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戦争中には、戦死にまつわる多くの「美談」がつくられた。ある日、焼跡で死んだ男の話を耳にした。その死に「いのちがけのこっけいさ」を感じた時、数々の「美談」に影がさすのを覚えた。そして自分の内の「ユーモアの鎖国」が解け始めたのだ。戦中から今日までに出会った大小の出来事の意味を読みとり、時代と人間のかかわりを骨太にとらえた、エピソードでつづる自分史。
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Posted by ブクログ
戦中、戦後の世相を庶民目線で語った作品も珍しい。「ユーモアの鎖国」という表現もいい。戦争で死んでいく人は、決して美談で語られる人ばかりでない。あるいは戦中であれば美談だったのが、敗戦とともに美談でなくなる。こんな世の中に疑問を持たない方がおかしい。著者が噂で聞いた「豪の中の男」。乙な恰好で、日本刀を...続きを読む抱えて死んだという男。そんな見知らぬ男の死を弔い涙する著者の胸中がまざまざと映し出されている感を受けた。生の不条理さと、それを真面目に考えるバカバカしさ。そんな葛藤にも似た想いが、ユーモアの鎖国を解いたのだと理解した。
これは、interesting!興味深いというべき。 戦前戦後を、職業婦人として丸の内の銀行で働きながら、物書きをしていた著者が、仕事を辞めたあと人生を振り返って書いた短編集。 日経WOMENの特集で、「ポストライムの舟」で芥川賞を受賞した津村記久子さんが推めていたから、読んでみたら、良い感じです...続きを読む。 彼女の生きた時代は、今とは生活感も違えば、女性の地位がまだ低くお茶汲みや集金も女性の仕事だったはずなのに、その仕事に対するスタンスと、物事の評し方には脱帽せざるをえません。 気に入ったエピソードをいくつか。 ○ハンドバッグを持って通勤する女性を評した「宿借り」(P10) ○彼女の仕事に対するスタンスの根本的な部分をつづった「事務員として働き続けて」(P95) また、彼女は同僚として仲間としたい人として、「働く以上しなければいけない地味な仕事を果し、日常の挨拶など上下の区別なく、男女の区別なく、気持よくとりかわし、女性でいて女性をバカにしてかかることのない人」、と言っていますが、基本的で、でも意識しないとできていないなあ。まだまだ若輩者でした。
まだ戦争経験があり日本が貧しさから抜け出せると信じていた時代の女性のことば。企業に勤めることがもっといいことだった時代。企業に対する姿勢のたたずまいは学ぶものが多い。
津村記久子が自著の中で勧めていた本。 詩人のエッセイやってんな、もっと評論的な本かと思った。 戦前中後を銀行で働く職業女性として独身のまま勤め上げた詩人でもある著者のみた日本。軍国主義、敗戦、左翼の台頭、高度成長…と昭和史にずっぽりはまった生涯を通して、石垣りんという一個人の目線と心で感じ取った描...続きを読む写が興味深かった。 結婚せず母となれなかったが、定年まで銀行勤めをまっとうした女性の立場というと、キャリアウーマンの先駆け、ジェンダーフリーの元祖…みたいな切り口もあっただろうし、そういう書き方の方が興味もひかれて銭にもなったろうに、そういう部分は過度に露出させず、普通に構えず、詩人としての目線を第一に立てているところがよい。 ただ、その詩人の視線ってのが、詩心のない俺には少々難しかったなぁ。感嘆のため息が多いのよ。「あぁ」「おぉ」って…こんなん連発するのはアン・シャーリーだけかと思ってた。
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