井上文則のレビュー一覧

  • 異教のローマ ミトラス教とその時代

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    ゾロアスター教や仏教の弥勒菩薩などとの関連が取り沙汰されている以外は今一つハッキリわからなかったミトラ神、それを主軸に据えた宗教ミトラス教について、フランツ・キュモンの研究史から始め数少ない文献と各地に残る遺跡を用いることで、その起源や信仰の内容、教徒となった人々の階層、ローマ帝国に及ぼした影響や、ローマの伝統宗教やキリスト教との関係といった様々な側面をつぶさに解きあかそうとしている。

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    2025年04月12日
  • 軍と兵士のローマ帝国

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    ローマ帝国については色々な視点から出版されているが、この本は軍と兵士を中心として書かれており、視点が違うだけで新しい発見があるものだと気付かされる。

    歴代の皇帝はどうやって兵隊を集めたか、その給金はどうしたか、給金を捻出するためにどんなことをしたかなど、ちょっと普通には知れなかったことがあり面白い。
    兵士にとっては命懸。兵士をまとめるリーダー的隊長も大変だっただろう。読んでいてなるほどと思うことがたくさんあった。

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    2023年08月03日
  • 異教のローマ ミトラス教とその時代

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    ネタバレ

    キリスト教化する前のローマ帝国。伝統的な神々に加えてオリエントの神々や一神教など多彩な信仰で賑わうローマ。中でもミトラス教は際立った勢力を誇っていたが、文字資料の乏しさゆえにら謎の多い存在。

    『地中海世界の歴史』シリーズを読んでいて、最近この時代の頭になっているので積読を消化。マズダー教やゾロアスター教との関係やローマの歴史の中でどのように広がっていったかなど、面白くて良い。

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    2025年09月21日
  • 張騫 シルクロードの開拓者

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    東西シルクロードの始まりをつくったと言って過言ではない、張騫の冒険。奈良時代には、日本とローマを物で繋ぐ、まさに東西ユーラシア大陸を結びつける陸の道になる。

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    2024年11月10日
  • 軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡

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    古代ローマの軍人皇帝時代についての本。皇帝の出身地や元老院議員の変化に焦点を当て、同時代の中国との比較もしながらうまくまとめている(あいかわらず皇帝たちの名前は覚えられないが…)。めまぐるしい皇帝の変遷の間にどういう風に時代が変わっていったのかがよくわかるようになっているので、複雑な状況も理解しやすい。しかも軍人皇帝時代から西ローマ帝国滅亡まで概観してくれるのでお得感あった。

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    2024年10月01日
  • シルクロードとローマ帝国の興亡

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    シルクロード交易の盛衰とローマ帝国の興亡を関連付けて論じた本。

    筆者の井上先生は本書を「試論」とし、議論の、あるいは読者の探究の機会になればと仰っていた(あとがきより)
    西ローマ帝国の滅亡を、シルクロード交易という長く広い視点が興味深かった。

    教科書的な理解では「ゲルマン人大移動」が原因とされているけど、それは本当に直接的な原因に過ぎず、既に西ローマ帝国は虫の息だったのだなあと。

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    2023年10月01日
  • シルクロードとローマ帝国の興亡

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    一般的にはシルクロードといえばNHKの番組などからユーラシア大陸を横断する陸路をイメージする。しかし古代のシルクロードは海路が主流だった。ゆえにペルシャ湾、紅海がいかに重要だったということは驚きで、ローマがパルティアやササン朝と死闘を繰り広げた意味が理解できた。そして国の存亡は軍事やリーダーの資質の前に確固たる経済力が何より必要だと学んだ。
    初めて知った知識がディオクレティアヌスが始めた人頭税、地租のカピタティオとユガという制度。ここで思い出さされたのが、後年マホメットが制定したジズヤとハラージュ。マホメットはディオクレティアヌスを参考にしたのか?

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    2023年01月07日
  • シルクロードとローマ帝国の興亡

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    シルクロード交易が帝国の繁栄に大きく寄与した点を明らかにし、政治的混乱による交易への悪影響が、いかにローマの基盤を揺るがしたかを論ずる試み。当時の交易実態の紹介も興味深い内容。

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    2022年05月26日
  • 素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集

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     宮崎市定の著作を愛好し、評伝まで著した編者によるアンソロジー。
     古代、中世、近世、最近世及び現代という時代区分と、東アジア、西アジア、ヨーロッパという地域区分を組み合わせて、歴史の骨太な見方を論じた『世界史序説』から始まり、宮崎の専門とする中国史について、古代、中世、近世からのセレクション、さらには全集未収録作品まで収録された、宮崎愛読者にはたまらない贅沢な一冊。

     編者により宮崎の歴史の見方、捉え方や、選択された各論考の紹介がされているので、宮崎をあまり知らない人は、是非そちらを読んで興味を持っていただきたい。

     「条支と大秦と西海」、「晋武帝の戸調式に就て」などは、一般読者が読むに

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    2021年11月14日
  • シルクロードとローマ帝国の興亡

