コンラート・ローレンツのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
動物行動学を扱った「古典」として有名な作品です。
筆者が実際に飼育し、生活を共にしてきた動物を取り上げ、彼らの行動や、それを引き起こす本能的・遺伝的形質について分析している本で、緻密な観察に裏打ちされた記述には説得力があります。
「自然の美しさ・素晴らしさ」に傾倒する筆者が、動物がありのままの姿(≒野生で見られるような特質を失わない)で過ごせるように努力している様子には頭が下がる思いがする一方で、冒頭にある通り「読み物」としての脚色をしない、という姿勢が貫かれているため、多少の読みづらさがあることも事実です。シートン動物記のような「読み物」を想像して手に取ると、期待を裏切られたと感じるかもしれません。
登場する動物も日本に生息していない種類のモノであったり、一般に飼育される種類ではなかったりと、「親しみやすさ」という面でも少し敷居が高い部分もあるでしょうか。
とはいえ、動物に対する惜しみない愛情が感じられる作品であることは事実ですし、動物行動学をはじめ、生きものに関心がある人にはぜひ一度手に取ってもらいたいと思う作品でした。 -
Posted by ブクログ
生物の教科書に載っていた「刷り込み理論」のローレンツが書いた一般向けのエッセイである。動物とは全く関係ない『文学のなかの法感覚』という本の中で面白いととりあげられていたので手にとった。
ローレンツの業績は「動物行動の観察という当時は軽視されていた古典的な手法を厳密に用い、科学の名に値するものに仕立てたこと」(Wikipediaより)らしい。本書は一般向けエッセイなので、科学的な業績や理論に直接触れるものではないが、紹介されるエピソードやそこから導かれる結論には素人目に見ても怪しいものもある。
本書のみどころは、家を動物園のようにしていたローレンツがどのように動物を見ていたかがわかることだと思う。近所の人から奇異の目を向けられつつ、ガァガァと鳥声で鳴いたり、子ガモを連れて這いまわったり、悪魔の扮装で屋根に出たり、耳に芋虫を詰められたりしながら、動物を育て、観察しているのだが、とても楽しそうである。餌を得るのに魚屋をはしごしたり、迷子の鳥を迎えに延々歩いたりと、動物を育てる苦労もユーモアまじりに紹介されるが、ローレンツの飼育に対する責任感と覚悟がうかがえるものとなっている。
動物の行動に一瞥もくれないというか、カラスが鳴いているのをみたところで「なぜ鳴いているのか」「どんなときにどう鳴くのか」など気にもとめてこなかったが、本書を読み、がぜん興味が湧いてきた。彼らも主体性をもって生きている、ヒトと同じ動物であって、何かを思って(擬人化か)行動しているはずである。人間以外の生きとし生けるものについて、ちょっとした仲間意識を得ることができた。
Wikipedia によるとローレンツはナチ党員で人種衛生学(優生学)に賛意を示していたらしく、時代の事情とはいえかなり残念な事実である。ローレンツの共同研究者であるティンバーゲンはレジスタンスに身を投じていたし、フランツ・ボアゾ(文化人類学の創始者)はインディオの身体測定を行って科学的に反対をしたりしていたのに…。もちろんドイツ人であるローレンツとオランダ人であるティンバーゲン、アメリカ人であるボアゾとは比較できないし、当時のやむを得ない空気というのはあっただろうから、後世の読者が気軽に断罪できるものではないのだけど、残念ではある。
ローレンツは大戦経験者のはずだが、エッセイは終始呑気な調子で、戦後の人かと錯覚したくらいである。地球を亡ぼすような武器を持つヒトがほかの肉食獣が進化の過程で得る、暴力抑制の行動様式を持っていないことを懸念している点に彼の思うところが凝縮されているのかなと思った。というより、思いたい。
(参考) 本書が好きな人はジェラルド・ダレルの著書もおすすめ -
Posted by ブクログ
動物の生態を知りたくなったので読んだ。
動物行動学入門とあるがほとんどエッセイのような感じでさくさく楽しんで読める。
コンラート・ローレンツが多種多様な動物たちとともに暮らす中から見える動物たちの生態や行動、その意味するところとは。動物への愛に溢れる1冊。
普通に哺乳類がメインで出てくるものだと思ってたら、ハイイロガン、アクアリウム、コクマルガラス…といい意味で期待を裏切られた。
特にトウギョの話が面白く、ついYouTubeで動画を漁ってしまった。
また、8章の「なにを飼ったらいいか!」はペットに適した動物を紹介してくれる。現在飼われているような金魚、モルモット、インコなどをつまらないやつと言い切ってしまうところが面白い笑
ただこの本を読んだら安易にペット飼おう!とはなかなか思えないかも。動物には動物の本能と行動があり、共に生活するには人間が合わせなくてはいけない。
一番最後の「いつかきっと相手の陣営を瞬時にして壊滅しうるような日がやってくる。全人類が二つの陣営に分かたれてしまう日も、やってくるかもしれない。そのときわれわれはどう行動するだろうか。ウサギのようにか、それともオオカミのようにか?人類の運命はこの問いへの答えによって決定される」という言葉が忘れられない。
