高城高のレビュー一覧
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2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比較的陽の当たった作品...続きを読むPosted by ブクログ
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S30年代に学生作家としてデビューしたものの、新聞記者の仕事が忙しくなり筆を絶った作家・高城高。その昭和の香りがにじみ出る作品が復刊されました。
「元祖ハードボイルド」と云わんばかりのかっこ良さが文体からあふれています。Posted by ブクログ -
昭和三十三年、夏。北海道。
未明の落石沖で、殿村水産所属の運搬船・天陵丸が沈没した。
積荷過重による事故とみられ、特に不審な点はないと思われた。
その同じ朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。
こちらも単純な過失による事故と思われたのだが、
天陵丸沈没事故と、サンマ船の衝突事...続きを読むPosted by ブクログ -
霧の街・釧路がハードボイルドの舞台として格好であった時代。太平洋炭鉱が海底から石炭を掘削し、サンマ漁で港湾は賑わい、街のいくつもの映画館で裕次郎がかかり、繁華街は現在の歌舞伎町のように賑わっていたという。
夜の闇の中で船員同士の喧嘩がマキリによる殺傷事件に変わっても、日常茶飯のこととして警察も...続きを読むPosted by ブクログ -
1955年デビューし、1970年以降は本業のジャーナリストとして生きるため小説の筆を折ったという伝説の作家・高城高。大藪春彦よりも少し前の時代において、真にハードボイルドの創始者であった作家こそこの人であったのではなかろうか。
レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドを愛読し、一方で、地方...続きを読むPosted by ブクログ -
『X橋付近』
入院中同室になった松川精二から妹の様子を訪ねるように頼まれた高城。教えられた住所に妹の牧玲子はいない。ようやく探し当てた玲子。翌日再び来るように言われ訪れた高城か発見した玲子の遺体とヘロイン。
『火焔』
映画館で警察に包囲された不良たちの向こう見ずな行動。
『冷たい雨』
石原探偵事...続きを読むPosted by ブクログ -
和製ハードボイルド小説のパイオニアなんだそうで、知りませんでしたが、それもそのはず、1970年代に休筆してから2008年の最新作まで30年の休筆期間があったのだそう。
舞台の北海道道東の描写が、とても味があります。推理小説の筋立てとしても面白い。主人公がテキパキと物事を解決しすぎな感はありますが...続きを読むPosted by ブクログ -
高城高の数少ない長編小説。
作者の年齢が高いため、小説の設定も登場人物も古い。
当然のことながらインフラ面での状況が現代とはまったく隔絶しているが、それでいて情況描写には懐かしさを覚えるものがある。
新聞記者として恵まれない環境の中で過去の事件を改めて辿っていき、真相を探り出して行くというストーリー...続きを読むPosted by ブクログ -
“幻の作家”高城高。
全集第4巻となる本書では、活動休止前の10年に書かれた14編を収録。
麻薬密売にからむ轢死事件を追う捜査官が見た人間模様とは「踏切」。
ある強盗傷害事件を追う新聞記者は、
スクープを狙って仮説を立てるが――「ある誤報」。
小さな企みについて描いた掌編「ホクロの女」。...続きを読むPosted by ブクログ -
長らく“幻の作家”だったが、近年執筆活動を再開した高城高の
初期の短編13編を収録した傑作集。
スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。
日本に帰還した彼を待っていた真実とは――「暗い海 深い霧」。
移動銀行の車を襲った二人組の強盗の顛末「ノサップ灯台」。
海岸で発見され...続きを読むPosted by ブクログ -
日本ハードボイルドの黎明期を支えた作家・高城高の
名編11編にエッセイ3編を収録した作品集。
入院中、同室となった男に、盛り場で雀荘を経営する妹の安否を
確かめてほしいと頼まれた私は、彼女を追い調査をするが、
会う約束を取り付け、時間に訪れた私の前に
彼女は死体となって現れ――「X橋付近...続きを読むPosted by ブクログ -
解説にもある通り、原石と評したくなる粗削りな作品群。酒の香りと、昭和の木造家屋の匂いを漂わせる、無骨な作風がいい雰囲気を作っている。ハードボイルドと銘打って世に出すことができた、ジャンルが若かった時代の特権とでもいうべき愚直なハードボイルド。Posted by ブクログ
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ハードボイルドの持つあくの強さや独特の世界観は感じられなかった。筆致は淡々としていて至極シンプル。事実のみを追いかける温度差の少ない展開は社会派のよう。本作品が作者の唯一の長編らしいが、そう思って読むと、どこか荒削りな出来も仕方ないのかなと諦めもつく。ひとつひとつのエピソードは丁寧にきっちり書いてあ...続きを読むPosted by ブクログ