井上文則のレビュー一覧
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一般的にはシルクロードといえばNHKの番組などからユーラシア大陸を横断する陸路をイメージする。しかし古代のシルクロードは海路が主流だった。ゆえにペルシャ湾、紅海がいかに重要だったということは驚きで、ローマがパルティアやササン朝と死闘を繰り広げた意味が理解できた。そして国の存亡は軍事やリーダーの資質の前に確固たる経済力が何より必要だと学んだ。
初めて知った知識がディオクレティアヌスが始めた人頭税、地租のカピタティオとユガという制度。ここで思い出さされたのが、後年マホメットが制定したジズヤとハラージュ。マホメットはディオクレティアヌスを参考にしたのか? -
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宮崎市定の著作を愛好し、評伝まで著した編者によるアンソロジー。
古代、中世、近世、最近世及び現代という時代区分と、東アジア、西アジア、ヨーロッパという地域区分を組み合わせて、歴史の骨太な見方を論じた『世界史序説』から始まり、宮崎の専門とする中国史について、古代、中世、近世からのセレクション、さらには全集未収録作品まで収録された、宮崎愛読者にはたまらない贅沢な一冊。
編者により宮崎の歴史の見方、捉え方や、選択された各論考の紹介がされているので、宮崎をあまり知らない人は、是非そちらを読んで興味を持っていただきたい。
「条支と大秦と西海」、「晋武帝の戸調式に就て」などは、一般読者が読むに -
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軍人皇帝時代に焦点を当てたローマ帝国(文明)衰亡論。
衰亡の原因を元老院貴族から軍人への支配層の変化に求めた一冊。
五賢帝時代までに政治的支配層である元老院身分の制度化に伴い文人化が加速した一方、領土拡大に伴う外圧・内乱の可能性は帝国全土に広まった。
その中で軍事経験に乏しい元老院身分に代わって、たたき上げの軍人が帝位に就き、かつ高い軍事能力の持ち主が抜擢され、ポストを得られるように変わっていったのが軍人皇帝時代であった。
外圧はこれにより凌いだものの、軍事力こそ権力の源泉という構図が明確になり、帝位の簒奪・僭称が頻発。帝国の分裂傾向が加速することになる。
その混乱のなかでローマは決定的な分 -
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名前は聞いたことがあるが、精々「ミトラ」という名の太陽神を奉じている、ということくらいしか知らない謎多き「ミトラス教」を概説的/網羅的に記述した興味深い本
どうやら、キリスト教が出現しコンスタンティヌス帝が公認するまでは、ローマ帝国で広く信仰されていたという大規模な宗教だったらしい
文献資料がほぼ遺されておらず、神殿に刻まれたレリーフや図像、論駁者が相手(ミトラス教)の主張として出したものを参考に丹念に全体像を描き出していく。
教祖・教義として明らかな物が遺されていないにもかかわらず、ミトラス教がフォーカスした社会階層や、取り入れた思想などを考察していくのが面白かった。
密儀宗教(密教)らしく