石垣りんのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
石垣りんの代表的な詩をいくつか知っている程度で読んだ。
石垣さんは14歳で銀行に就職し、定年まで働いた。
ほとんど昇進はしなかったが、これはもちろん当時の日本の会社が女性を男性と同等に扱っていなかったからである。
石垣さんが詩人としてどれほど才能があっても、結婚も出産もしなかったから「君は半人前だ」といい放つ上司、「なぜ結婚しないのか」で書かせる雑誌編集者と付き合わざるを得なかった。ホント、何様だよ、と怒りが湧くが、石垣さんや当時の女性はうんざりするほどそういう扱いを受けてきたのだろうと思うと暗澹とする。そんな毎日の中、感じたことが詩となり、エッセイとなったのだから、よしとすべきか?いや、そんな毎日がなかったとしても石垣さんは詩を書いただろう。違う詩になっただろうけど。
私ならあからさまに怒ったり悲しんだりしそうなところを、ぐっと押さえて余韻を残す文章にできたのは流石と言うしかない。
梅の木肌に手を置いて「また来年の花に会わせてください」と願い、「春は来るのではない、生きてこちらが春に到達するのだ」(p131)。
「納められる税金を「せつなく」受け取って、大事に使ってくれる」政治家はいないのか。(p249)
「さしあたっての希望は、欲しがらない人間になりたい、ということ。誰が何をしてくれなくても。さみしかったら、どのくらいさみしいか耐えてみて、さみしくゆたかになろうと―。」(p57)
これらの言葉を忘れないようにしたい。 -
Posted by ブクログ
これは、interesting!興味深いというべき。
戦前戦後を、職業婦人として丸の内の銀行で働きながら、物書きをしていた著者が、仕事を辞めたあと人生を振り返って書いた短編集。
日経WOMENの特集で、「ポストライムの舟」で芥川賞を受賞した津村記久子さんが推めていたから、読んでみたら、良い感じです。
彼女の生きた時代は、今とは生活感も違えば、女性の地位がまだ低くお茶汲みや集金も女性の仕事だったはずなのに、その仕事に対するスタンスと、物事の評し方には脱帽せざるをえません。
気に入ったエピソードをいくつか。
○ハンドバッグを持って通勤する女性を評した「宿借り」(P10)
○彼女の仕事に対するスタンスの根本的な部分をつづった「事務員として働き続けて」(P95)
また、彼女は同僚として仲間としたい人として、「働く以上しなければいけない地味な仕事を果し、日常の挨拶など上下の区別なく、男女の区別なく、気持よくとりかわし、女性でいて女性をバカにしてかかることのない人」、と言っていますが、基本的で、でも意識しないとできていないなあ。まだまだ若輩者でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ津村記久子が自著の中で勧めていた本。
詩人のエッセイやってんな、もっと評論的な本かと思った。
戦前中後を銀行で働く職業女性として独身のまま勤め上げた詩人でもある著者のみた日本。軍国主義、敗戦、左翼の台頭、高度成長…と昭和史にずっぽりはまった生涯を通して、石垣りんという一個人の目線と心で感じ取った描写が興味深かった。
結婚せず母となれなかったが、定年まで銀行勤めをまっとうした女性の立場というと、キャリアウーマンの先駆け、ジェンダーフリーの元祖…みたいな切り口もあっただろうし、そういう書き方の方が興味もひかれて銭にもなったろうに、そういう部分は過度に露出させず、普通に構えず、詩人としての目線を第一に立てているところがよい。
ただ、その詩人の視線ってのが、詩心のない俺には少々難しかったなぁ。感嘆のため息が多いのよ。「あぁ」「おぉ」って…こんなん連発するのはアン・シャーリーだけかと思ってた。