【感想・ネタバレ】風の岬 高城高全集4のレビュー

あらすじ

麻薬密売にからむ轢死事件を追う捜査官が、製紙工場の廃液がにおう町で見た人間模様とは――「踏切」。ススキノに生きる男たち女たちが巻き込まれた交通事故の真相に新聞記者が迫る――「飛べない天使」。嵐の中、岬へ向かう男たちを待っていた運命とは――「風の岬」。新聞記者、麻薬捜査官、国境の海の謀略に巻き込まれた男たちや、歓楽街にうごめく若者群像。そして、北へ向かう追跡者たちに、戦後の闇をひきずる男の軌跡……。1960年から1970年にかけて、北の都・札幌を舞台とした作品を中心に、北海道で繰り広げられる人間ドラマを活写した作品群! 高城高全集、第4弾。

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Posted by ブクログ

“幻の作家”高城高。
全集第4巻となる本書では、活動休止前の10年に書かれた14編を収録。

麻薬密売にからむ轢死事件を追う捜査官が見た人間模様とは「踏切」。
ある強盗傷害事件を追う新聞記者は、
スクープを狙って仮説を立てるが――「ある誤報」。
小さな企みについて描いた掌編「ホクロの女」。
溺死体となって発見された男は三輪に、
かつて反共産主義の組織の一員として活動していたことを話していた。
その死について三輪は調査を進める「風への墓碑銘」。
無実の罪で投獄された男は、十年前の事件の復讐のため
かつての仲間の前に姿を現すが――「札幌に来た二人」。
雑貨店を営む老女の死の意外な真相「気の毒な死体」。
嵐の中、襟裳岬へ向かう奇妙な二人連れの男。
彼らを待ち受ける結末は――「風の岬」。
ゲイバーのマダムが殺された。
調べを進めるに従い明らかになる人間模様と、
昨年の夏の事故と今回の事件のつながりとは――「飛べない天使」。
ある会社の給料を盗み出すことを計画した弘志ら四人。
しかし、弘志は誰かの裏切りに会い負傷する「ネオンの曠野」。
“星の岬”を目指して車を走らせる夫婦。
夫は秘密を告白するが、妻はそれを受け入れる、が――「星の岬」。
電波基地建設に反対する地元住民。
その裏で暗躍する謎の老人の正体は「上品な老人」。
一年前、ナオミを追ってきた芸能記者は階段から転落して死んだ。
人気にかげりの見えてきたナオミは再びホテルを訪れる「穴無し熊」。
偽造小切手を追っていた上司の失踪を調べるべく北海道に来た朝比奈。
彼を待ち受けていた罠とは――「北の罠」。
佐川のもとにかかってきた殿村輝子からの電話。
以前、失踪した彼女を佐川は探し出したことがあったのだ。
函館に向かった佐川は、消えた輝子の行方を調べるが
きな臭い企みが浮かび上がってきて――「死ぬ時は硬い笑いを」。

これで全集も最後?

おそらく、「凍った太陽」「暗い海 深い霧」のときと
ほとんど同じことを語ることになってしまうので、
今回はできるだけ短めにいこうと思う。

文体と雰囲気は、当然のことではあるが、
これまでに読んだ作品と変わらない。
すでに高城高の文章に魅せられている人間にとっては
それは読んでいるだけで相応の満足感が得られるものである。

似通っているようで多様なプロットの妙もやはり味わい深く、
さらっと読めて刺激的な作品が多い。
いわゆる本格ミステリではないので伏線どうこうというものではないが
だしぬけに真相を明かす手口はいつも切れ味が鋭いし、
それによって人間関係の闇や影が浮かび上がってきて
キレが良くて、なかなかに強い余韻を残してくれる。

今回のお気に入りは、ミステリ好きとしては
この手のプロットにはどうしても反応してしまう「気の毒な死体」、
どこか夢物語のようなロマンチックさを漂わせておいて
衝撃的なラストに持ち込む「星の岬」、
カタストロフが印象的な「死ぬ時は硬い笑いを」あたりか。
もちろんどの作品もそれぞれに魅力があるのだが。

高城高の過去の作品を追うのはこれで終わり。
このあとは、文庫化もされた「函館水上警察」を読みます。

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2012年05月08日

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