中条志穂のレビュー一覧
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自身が己という人間のために生きていることを少なくとも今は疑っていないしそこに対する罪悪感などは一切有していないのだと信じている。だからこそ自身の生命の意義や目的を思索する自由を有しているのであり、一方でその意義や目的の儚さを知り苦悩するのである。ではもし自身という生命が神なるもののために存在しているのだとしたらどうだろうか。意義や目的はすなわち神への示す姿を美しくあらせ続ける、すなわち決して成し遂げられることのない徳と呼ばれるものを生涯追求し続けることと同義となり、だからこそ人はその生命を疑念なく送ることができるのかもしれない。しかしそこには思索の自由の余地はなく、徳を阻害するもの、すなわち自身の欲望の追求は極めて排斥されるべきものとして扱われてしまう可能性を孕むのである。神に対する愛に加え、神以外の異なる存在への愛を抱きそれの実現を目指すことは極めて徳の追求に反するものであると位置付けられる以上、愛は生命の意義とはなり得ないのである。一方、その愛を追求し生命の中核に据える自由を有している自身はにも関わらずその追求の仕方を未だ見出すことができていないのはなぜだろうか。愛の追求を自身の心がどこか抑制しているわけではなかろう。しかしその追求がいかにしてなされ得るのかという問いから避けてはならない。
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すごかった。
とにかくオモシロかったけど、なにがなんだけ全然わからない。
いや、分かるんだけど、納得はいかない。
でもとにかく、おもしれえ。
若い男女がいて、プラトニックに愛し合っていて、
両思いなんだけど、なぜだか女の方が現実的にいろいろな意味で愛を受け入れない。
「それだめなの。許されない」
みたいな。それがなんでだか、主人公の男も分からないけど、こっちも皆目分からない。
分からないんだけど、「それがなぜか」という方向ではなくて、
「で、ふたりはどうなっていくか」ということのみに爆走していく物語。
雑に楽しんで読んでいく分には、そのあたりが「狭き門」なのか、
実は愚者たる自分には明確にピントが合った形では分からない(笑)。
でも、なんだかその、経済的に言うと全く合理性の無い不幸みたいなものが、
狭き門だとすれば、いやあ、かなり狭い門です。入りようが無いのでは(笑)。
そして瞠目すべきは、それでいて無茶苦茶オモシロイということ。
ちょっと三島っぽい、ヤバイおもしろさ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレフランスのノーベル賞作家アンドレ・ジッドによる小説。愛と信仰の相剋を描く、美しく悲痛なラブストーリー。
愛も信仰も純粋すぎて、混ざり合うことができなかったというべきか。神に至る道は狭き門ゆえに二人では入れないということか。相思相愛なのに結ばれないもどかしさ。身を引いていくアリサの心情がつかめず、最後の日記まで、見えない真相にやきもきする。美しく終わったようにも見えるアリサの人生と信仰をどうとらえるか。アリサが求めた至高の愛とジュリエットがつかんだ現実的な幸福、どちらが正しいのか。。独身を貫くジェロームの姿は美しくも悲痛だ。非常に後を引く、心に残り、かつ考えさせられる名作。 -
Posted by ブクログ
愛と信仰の間で激しく葛藤する悲劇の物語。
ヒロイン、アリサのジェロームへの愛の深さ故に距離を置くに至る心理は、自分が身を引くほうがジェロームの為になるという考えからだが、かなり曖昧な理由であり、やはり本質は信仰心ゆえの、あえて困難な道「狭き門」を選ぶことがその理由と思われる。それにしても死の床にあったアリサがジェロームに読まれることを承知で手記を残すことはジェロームを深く後悔させることになると考えるのが普通であり、そこはやはり自分のの愛の深さをジェロームにどうしても伝えたい欲求からくるものか。そう考えると愛故に身を引く慎ましさよりも自身の信仰心を貫くヒロインの身勝手さが周りを巻き込む悲劇に発展したとも言えます。時に信仰心はこの上ない狂鬼を産むものなのか、それも含めて人間の業とも言えるものなのかと考えさせられます。
三角関係と死別、死後に披露される真実を語る日記。これはまんま夏目漱石の「こころ」ですね。
本作も解説がかなり充実しており、本作と作者の実生活との関係を考察しており読み応えがあります。
訳者あとがきで題名に拘ったことを記していますが、題名が「狭い戸口」とならなくてよかったです。 -
Posted by ブクログ
信仰と幸福の対立の物語。本当に徹底して信仰を実践すると救われるものも救われなくなってしまう、だから歴代の宗教は愛や慈悲というものを超越的なものに対置したのだ、というような説明を聞いたことがあるが、まんまそれを描いたようなストーリー。真の信仰と比べたら、幸福は彼岸のものではなく地上のものであるということを思い出させられる。けれども、悲痛な結末の印象は薄く、それよりも全編を貫く清廉さの方が強く残った。情景、心情、ストーリーのすべてがあまりにも清廉。この極端に汚らわしさを排除し美へと偏った小説を読んでいると、宗教というのは人間の美しいものを美しいと感じてしまう感覚のもとに道徳と幸福の妥結を図ったものなのではないかという発想さえ浮かんでくる。潔癖主義的な物語だが、とても刺激的だった。訳も煩わしいところが全然なく、非常に良い。