石川啄木のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こんな乾いたかなしいひとはランボーの他知らない。
ランボーは宇宙に突きぬけることで、戻らずに行ってしまったが、この石川啄木は違う。どこまで行ってもおんなじところに帰って来てしまうのだ。だから、どうしても乾いてしまう。彼の心を癒やすものはなにもない。書くことさえも、ときには重たく彼を掴まえる。ここではないどこかへ。彼はそんな場所を探し求めて歩いていたのかもしれない。
彼の生涯には、貧困という大きな問題が何よりもつきまとっていたのかもしれない。しかし、彼はそれさえも、突き抜けて歌い続ける。彼にとって歌うことはそのくらい、自分自身であったからだ。ならば、どうして、自分は歌わずにいられないのか。彼はそ -
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啄木の歌は、国語の教科書なんかで、みなさん一度は目にしたことがあると思います。
不来方(こずかた)の お城の草に
寝ころびて
空に吸はれし 十五の心
これは青春の爽やかさを歌った名首ですよね。心までもが空の青さのように染まっていくような、清涼感。ちなみに啄木は、この不来方のお城へ、ちょくちょく授業を抜け出しては寝転んでいたそうな。なんだか明治の尾崎豊みたいな感じですね。
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たはむれに 母を背負ひて
そのあまり 軽きに泣きて
三歩あゆまず
これは切ない歌です。冗談半分で母親をおんぶしてみたら、その体重のあまりの軽さに、病の重さを悟り、涙が出て歩みを止めざるを得なかった…。啄木の人柄が -
Posted by ブクログ
作者の生い立ちや時代背景はよく知らずに、有名だから読んでおこうと軽い気持ちで手に取った。
かなしい、さびしいと感傷的な歌が多い中で、私の好みである風景描写メインのほんのり心を乗せたような歌もいくつかあったので書き出しておく。
p18
やわらかに積れる雪に
熱てる頬を埋むるごとき
恋してみたし
p71
汽車の窓
はるかに北にふるさとの山見え来れば
襟を正すも
p115
吸うごとに
鼻がぴたりと凍りつく
寒き空気を吸いたくなりぬ
p126
朝の湯の
湯槽のふちにうなじ載せ
ゆるく息する物思いかな
p130
よごれたる煉瓦の壁に
降りて融け降りては融くる
春の雪かな