高城高のレビュー一覧

  • 冬に散る華
     『ウラジオストクから来た女 函館水上警察』文庫化に当たって、書き下ろし短編『嵐と霧のラッコ島』を付け加えた一冊である。オリジナル単行本に、微妙なかたちでおまけをつけて、読者の散財を促すのが商法であるならば、これには賛成できかねるが、こと高城高の短編一つが加わるのであれば、ぼくにとってはそこには市場...続きを読む
  • 函館水上警察
    この本で“明治24年”、或いは“明治15年”の“函館”という劇中世界を逍遙すると、何か「明治・大正或いは昭和の初め頃の趣を想起させるモノが幾分在る函館」をまた訪ねてみたくなる…
  • 凍った太陽 高城高全集2
     2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比較的陽の当たった作品...続きを読む
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
    S30年代に学生作家としてデビューしたものの、新聞記者の仕事が忙しくなり筆を絶った作家・高城高。その昭和の香りがにじみ出る作品が復刊されました。
    「元祖ハードボイルド」と云わんばかりのかっこ良さが文体からあふれています。
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
    昭和三十三年、夏。北海道。
    未明の落石沖で、殿村水産所属の運搬船・天陵丸が沈没した。
    積荷過重による事故とみられ、特に不審な点はないと思われた。
    その同じ朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。
    こちらも単純な過失による事故と思われたのだが、
    天陵丸沈没事故と、サンマ船の衝突事...続きを読む
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
     霧の街・釧路がハードボイルドの舞台として格好であった時代。太平洋炭鉱が海底から石炭を掘削し、サンマ漁で港湾は賑わい、街のいくつもの映画館で裕次郎がかかり、繁華街は現在の歌舞伎町のように賑わっていたという。

     夜の闇の中で船員同士の喧嘩がマキリによる殺傷事件に変わっても、日常茶飯のこととして警察も...続きを読む
  • 暗い海 深い霧 高城高全集3 
     1955年デビューし、1970年以降は本業のジャーナリストとして生きるため小説の筆を折ったという伝説の作家・高城高。大藪春彦よりも少し前の時代において、真にハードボイルドの創始者であった作家こそこの人であったのではなかろうか。

     レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドを愛読し、一方で、地方...続きを読む
  • 凍った太陽 高城高全集2
    『X橋付近』
    入院中同室になった松川精二から妹の様子を訪ねるように頼まれた高城。教えられた住所に妹の牧玲子はいない。ようやく探し当てた玲子。翌日再び来るように言われ訪れた高城か発見した玲子の遺体とヘロイン。

    『火焔』
    映画館で警察に包囲された不良たちの向こう見ずな行動。

    『冷たい雨』
    石原探偵事...続きを読む
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
    和製ハードボイルド小説のパイオニアなんだそうで、知りませんでしたが、それもそのはず、1970年代に休筆してから2008年の最新作まで30年の休筆期間があったのだそう。

    舞台の北海道道東の描写が、とても味があります。推理小説の筋立てとしても面白い。主人公がテキパキと物事を解決しすぎな感はありますが...続きを読む
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
    高城高の数少ない長編小説。
    作者の年齢が高いため、小説の設定も登場人物も古い。
    当然のことながらインフラ面での状況が現代とはまったく隔絶しているが、それでいて情況描写には懐かしさを覚えるものがある。
    新聞記者として恵まれない環境の中で過去の事件を改めて辿っていき、真相を探り出して行くというストーリー...続きを読む
  • 風の岬 高城高全集4
    “幻の作家”高城高。
    全集第4巻となる本書では、活動休止前の10年に書かれた14編を収録。

    麻薬密売にからむ轢死事件を追う捜査官が見た人間模様とは「踏切」。
    ある強盗傷害事件を追う新聞記者は、
    スクープを狙って仮説を立てるが――「ある誤報」。
    小さな企みについて描いた掌編「ホクロの女」。...続きを読む
  • 暗い海 深い霧 高城高全集3 
    長らく“幻の作家”だったが、近年執筆活動を再開した高城高の
    初期の短編13編を収録した傑作集。

    スパイとして国後島に潜入し、ソ連の警備隊に拘束された男。
    日本に帰還した彼を待っていた真実とは――「暗い海 深い霧」。
    移動銀行の車を襲った二人組の強盗の顛末「ノサップ灯台」。
    海岸で発見され...続きを読む
  • 凍った太陽 高城高全集2
    日本ハードボイルドの黎明期を支えた作家・高城高の
    名編11編にエッセイ3編を収録した作品集。

    入院中、同室となった男に、盛り場で雀荘を経営する妹の安否を
    確かめてほしいと頼まれた私は、彼女を追い調査をするが、
    会う約束を取り付け、時間に訪れた私の前に
    彼女は死体となって現れ――「X橋付近...続きを読む
  • 函館水上警察
    明治時代の函館が舞台。徹底的に調べ込んで書いてあり、圧倒された。時代背景、生活習慣、風俗、組織体系などなど、当時を直接知っているかのよう。この本物感にはシビれた。稲見一良とかと通じるものがあるハードボイルドだと思った。
  • 凍った太陽 高城高全集2
    解説にもある通り、原石と評したくなる粗削りな作品群。酒の香りと、昭和の木造家屋の匂いを漂わせる、無骨な作風がいい雰囲気を作っている。ハードボイルドと銘打って世に出すことができた、ジャンルが若かった時代の特権とでもいうべき愚直なハードボイルド。
  • 函館水上警察
    明治24年の函館を舞台にした刑事ものハードボイルド。
    当時の国際港である函館では犯罪捜査が、大国の野心と衝突する。不平等条約のため検挙できない相手に対し、五条次席が打つ手は...。

    史実の裏付けが確かであり、また社会の闇を照らす視線が存在するため、(東洋蔑視、アイヌ迫害、官僚主義、領土問題、等々...続きを読む
  • 函館水上警察
    明治二十四年、国際貿易港函館に誕生した小さな警察署。
    ラッコ密漁船の水夫長の変死や、英国軍艦の水夫の失踪
    などの難事件に男たちは日夜陸と海を駆ける。北の刑事
    たちの活躍を描く明治警察物語。

    帯には「五条警部は長谷川平蔵を思わせるヒーローだ」
    とあるが、確かに雰囲気は似ている。明治の函館と...続きを読む
  • 墓標なき墓場 高城高全集1
    ハードボイルドの持つあくの強さや独特の世界観は感じられなかった。筆致は淡々としていて至極シンプル。事実のみを追いかける温度差の少ない展開は社会派のよう。本作品が作者の唯一の長編らしいが、そう思って読むと、どこか荒削りな出来も仕方ないのかなと諦めもつく。ひとつひとつのエピソードは丁寧にきっちり書いてあ...続きを読む