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    ローマ帝国の興亡についてシルクロード交易という新たな切り口から描いた本。一般的にローマ帝国の興隆は領土の拡大から、衰退はゲルマン民族の侵入からなされたとされている。しかし、本書ではユーラシアに起こった他の帝国との同時代性に焦点を当てることで、シルクロード交易が1世紀から3世紀にかけてのユーラシアに大きな影響を与えたのではないかと述べている。横軸と縦軸が交差する実に興味深い本だった。

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    2021年09月12日
  • 軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡

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    ローマ文明が国と共に滅亡したのは、その担い手たる文人貴族に脆弱性があったからとする。文人貴族が武人支配に敗退したのはなぜか? その脆弱性を時に国が滅んでも文明としては存続した中国と比較しながら解き明かしていく。軍人皇帝時代以降のローマ帝国で中国のように軍人貴族が文人化しなかったのはなぜか? 文人貴族はなぜ富の都市への還元をやめてしまったのか? そうしたことがどのようにローマ文明の滅亡に影響したのか? 軍人皇帝時代のローマ史入門となる一冊。

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    2021年07月09日
  • 軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡

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    同著者の「軍人皇帝時代の研究」の発展編とも言える内容。イリュリア人皇帝の分析から、元老院の質的変化も追いつつ、帝国の衰亡要因の考察までが語られている。中国史との共通項とその違いについての記述は興味深かった。

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    2020年07月20日
  • 軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡

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    軍人皇帝時代に焦点を当てたローマ帝国(文明)衰亡論。
    衰亡の原因を元老院貴族から軍人への支配層の変化に求めた一冊。

    五賢帝時代までに政治的支配層である元老院身分の制度化に伴い文人化が加速した一方、領土拡大に伴う外圧・内乱の可能性は帝国全土に広まった。
    その中で軍事経験に乏しい元老院身分に代わって、たたき上げの軍人が帝位に就き、かつ高い軍事能力の持ち主が抜擢され、ポストを得られるように変わっていったのが軍人皇帝時代であった。
    外圧はこれにより凌いだものの、軍事力こそ権力の源泉という構図が明確になり、帝位の簒奪・僭称が頻発。帝国の分裂傾向が加速することになる。
    その混乱のなかでローマは決定的な分

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    2017年06月21日
  • 異教のローマ ミトラス教とその時代

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    ミトラス教について研究史、資料、儀式や位階、その誕生から終息、どうしてローマ帝国の西側で流行したのか?など網羅的に書かれた本。ただしミトラス教は文献資料が大変少ないために推測に頼る部分も多く、研究者の間でも意見が異なることが少なくないようだ。ミトラス教は兵士に人気だったローマの密議宗教という教科書程度の知識しかなかったので、難しい部分もあったが勉強になった。

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    2025年07月12日
  • 張騫 シルクロードの開拓者

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    1991年刊行本の文庫版。前半部では漢武帝による西方進出の先駆けとなった生涯、後半部は後世に及ぼした影響が紹介されている。著者のシルクロード体験も反映されている前半部は物語的な筆致もあり臨場感がある。

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    2025年07月03日
  • 異教のローマ ミトラス教とその時代

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    名前は聞いたことがあるが、精々「ミトラ」という名の太陽神を奉じている、ということくらいしか知らない謎多き「ミトラス教」を概説的/網羅的に記述した興味深い本
    どうやら、キリスト教が出現しコンスタンティヌス帝が公認するまでは、ローマ帝国で広く信仰されていたという大規模な宗教だったらしい
    文献資料がほぼ遺されておらず、神殿に刻まれたレリーフや図像、論駁者が相手(ミトラス教)の主張として出したものを参考に丹念に全体像を描き出していく。
    教祖・教義として明らかな物が遺されていないにもかかわらず、ミトラス教がフォーカスした社会階層や、取り入れた思想などを考察していくのが面白かった。
    密儀宗教(密教)らしく

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    2025年04月21日
  • 軍と兵士のローマ帝国

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    古代世界において繁栄を極めたローマは、一方では、対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり、兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった。建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き、その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける。

    古代ローマが好きなので読みました。
    軍隊の変遷から見たローマ史なので、ちょっと視点が変わって興味深かったです。教科書で読む西ローマ帝国滅亡も軍隊から見ればこういうことだったのか~と。

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    2023年07月11日
  • 軍と兵士のローマ帝国

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    軍というファクターからローマ帝国を読み解いていく。最初は戦争のたびに参集していた軍が常備軍となり、当時ではめずらしい定期給を貰う存在として経済の中心ともなる。
    さらには権威の象徴となり、皇帝への決定権を持つような存在ともなる。
    国とその指導者にとって、軍というのがどういう存在かということはローマ帝国だけに収まる話ではないだろう。

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    2023年06月13日