稲葉圭昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった。
手短に説明すると、正義感の強い警察官が汚職にまみれる話。よくある話のようにも聞こえるが、本作の凄さは堕ちていくプロセスが丁寧に描かれていることと、その心理変化に説得力があることだ。
警察も民間企業と同じで、評価のためには成果が必要。本書の著者の成果とは、拳銃の検挙数だったのだ。評価期間内に都合よく犯罪が起きるわけではない。しかし評価期間は決まっている。どうしても評価を上げたければどうするのか。
その結果が本書の物語である。
上層部の設定した無茶なKPIを達成するために疲弊する現場。まさに民間企業で見る風景だ。警察が違うのは、そのKPIが犯罪者に依存している点であろう。
本書 -
Posted by ブクログ
『恥さらし』
映画『日本で一番悪い奴ら』の原作となった、北海道警察史上最大の汚職事件である稲葉事件の犯人、稲葉氏が書いた自省録。
学生時代は柔道に明け暮れた稲葉氏は今でいうスポーツ枠のような形で北海道警察に就職する。その後、1990年代の銃器摘発キャンペーンの中で、銃器の摘発の過酷なノルマを課され、目標達成のために反社会勢力との交際を始める。稲葉氏は、多数の暴力団にエス(スパイ)のネットワークを形成し、銃器や覚せい剤の摘発に繋がる情報を引き上げていく。次第に、そのようなネットワークを駆使して成績を上げていく稲葉氏は銃器対策課のエースと称されるようになる。一方、多くのエスを養うために資金が必 -
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献本企画に当選。
ありがとうございました。
2000年4月、量130キロ、末端価格にして約40億円の覚醒剤が北海道函館新港に運ばれた。
それを手引きしたのは北海道警察と函館税関。
泳がせ捜査という名の密輸、悪質な犯罪行為だった。
重い十字架をひとり背負うことになった銃対課の稲葉氏。
組織の要求に応え、上司の命令には逆らわず仕事をしてきた。
責任を押し付けられた稲葉氏は徐々に壊れていく。2002年7月、覚醒剤の使用で逮捕。
読んでいて気持ちが暗くなるほど、道警の闇が書かれている。
映画『日本で一番悪い奴ら』原作本。
映画ではどのように描かれているか楽しみ。 -
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Posted by ブクログ
監修・稲葉圭昭『知れば知るほど面白い警察組織』宝島SUGOI文庫。
2019年9月に刊行した単行本 『警察組織パーフェクトブック』、2021年2月に刊行した単行本『警察のウラ知識』の2冊を再編集し、文庫化。
サクッと読めるが、結局は何も残らないという、所謂ところのコンビニ本。
警察小説や刑事ドラマを引合いに出しながら、複雑な警察組織、キャリアとノンキャリア、組織の裏側やゴシップなど興味をひくような話題が詰め込まれているが、何処かで読み聞きしたような話ばかりだった。
監修を務めるのは、覚醒剤使用で逮捕、懲戒免職になった元北海道警察の刑事で、さらには覚醒剤取締法違反と銃刀法違反で服役し、現 -
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本人の前作と織川隆なるジャーナリスト作の内容の齟齬が気になっていたが、あとがきを読む限り裏を取らずに書いたジャーナリストが間違っているということらしい/ 具体例も挙げて書かれていたが、間違ったことを書いて本が売れるとなると、今回の映画化で一番得をしたのはこのジャーナリストかもしれない/ 非常に興味をそそられる事件だった/ 三冊も関連書籍を読んで好奇心はそれなりに満たせた/ 警察主導の130kg覚醒剤密輸事件がまったく誰も責任を取らないというのが恐ろしい/ これでも21世紀か、と/ 他にも書けないことはたくさんありそうなので、出来ることなら本人と知り合って直接話を聞いてみたいものだ/