三好行雄のレビュー一覧
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自分は、まだ会社に1人一台パソコンがなかった頃に就職した。その内パソコンが当然に与えられ、Excelの使い方を覚え、海外含む顧客とのやりとりがメールになり、様々な業務はあっという間にインターネットを前提とするものになった。
仕事は楽になったか?感覚的には寧ろ逆だった。加速度をつけて仕事は増え、余裕はどんどんなくなる。おかしくねえかと思いながら考える暇もなく渦に巻き込まれた。
で、これは内発的か?というとやっぱり違う。海の向こうからやってきた技術に否応もなく(あるいは積極的に)「俄然外部の圧力で飛び付かなければならなくなった」訳で、スマホいじってパソコンの前で青息吐息で仕事にとりかかるたび「皮 -
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漱石が近代人として評価されていることの真の意味を知った。学習院での講演「私の個人主義」では、小説だけでは見えにくい漱石の思想の遍歴が披露される。
明治期、様々な外来思想が輸入され社会が大きく変わる時代のなかで、戸惑いのなかに生きる漱石が啓示のように感じたであろう自己本位の思想。先進的な社会であろうとも後進的な社会であろうとも、外部の環境に影響されない自己本位の思想。自己が価値判断の基準となること、そのためには自分勝手という意味ではない真性の個人主義が必要となること。そんな漱石にとっての切実な悩みと回答が学生の前で力説されている。
絶対的な身分社会の江戸期には生じない思想であろうし、輸入品として -
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某文学館で「夏目漱石の手紙」の展示をやっていて、見に入ったら思いのほか面白く、ミュージアムショップで買ってしまった本。
手紙が好きでものすごくたくさん書いた漱石。
友人の正岡子規。妻の鏡子。後進の芥川龍之介――そのほかたくさんの人々に、実にいろいろな手紙を書いています。
手紙というのは書き手の人となりが如実に表れるもの。
漱石の手紙には、意外にも、正直さと、相手を思う気持ちと、何よりもユーモアがあふれています。
自虐的であったり、シニカルであったりしても、常にサービス精神が見え隠れしているところが魅力。
妻への小言とか友への愚痴とか、若者への羨望とか、いろいろありながら、そこには漱石の相手を -
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夏目漱石は森鴎外と同様に、西洋文明を丸々コピーすることには反対していた知識人であった。今や、西洋的考えを否定することはできなくなってしまった。それほど、日本の中に多くの西洋物が存在する。厳密に言えば、日本は、純日本的なものと中国・朝鮮などの東洋諸国の文化が日本式になったいわばハーフの文化が存在していた中に、明治になって外科手術的に西洋文明を上書きしてしまったと言える。
今まではそうやって外のものを自分たちの良いように上手く吸収して日本になじませる(言わば、守・破・離のような)形式で、中国や朝鮮などの文化を自分たちのものとしてきた。しかし、西洋文明は今、十分に消化されているのか?そもそも、 -
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現代に通じる学びがたくさん。本当に聡明な人だったんだ、と思う。明治の文明開化に巻き込まれながらも、客観的に自身や社会や日本を見て、誰に何と思われようと主張する。かっこいい。
その姿勢はきっと読書によるもの、留学での経験、教育で経た対話を通じて・・・夏目漱石の一生?というか自伝があれば読んでみたいと思った。
いいなぁと思った部分はたくさんあるけど、私の個人主義の中の「自己本位」(自分の興味の赴くままに信じる道を進んだらいい)、や「形式」(時代とともに中身が変われば立ち止まり考えて形式を柔軟に変えていく必要がある)、イミテイションとインディペンデンス(日本人は模倣が得意で大事だけど、インディペン -
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タダでも読めるんだけど、編集の付加価値を頼りに購入。100年以上も前にこんなこと書いた人がいるんだなあ。「西洋」を体感し、苦悩した経験があるが故の説得力。幕末以前が舞台の青年立志小説にはないリアリティが満載。各自、頑張りましょう。
・理想は見識より出づ、見識は学問より生ず。学問をして人間が上等にならぬ位なら、初めから無学でゐる方がよし
・真面目に考へよ。誠実に語れ。摯実に行へ。汝の現今に播く種はやがて汝の収むべき未来となつて現はるべし
・二と二が四となるとは今世論理の法則である。昔はそうも相場がきまっておらなかった。きまらぬ所に面白味があった。物は何でも先の見えぬ所が御慰みだ
・昔は上の方 -
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夏目漱石。1867年2月29日(慶応3年1月5日)〜1916(大正5)年12月9日。明治22年22歳から、満49歳の没年までに書かれた書簡集。
古い文章はさすがに難しくきちんと理解して読めなかったと思うけど、友人知人、門下生、家族、いろんな人たちへの心配りや暖かさが感じられる書簡が158通。
目を引いたのは家族、妻の鏡子宛、娘の筆子、恒子、えい子宛。友人や門下生では、正岡子規、高浜虚子、他に、寺田寅彦、鈴木三重吉、津田青楓、中勘助、徳田秋声、武者小路実篤、芥川龍之介宛。
「書簡ほど漱石を、漱石のままに表現しているものはない(中略)単独に書簡だけを読んで、其所から一貫した漱石を発見するの