市古貞次のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
身の程を知り、何事にもしがみつかず、自然を愛で、足るを知る生活。
が、多くは「無常」に耐えられなかったのか、余剰生産は搾取を生み出し、もはや引き返せないようになった。
現代の無常観は、「行く川のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず」ではなく、「行く川のながれは絶えずして、ほぼもとの水である」という、無常というより空虚に近い。
同じ「むなしい」でも今と昔ではその意味が異なる。
鎌倉時代、大きな火事、嵐、地震を通して、鴨長明は「完全なものなんてねぇな」って思って、無常を知り、足るを知った。
が、現代(の一部)では、そういったことが起きた時に、「完全なものをつくるしかねぇな」と思っている。 -
Posted by ブクログ
この本は、読んだ年齢によって大きく印象が変わるのではないかと思った。
著者の万物流転、諸行無常で何をか栄華を望まんや、という姿勢は、今の時代においては「負け組」の発想を容易に連想させる。
著者の、才覚が筆致から溢れるような、現代でも無駄のないと感じるテンポのいい叙述で物事への執着心の無常を説く心の裏には、
彼の出自を絡めてみると、どうにも若き日の栄達を阻まれた世間への憾みが見え隠れするように読める。
これは自分が20代であるからなのかもしれない。
注釈も初心者に便宜的で、原文自体が平易な短文なので、初めて日本の古典に親しむという目的なら適切。 -
Posted by ブクログ
この歳になって、これほど有名な作品も通読したことがなかったというのは恥ずかしい限りです。今回は鎌倉期の随筆、鴨長明の「方丈記」。岩波文庫で薄かったので手にとってみました。
現代語訳はついていないのですが、和漢混淆文である上に注釈も適切だったので、私レベルでも何とかかんとか(最低限の)意味はとれたかなという感じです。
しかしながら、解説や注釈によると、その中に古今の古典・漢詩・和歌等に由来する表現が数多く散りばめられているとのこと。当然のことながら私のような薄学では思いも至らず、作品の理解という点では全く不十分、その楽しみも半減以下という体たらくです。