高浜虚子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
高浜虚子による、正岡子規と夏目漱石の回顧録。
子規の母堂の言うように「升(のぼ:子規)は、清さん(虚子)が一番好きであった」この言葉から分かるように、虚子は若い頃から、子規が最も愛情を注ぎ、また自分の後継者にしようとした愛弟子であり、弟のようでもあった。その二人の濃密な関係が細やかに描かれている。
それに反して、漱石との回顧はかなり冷やかに描かれており、面白い対比である。
虚子にとっての漱石は、元々は尊敬する先輩であったが、虚子がホトトギスの編集を引き受けた後に、漱石に文の掲載を頼んだ。これが「吾輩は猫である」の誕生となる。この小説が爆発的なヒット作となり、それによってホトトギスの売り上げが伸びる結果となった。この事が漱石と虚子の関係に微妙な変化を与えてゆく。
つまり、売れっ子作家と編集者という関係に代わって行く。
またこの本では述べられていないが、虚子は元々俳人ではなく、小説家になりたかったのだが、中々上手く行かず、ポッと出の漱石が小説家として華々しくデビューしてしまった。この事が恐らく虚子の心の中に屈折したものを生み、漱石に対しての表現に繋がっているのだと容易に想像出来る。
この回顧録の中でも漱石の言動に対してかなり批判的な箇所が随所にある。(但し漱石も精神に異常を来たしているので虚子の言うような事実はあったろうと思われる)
そういう背景を考えながら、この回顧録を読むと、別の面白さが出て来るのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ俳壇の巨匠が自ら初心者相手に俳句の手ほどきをした超入門書です。
まず、文字を17文字並べる事から入り、段々と核心に入って行く。
初心者が俳句を作る第一歩として「季語(題)」とは全く関係のない他の事を連想して、その後季語と関連づけよと。感興とか感激とは無縁だが、平凡な句を避けることが出来る。
最近俳句を作り始めた私は、なるほどと一人合点しています。
その段階を経た後に「じっと眺め入ること」⇒「じっと案じ入ること」とあり、この段階に行くのはいつの事やら・・・
「折々のうた」の著者の大岡信が「愉快な虚子」という文を書いています。
その中で、虚子の若い頃の俳句で「陽炎がかたまりかけてこんなもの」等々の句を取り上げて、「こういうものは、一所懸命勉強すれば、出来るというものではないので、どうしようもない」
「虚子の場合にはことばの塊が自分の内側にあり、興味を持ったものを目にした時に、その瞬間にことばがスーと出てきて、俳句という形をなす」
まあ、何というか、初心者の私を絶望に陥れるような文章ですが、事実はそうだろうなと思います。