徳冨蘆花のレビュー一覧
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ネタバレ明治を生きる夫婦の悲哀。時代に翻弄された男女の切なく悲しき物語。映画化すると、こんな感じのキャッチコピーになるだろうか。プロットを辿るとそんな感じだ。確かに読んでて涙溢れた。浪さんが自殺しようとするあたりとか小川さんの語りとか。
深い考察は解説を読んでなるほど、と思った。あんなに深い読解力があれば楽しいだろうな。。
もうおんななんぞにうまれはしない。。。
この作品で最も有名な浪子の臨終間際のセリフ。
自分の不幸が女に生まれてしまったことに起因することを嘆いての言葉。
明治時代、お家の慣習が根強い男性中心の文化。
浪子と離縁を薦める母に対して、武男が逆の立場(武男が結核)で向こうから離縁されて -
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儚い生命が病に手折られる哀しさ、二人の仲が引き裂かれる運命の残酷さ。悲運に悲運が重なる浪子が哀れ。
いわゆるお涙頂戴もので、全体的にひたすら浪子が可哀想なのですが、論理的な矛盾を指摘したりするのでなく(だって武雄にも情熱の足りなさを感じるし家制度も腹が立つし、何もここまで浪子に辛苦をなめさせなくてもと思う)、絶望に出会った人物達の心の動きや表現を鑑賞するべきです。
万一この後もし武雄が再婚してもいいんだよ!だって今のこの愛はまぎれもない本物で最高潮だったのだから。
手紙に「玉章とる手おそしとくりかえしくりかえしくりかえし拝し上げ」る浪子。さびしく微笑し妹の為に派手な着物を選ぶ浪子。
愛の -
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1900(明治33)年刊。
明治期の日本文学の名作としてよく知られた作品ながら、地の文が文語調であるために私は敬遠してこれまで読まなかったようだ。
本作について、たぶん日本的な微妙な情緒のたゆたう芸術性の高いもの、と勝手に予想していたのだが、どうもそのニュアンスとは異なり、むしろ尾崎紅葉に近い、骨太なストーリー性の強い、ドラマチックな物語であった。
文章はもちろん今風のものと比べれば、文語体なだけに格調は高いようだが、さほど「芸術的」とも思えなかった。当時の読者にとっては平易な文章だったのではないか。完了の助動詞「つ」がやたら出てくるのが気になった。ただの過去形で良さそうなのだが・・・ -
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大学の講義のために購入。
実は最近、初めて恋をして、失恋しちゃったんですよね。そんなセンチメンタルな私が浪子と武男の夫婦生活を見ててると、自由な恋愛を求めることができないことに心苦しさを感じましたね。
「不如帰」の時代は明治。新たな文化が欧米から入ってくる。それは思想も同じ。自由に恋愛して結婚できることなんて新しい価値観だった。当時は結婚は本人同士だけで決められるものじゃなかった。離婚もそう。こうした新しい価値観と古くからある日本の価値観とのズレが2人の仲を引き裂いてしまった。そして、女性の地位が低かった当時だからこそ最期の浪子の叫びは多くの女性の心を掴んだのではないだろうか。愛に飢えていた浪 -
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ネタバレ徳富蘆花―不如帰
学校で習うような小説なんて、説教くさいのかと思いきや、これ、完全に昼ドラマです。
夫婦仲は、当時としてはびっくりするほどよい。
ところが、彼ら二人の周囲には敵がたくさんいるのです。
意地悪なお姑さん、冷たい義理の母ーこれが浪子サイド。
育ててもらった恩も忘れて逆恨みする従兄弟、娘可愛さに浪子と別れさせようと画策する出入りの商人山木ーこれが武男サイド。
従兄弟と山木はあくどい商売で繋がってもいる。
そして、従兄弟の千々岩は浪子に横恋慕してるのざます。
浪子の父は心から浪子のことを慈しんでいるけれども、しょせん父親。
しかも戦時中の軍人。
肝心な時にはいない。
それは武男も -
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『金色夜叉』よりも読みやすかった
「家を守る」ということを重んじる
今の感覚ではあまりピンとこないけれど、当時の読者はどうだったのでしょう
姑のあまりに強引なやりかたに憤りつつも、矢張り仕方がないと思い、引き裂かれた浪子・武男夫婦の不幸に涙したのでしょうか
当時、女性、それも家における子を持たない嫁の立場がどれほど低いものだったのかということ
いろいろなタイプの女性が出てきて面白かった
個人的には千々石が凄く好きだったんですけれど
子供時代の不幸な境遇という点では、彼も浪子に劣らずな感じなんですが
解りやすい悪人に書かれてたけれど、彼にも同情の余地はある、 -
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●幸にして純粋な愛情を分かち合った武男と浪子。武男の母親や従兄弟らが勝手に膨らました嫉妬や私利私欲が、時の家族制度と世間体、仕事や戦争などに乗っかり、二人の間は意思とは反対に引き裂かれてしまう。武男は結核を理由に浪子との離縁を推し進めた母親に異議を唱えるも、その行動自体は、親と仕事への忠義を、妻への愛より優先させたことになる。外界なる家・親・仕事と、個人の意思とのパワーバランスが、この小説ではテーマの一つなのだろう。時代は令和となり、明治より多少は個人を優先できる世の中になってきているようだが、まだまだ滅私他者優先が盤石な時代であることは否めない。否、意思を主張する自由と術とは別もので、相変わ
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嫁姑・結核・戦争・父系社会・その他旧弊など、古い価値観や理不尽な環境で引き離される悲恋譚。かなりの胸糞展開と聞いていたため、感情移入し過ぎるのが怖くて一歩引いた視点で読んでしまったので、少し後悔している。
新聞連載の開始は1898年、これは現行法である民法が定められた時期(1~3編:1896年、4・5編:1898年)と重なる。明治維新に伴うハード・ソフト両面の西洋化に伴い、新旧の価値観が激突する時代だったことが想像できる。この小説の中でも、今では考えにくいような価値観が随所にみられる。そもそも物語の根幹部分である、結核になった嫁さんを家に帰すとか、姑の執拗ないびりであるとか(これは不幸な