人間は相手が降参の態度を見せた時、攻撃しないでいられるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
ヒヨコが生まれて初めて見た動くものを親だと思う「刷り込み」の概念を確立したという学者の著書。様々な動物(ペットではない)と一緒に暮らし、その実際の行動をつぶさに観察している。
様々な記録が盛り沢山だが、動物の種による行動について特に細かい。中でも凶悪獰猛なイメージである肉食獣・オオカミに騎士道精神が備わっており、か弱くて大人しいイメージのウサギやシカは相手が両手を挙げてもこれ幸いに弱点を攻撃しまくり死ぬまで戦う、というエピソードが面白かった。人間のイメージというのは実に勝手なものである。
あとイラストがかわいかった。線が細いがしっかりしててトーンの貼っていないリアルなイラストである。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞受賞ローレンツ氏による
動物愛に溢れた動物行動学入門書
と言っても全く堅苦しく無いご自身の動物達との経験談…いえ研究内容だ
「居間に取り付けた檻の中で動物を飼っておく事は、知能の発達した高等動物の生活を正しくは知れない、全く自由な状態で飼うことを身上とする」
という主義を貫いてさまざまな動物達と暮らすのだが、それに伴う家族の犠牲やご苦労、ご近所への損害はは計り知れない
人ごとだからこちらは笑って読んでいられるが…
例)
・家の中で放し飼いにしたネズミ
そいつが家中勝手に走り回り、敷物の切れ端から巣を作る
・庭に干した洗濯物のボタンを片っ端から食いちぎってまわるオウム
・大型で相当に危険な動物たちを飼っていた頃は、庭に大きな檻を作ってその中へ入れた
ーーー動物ではない、私たちの娘を
・子ガモの代理ママとして、庭を低くしゃがんだまま「ゲッゲッ」とわめきながら2時間の散歩
草むらに囲まれた場所で肝心な子ガモの姿は外を通る観光客からは見えない(笑)
■興味深かった内容をピックアップ
・コクマルガラス(オス!)に惚れられた著者(念のためだが男性!)
彼は自分が選り抜きの珍味だと思っている餌をしつこく私に食べさせようとする
彼は人間の口がものを飲み込むところであることを理解している
・飼い犬シェパードのティート
机の下で寝そべっている時でも、権威ぶった年配の紳士が私と討論中に「君はまだ若い」と言う態度をとったとき、ティートは必ずそういう人の尻に軽く、しかし断固として噛み付く
その人物の顔や態度が見えるはずがないのに…
・ハイロガンの雛
産まれてすぐ著者とハイロガン語であいさつをしたときから、親子の関係が始まる…
「哀れな雛は声も枯れんばかりに泣きながら、けつまずいたり転んだりして私の後を追って走ってくる」
昼間は2分ごとに、夜は1時間ごとに「まだそこにいる?」と言う問いかけを発する
・素晴らしく美しいメスのカタジロワシ
苦労せずして舞い上がれるおあつらえ向きの上昇気流が庭の上空にあるときだけ飛ぶ!
降りてこようとすると帰り道がわからなくなる
ご近所から「どこそこの屋根の上にお宅のワシが止まっていますよ」と電話がかかってくるので迎えに行くが、いつもそこまで歩いて行かなくてはならない
なぜならそのワシは自転車をやったら怖がるのだ
・ジャッカル系犬とオオカミ系犬の違い
『ジャッカル系犬』
シェパード
・従順
・誰とでも仲良くでき、事実誰がリードを引っ張っても喜んでついていってしまう
『オオカミ系犬」
エスキモー犬、チャウチャウ犬
・一度ある人に忠誠を誓ったら、彼はもはや永久にその人の犬である
知らない人はしっぽすら振ってもらえない
・並外れた忠実さと愛着の深さにもかかわらず、決して従順ではない
新旧石器時代ごろからの人間と犬との古い結びつきが、両者の自発意思に基づいて何の強制もなく契約されたと事実が心和む(通常の家畜は奴隷に等しいがイヌだけは友である)
〜犬でも他の動物でも、人に従順かどうか…
でつい判断してしまう
それって失礼しちゃうよなぁ
少しズレるが、飼ったことのある紀州犬とヨークシャテリアを思い出す
紀州犬は本当に手こずった
父以外の家族を自分より下に見ていた
プライドが高く、子供がとても嫌い
人相の悪い人や不審者に遠慮なく吠える
脱走はもちろん、散歩中に首輪から抜けて自由に走り回り、気が済むまで戻らない
それに引き換え、ヨークシャテリアはもう可愛くて仕方なかった
自分が居ないとダメなのね君は…
完全に小型犬の典型
何かあると膝の上に飛び乗り、上目遣い
散歩中に他の犬を撫でるとヤキモチを焼きキャンキャンアピール
どうしてもヨークシャが可愛くなってしまった
でもこの比較は間違っているよなぁ
ある意味紀州犬は誇り高くて賢く、とても美しかった
ふとそんなことを思い出した
本当はもっと重要で興味深い動物の発見や研究内容が多々あるのだが、どうしても面白ネタが印象に残ってしまった
動物と人間の心が通う奇跡的で心に暖まるストーリーがユーモア交え展開し、とても読みやすい
生物や生態系って本当に不思議で神秘的であると改めて認識できる良書である