貴戸理恵のレビュー一覧
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1989年に始まった平成時代は、30年後の2019年に幕を閉じた。本書は平成が終わり、令和が始まった2019年に、平成史を書くという試みのもとに編まれた本である。編者は小熊英二、それ以外に7人の執筆者が参加している。最初に小熊英二が、「総説」を書き、以降、政治・経済・地方と中央・社会保障・教育・情報化・外国人/移民・国際環境とナショナリズムというテーマで、それぞれの専門家が執筆している。
小熊英二は、「総説」の中で、平成について下記のように述べている。
【引用】
「平成」とは、1975年前後に確立した日本型工業社会が機能不全になるなかで、状況認識と価値観の転換を拒み、問題の「先延ばし」のため -
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ネタバレ「みんなでやることに意味がある」「世の中そういうものでしょ」などつい使ってしまいがち、聞きがちな「ずるい言葉」を漫画や文章で説明した本。
理想論的なところはあるが、惰性で言葉を使うのではなく、自分の違和感を大切にして言葉を発していきたいと思う一冊だった。
特に「負担は平等に」という考えや、「相手の気持ちが分からないから他者を傷つけるのではなく、それがどれほど致命的か直感的に知っているからこそあえてやる」残酷さはこの社会で過ごす私たちは肌で感じているのではないだろうか。本書はそういった無意識の違和感を言語化しており、その上でどのように返すのがいいか、どのようにこの思考から抜け出すかを作者なりの -
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ネタバレ薄い、平易なのに、濃厚。
「コミュ力」を個人の問題とせず、かつ社会の問題にも押し込み切らず、「関係性」の問題として「関係的な生きづらさ」から丁寧に検討していく姿勢を示す。
主に不登校を題材としていくのだが、不登校の推移の3期間分類といい、生きづらさを巡る議論の(①キャリア/②弱さ)×(A市場/B社会/C当事者)のマトリクス・6象限分類―更に①-C:「選んだ、でも追い込まれた」議論の不在への注目といい、分析が鮮やか。
「選べない出会い」というキーフレーズによる「歯止めをかけるべき効率性」「かけるべきコスト」という主張も説得力あり。
上記を経ての最終章の一人称語りからは、真摯な姿勢が伝わっ -
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日本の平成を、政治・経済・地方自治・社会保障・教育・情報化・移民政策・ナショナリズムの観点からまとめた本。
総じて言うなれば、日本の平成とは、変化するさまざまな環境に対して、昭和の枠組みをその場しのぎで改変することで対応してきた時代であり、その綻びがあらわになってきた時代といえる。
重要な観点は、ポスト工業化における個人化。昭和はある意味一定のライフコースしか想定しておらず、そこから漏れ落ちた人々に対しては想定をしていなかった。だからこそ、こうしてそれぞれの観点からまとめてみると、ちぐはぐな対応に見えてしまう。
システムは入れた途端陳腐化するが、それは全ての精度に対しても言えるのかもし -
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自分のことはもちろん、周囲との付き合い方について考え、悩み、一番大きな変化の時期である思春期の女子たち。そんな彼女たちを対象に、「学校」「恋愛」「家族」そして「自分自身」にそれぞれ章立て、多くの本を紹介しながら女子の生き方を考えていく。
こうあるべきといった表現は一切なく、女子に寄り添い、乗り越え方を一緒に紐解いてく。ひとりで抱え込みがちなぐるぐるした感情も「それでいい」とまるっと肯定してくれる姿勢に、きっと思春期の時期に読んで良かったと思える本が見つかるはずです。
巻末には引用した作品+αがまとめられたブックリストが掲載。多彩な選書で興味深い(まさかの『江古田ちゃん』!乙女とは裏腹に逞しく -
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大人になるまでに
十代の頃は不安でいっぱいだった。
溢れる自意識をコントロールできず、些細なことで傷つき、必死でもがいているがその方法が間違っている事にさえ築かず、それを指摘するものを糾弾する。
痛々しい。
だが、その結果なんとか折り合いを付けられる場所を見つける。
私の悩みは誰よりも深くて特別!!とおもいながら、内容は恋愛、友人、家族、将来というカテゴライズされたものばかり。
だからこそ、色々な解決方法がある。
その一つの方法が読書だ。
著者がこれまで触れてきた本の中から、十代の悩みに答えられるであろう本をピックアップ。
第二章の「恋愛」は大人になっても悩みの種。
恋愛小説やマンガがずっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ岩波ブックレットシリーズ。時代の変化に伴って、モノ作りからサービス業への職業スキルの転換があり、それに従い、社会性やコミュニケーション能力というものが話題になる機会が増えた。社会性とコミュニケーションの障害である自閉症も、その軽症型を含めたスペクトラムとしての疾患概念が認知されて久しい。
筆者は不登校やひきこもりの背景にあることを「関係性の生きづらさ」とし、その原因を考える。生きづらさのタイプを、1)学校や仕事などのキャリア, 2) 病、障がい、老い、性嗜好などの弱さ の2つに分類し、さらにA) 市場原理、B)社会の仕組み C) 当事者性 の3つの重視する立場を定義して、生きづらさを理解する