倉田百三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
親鸞の後半生を、弟子の唯円の視点から綴った戯曲。20世紀初頭にあって、浄土真宗の教えとキリスト教的慈愛と赦しとが通ずることを見抜いていた倉田百三の慧眼に感服します。
親鸞の教えは、とても純情です。
印象的だったのは恋愛に関する箇所。親鸞と唯円とのやりとりは、現代人の感覚でいえばウブだと思われるかもしれません。でも「何人も異性と関係を持った方が、経験値が上がる」とか「童貞乙www」なんてうそぶく人間よりも、親鸞や唯円はよほど愛について真剣で本質的なのだと思います。
ほんの200ページだけど、仕事や恋愛、親子関係や死など、言及されるテーマはとても広いです。まっすぐさ、純情さに胸を打たれました -
Posted by ブクログ
非常に有名な戯曲作品だが、これまで読んだことがなかったのは、戯曲自体がさほど好きではないためと、宗教がテーマになっているのでつい敬遠してしまったためかもしれない。
しかしこれは日本文学が誇るべき傑作だった。誰もが読んでおくべき本である。
親鸞が登場し、一応浄土真宗の思想をベースにしているが、厳密に史実を追っている訳でもないし、浄土真宗を専門的に解説しているわけでもない。どうやら、この作品での親鸞の思想は、仏教とキリスト教が混ざり合ったような、一種の普遍的な「宗教」イメージである。その点、仏訳版に際しロマン・ロランが書いてある通りだ。
しかも宗教のドグマを一方的に示してくるわけではない。市井の人 -
Posted by ブクログ
・・・・・書きかけ・・・・・
倉田百三は、ちょうど120年前の1891年(明治24年)2月23日に広島県の北東部にある庄原市で生まれた劇作家・評論家。
この本は、かつて教養主義的な香りたっぷりに、真剣に人生とは何かと真正面から問いかけ、悩み苦しんで感受性と思索を鍛え上げて自己を確立していこうとした若者たちが、思春期の必読本あるいは青春のバイブルみたいな感じで読んできた、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』や山本有三の『路傍の石』、阿部次郎の『三太郎の日記』などの系譜に連なる重要な著作だったのですが、教養や自己の確立よりも功利的実利的な価値観の支配する現代では、ほとんど誰も見向きもしない本か -
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初めて読んだのは高校生のときだった。圧倒されるような感動を覚えた本。その後も、何度か読み直しているんだけど、今回読んでみて、やはり心に食い込むものがありました。圧倒されるような・・というのとは違う印象になったんだけど、心洗われるような。それぞれの人物の想いがすごくすんなりと読者に伝わってくる。
ずれちゃうんだけど、ここのレビュー見てたら、カラマーゾフのゾシマ長老とアリョーシャみたいな。。というのがあって、この本を読む前に、またカラマーゾフを読み終えたところだったので、私ってこういう路線?がすごい好みなんだろうか。。とか思ってしまったー。こうなんていうか、ぐいぐいぐいぐいと突き詰めていく感じが -
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法然から親鸞へと受け継がれた浄土信仰について解説している本です。
著者は、法然と親鸞のそれぞれの生涯について概観し、『一枚起請文』と『歎異抄』によって両者の信仰の内実にアプローチを試みています。そのさい、この二人の宗教家の資質のちがいに目が向けられ、「法然がいきなり親鸞のような性格であったとしたら、必ず、世間の誤解を招き、障りを生じ、余程の公明な、寛裕な人であっても、今日においてすら、なお浄土門の信仰を受け容れる事を躊躇したに相違ない」と述べるとともに、「もし法然の後に親鸞が出て、その信仰の本質を忌憚なく徹底せしめなかったら、法然の信仰は、恐らく法然の不徹底であった方向に発展して、自力、精進