サトウタツヤのレビュー一覧
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『臨床心理学小史』というタイトルではあるが、現在の教育言説が前提にする心理学的言説をコンパクトに概説した本。そのため、むしろ、学校教員をはじめとした教育関係者が読むべき本だと思った。
著書自身も「あとがき」で書いているように、できる限りわかりやすくコンパクトに記述することを目指して書かれており、様々な心理学的理論が混在している教育言説を整理するための「整理棚」を提供してくれる。
一方で、(臨床)心理学者たちによってもたらされた知見がもたらした負の側面(例:戦時における知能検査の利用)や、その知見が誤読されることによって生じてしまった負の側面(例:愛着理論にもとづく「母親(=女性の親)」への過度 -
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来年度の共通教育の内容を改めて考え直していました。何にしようか迷ったらまずは基本に帰る,ということで,今年改定された『心理学・入門』を読んでみました。改定前の『心理学・入門』も持っているのですが,流し読み程度で読んでしまっていたので,熟読したのは初めてでした。
正直,面白かったです。何が面白いかって「話が流れている」ことです。
心理学にはいくつか分野があるので,普通の教科書は各分野の専門家の共著という形をとっています。専門分野の先生が執筆されるので,内容の精緻さがある一方,別々の先生が執筆なさることによって各分野の話が比較的独立してしまいます。
他方,本書は2人だけで書いて -
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心理学は、いろんな分野で「○○心理学には有名な△△理論というものがあり、それによると・・・」といった形で援用されており、それによって、自説の正しさや、なんらかのテクニックの効果などの主張が非常に説得力を持つようになる場面をよく見かけるので、なんとなく身近な存在である。そういう活躍を見ると、少なくとも一般人の我々に対しては、優しくて人当たりが良くて臨機応変に大人なふるまいのできるお姉さんみたいなイメージで「心理学さん」の人柄を思い浮かべてしまうが、本書を通じて、心理学ってどう生まれたのか、どういう範囲をカバーしているのか、精神医学や社会倫理や法や政治の世界とはどう関わるのか、といったことを知る
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大学の履修科目の参考書として指定されており、知識を深めたい為に手に取った。
入門書としては少し難解な部分もあったが、性格には2種類(モード性格、性格変容)あることや、私たち日々物事を判断する上で実にたくさんのバイアスがかかっている(認知のバイアス、確証バイアス)こと。
オペラント行動とその条件付け(生き物の自発的行動が学習されることと、その仕組み。)の解説が分かりやすかった。
負の強化(ある行動の結果、褒められるなど良い結果(好子)が得られなくても、嫌な結果(嫌子)をもたらさなければ人はそれに甘んじてしまう)というプロセスは、日常生活至る所で発生しているんだなぁと納得。
例えば、テスト勉強し -
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心理学には名著が少ない(p.282)。そのなかでの30冊は以下の観点で選ばれている。
・本当の名著
・講演録や論文集
・心理学の学説史上,重要な論点を提出した心理学者の著書
この基準を用いると100冊弱は紹介することになってしまうらしいので,「ヒト」「ひと」「人」という3側面の心理についてそれぞれ10冊ずつ選定されている。
ヒトの心理とは動物界の一員としてのヒトの心理,ひとの心理とは発達・成長する存在としてのひとの心理,人の心理とは社会を作り,社会で生きていく人の心理である。
以上の方針に基づき30冊が選ばれた。ただし,本書は著書そのものを紹介するというよりも, -
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人のこころ。心理学のなかでも、議論となる名著を厳選して解説。動物界の一員としてのヒトの研究、ひとの心理学は意味を構成しながら人生を歩んでいくひとの研究、人の心理学は社会を作り、そのあり方を問う。
音や数字に色がついて見える。認知の多様性。デカルトの我思う故に我あり、心身二元論。
正義は断じるもの、倫理は抱え続けるもの、道徳はしつけられたもの。正義の反対はもう1つの正義となる。悪では無い点には注意。逆から見たらすぐに分かる。主体として考え、行動することが大切だ。
ブルーナーのコインの実験。裕福な子と貧困の子で同じコインを見ても、貧困の子の方がコインが大きく見えているという。価値、意味がひとに -
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心理学の重要著作30冊を紹介している本です。
ジェイムズの『心理学について』やフロイトの『精神分析入門』などの古典的な著作から、ダマシオの『デカルトの誤り』やトマセロの『コミュニケーションの起源を探る』などのあたらしい本まで紹介されています。ただし、それらの本がただ羅列されているのではなく、「あとがき」で「それぞれの本の著者である心理学者の研究の背景がわかるように心理学史的な叙述を行った」と著者が述べているように、心理学の展開についての説明が比較的ていねいになされているところに、心理学史についての著作もある著者ならではの手腕が発揮されているように感じました。
著者は「はじめに」で、「動物界