人とも壁にぶつかった経験があることが分かる。しかし、同 -
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ノーベル賞を受賞したとき「たいして嬉しくない」と言った益川博士だが、受賞して本当に良かったと思う。
理論物理学は一般人にはよくわからない人が多いから、たとえ学会で認められていても、ノーベル賞がなかったらこういう本は出せなかっただろう。世界が認める一流の科学者だからこそ、政府やマスコミなど気にすることなく言いたいことが言える。どんどん言って、益川さん!(テレビで益川さんが特定秘密保護法を批判したら、すぐにわざわざ名古屋まで外務省の役人が来て「先生が心配されるようなことは一切ない」と言ったそうだが、それ、本当に言いたかったのは「マスコミでそういうことを言わないでくれ」ってことでしょう。一般人なら -
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シンプル2000自叙伝シリーズ「THE益川敏英伝」
益川先生がこうやって生きろ,と教えてくれる本.
やはり,他の著者に比較してこういう文章を書き慣れていない感じがする.
メッセージは,
「自分の夢を追い求めてください」
「自分自身をみつめてよく考えてください,何が好きで何に興味があって何をやりたいのか」
「本当に自分が欲していることを固めて,やりたいことに邁進する人生をみんなに歩んでほしい」,とのこと.
メッセージも論拠も,基本的に益川先生の経験に基づくもので一般性抽象性はない.だからこそ,この本には価値があるのは勿論である.益川先生はぶっ飛んだヤバい人であるという印象は受けないけれども,「か -
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ネタバレ対談でわかりやすい。iPS細胞と小林・益川理論の概要も理解できる。
<iPS細胞>
分化して皮膚や筋肉になった細胞を受精卵ができた瞬間まで戻す。皮膚などの細胞に「ヤマナカファクター」と呼ばれる4つの遺伝子を放り込むと、iPS細胞になる。膨大な数の遺伝子からこの4つの遺伝子を発見したことがすごい。(現在は4つのうち癌を起こす可能性のあるc-Mycを除いた3つでiPS細胞を作り出す手法が開発された。)
おまけ:iPS細胞の名前の由来
iPS細胞はinduced Pluripotent Stem cellの略。"i"が小文字なのは、iMacやiPodにあやかろうという気持ちが -
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著者の益川敏英氏は、2008年ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者です。受賞時のインタビューに対するコメントを聞いたときからちょっと気になっていた方でしたが、この著作も大変興味いものです。
取り上げているテーマの流れで極めて政治的なイシューにも言及していますが、そこには「科学者」であると同時に「市民(人)」としての立場からの氏の考えが開陳されています。
益川氏の立論は、極めて明確かつシンプルなので、その掘り下げ方という点では少なからず物足りなさを感じるところはあります。しかしながら、自らの信念を強く抱き、その信ずるところを目指して先頭に立って行動する姿は、決して否定されるものではないと