田中真知のレビュー一覧
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ネタバレ
"なぜ風景を見て美しいと感じられるのか。子どもの頃はなんとも思っていなかったはずだ。
それは、こうした風景を美しいとする文化の中で生活するうちに、その文化の見方にしたがって自分の感性がつくられていったからだろう。"
子どもの頃に、風景を美しいと思った記憶。
小学五年生の頃のプリンスエドワード島。
それまではどんな世界遺産も絶景も、心奪われることはなくこの著者と同様に眼前の楽しさに夢中になり、景色の記憶はないに等しい。
それがこの土地に降り立った時、言葉にできない衝撃が胸にきて、島を巡る日々の中でじわじわと心ゲージが満たされていったのをよく覚えている。
あれはそれまでの文化 -
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この本はタイトルで選んだ。「美しいをさがす旅にでよう」
古今東西、「美しい」とされるものたち。
自然、黄金律、美人、アート、身体変工。
その成り立ちや文化的背景を解説していく。
或る文化では美しいとされるものが、私たちにはガラクタのように見えることもある。
なにを以て私たちは美しいとジャッジするのか。
そう思って観るから美しいのだ。必ずしも美が先にあるものではない。
価値観は知らないうちに培われる。自分を取り巻く環境や時代によってがらりと変わる。
敗戦という大きな節目で強制的に変わることもある。
でも、お仕着せの価値観でさえ慣れてしまえば、それが基準になりかわる。
私と小鳥と鈴と。みんな -
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厳密に言えば、「旅行」と「旅」とは似て非なるものだろう。「旅行」はどこに行くか、何をするか、何を観るかという目的が明確であり、また、往々にしてタイムスケジュールも正確に定められているものだ。旅行において、目的地までの移動は、そこに行くための手段であるにすぎない。
他方、「旅」は目的地が明確なわけではない。仮に目的地が定められている場合でも、その場の気分で目的地はすぐに変わってしまう。また、旅は旅行ほどに効率の良さを求めない。旅行においては忌むべきものである停滞、逡巡、彷徨、迷走は、旅においては価値があり、歓迎されるべき非効率な道程である。
旅行は必然で張り巡らされているが、旅は偶然に満 -
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翻訳家である田中氏が12年間に旅行人へ寄せたエッセイをまとめたもの。 恥ずかしながら田中真知という人の本を読んだことが無かった。 深く後悔… 世界中をバックパック担いで旅している若者は今も昔もたくさんいる。 近年では様々な事件に巻き込まれ「自己責任」という言葉で肩身の狭い思いもしているかもしれない。 彼らがなぜ世界を旅するのか。 何を求めて何のために旅をするのか。 その答えはどこにもみつけられないけれど、その旅のひとつひとつにはやはり意味があるのであって、無駄な旅なんてひとつもないんだ、と、そんな気になる。 田中氏の旅も、何かを求めてとか何かのためにとかそういう大儀を必要としない、ただ風のよう
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無駄の削ぎ落とされた文章。
印象に残っていること・新たに得た知見をを箇条書きにしていく。
・『七つの人形の恋物語』サブパーソナリティ
・エジプトのザール
悪霊の気に入ったリズムが見つかると激しく踊ったり泣いたり叫んだりして感情を解放する。そうやって悪霊の機嫌をとる。
・『天国の根』なにかにふさわしい存在であろうとする「態度価値」
・『ベルリン・天使の詩』
・互いに安全に傷つくためにこそ対話がある。
・星新一『ボッコちゃん』肩の上の秘書
・無駄とは無駄なのか。効率性とは、大抵の場合、自分以外の誰かの都合に合わせるためのもの。
・自分が善良でいられるのは、自分が善良な性格だから -
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「風をとおすレッスン」とあり、サブタイトルには「人と人のあいだ」と付けられているが、特に印象に残ったのは、「自分の中にあるあいだ」ともいえる話だった。
人間関係に関する話に見えて、実際、人と人との距離感の話もしながら、この本は、「「私」の中の小さな私たち」から話が始まる。つまり、いかに自分自身が一人の人間でなくて、様々な「自分」でできているか。まずは、自分の中にある矛盾した自分たちの間に風をとおすところからレッスンは始まる。
本の中で紹介されるのは、コミュニケーションをより上手にするためのノウハウといったものではない。よく意味がわからなくても、一つのコミュニケーションが成り立っている居心地の -
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人間関係や、自分の中の複数のアイデンティティについて、少し距離を置いて風通しをよくすることで、縛られることなく、客観的な視点で向き合えるようになるのではないかという提案の本。
アフリカで過ごした経験や、本を読む中で、著者が得た、生きる上で大事な気づきが、短い章立てでまとめられている。
また、取り上げられる本も、興味深いものが多く、読書案内としても優れている。
私が一番グサリときたところは、コミュニケーションにおける最大の障壁は「相手をわかったものとして扱う」ということだ、と書かれていた部分。
まさに、よく、相手の言いたいことを先回りして要約しようとしてしまう癖があるため、会話相手はかなり不快 -
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「旅行人」という旅のミニコミ誌に書かれたエッセイがまとめられた本です。翻訳家である作者の知性が感じられ、文章が繊細で美しい。
旅先の出来事、旅で出会った人たち。どの話もとても興味深く読みました。とてもおもしろいです。
以下こころに残ったたくさんの文章の中から抜粋。
トルコのバスの中で、男とイヤホンを分け合ってデヴィッド・ボウイを聴いたあの夕暮れを思い出す。あのとき徐々に彼に親近感をおぼえていったのは、あるいは、イヤホンの細いコードを通して、彼が抱えている闇が自分の中に流れ込んできたからなのかもしれない。
地中海の島の魅力は風にある。あらゆる地上的な重さから解放された、軽く、かわいた、形 -
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私たちは「わからない」世界を生きている。
『風をとおすレッスン 人と人のあいだ』は、
もう少しそういう「わからなさ」を醸し出して生きていいかもしれないなと思わせてくれる本でした。
著者の田中真知さんは、過剰なつながりで不自由になっている関係性に、
ひとすじの風をとおそうと提案しています。
つながるでも分断でもなく、“風をとおす”。
大切なのはやはり適切な距離感なんですよね。
そのレッスンとして、映画や小説のエピソードがたくさん紹介されており、
それを読んでいるだけで心地よい風が吹くような感じ。
これは「読んだ」というよりも、
「話を聴いてもらった」感覚に近いのかもしれません。
とり