胡桃沢耕史のレビュー一覧
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ネタバレシベリアの抑留といえば、ソ連でのことだと思っていたが、モンゴルでも抑留があったということを知った。
抑留期間は2年3か月くらいで2万人が抑留されて、4千人近くが亡くなった。空腹、極寒、ノルマ、虐待という収容所生活を耐えて、やっと帰還できた。その期間の物語である。
主人公は満州で現地招集され、国境での警備中に終戦を迎えた。蒙古共和国軍に捕らえられ収容所の生活が始まった。
この本を読む前は、収容所での生活は蒙古軍からの虐待がどんなにひどい物なのかと思っていたが、実は同じ兵隊である日本人からのひどい虐待だった。同じ日本人であっても戦争、敗戦となれば関係ないのか?考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
凄く面白かった。浅学なもので「シベリア抑留」の中にまさかモンゴルへの抑留が含まれているとはこの本を読むまで知りもしなかった(モンゴルへの抑留をシベリア抑留としてくくるのは違和感がある)。ソ連とモンゴルの密約によって労働力として2万人が提供されたということ。ウランバートルでは今でも俘虜たちが建設した建物が現役で使われてるとも知り、色々驚いた。しかもモンゴルでの抑留生活はシベリアよりも過酷で、それも支配側の俘虜から非支配側の俘虜への過酷な労働の強制や懲罰などによって2割もの死者が出たらしい。なんでこんなことを今まで知らなかったんだろう。
それにしても著者の記憶力には舌を巻く。映画の筋書きを何百本 -
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終戦直後、中国に取り残された日本人は敵国の強制収容所で俘虜として労働させられた。学生だった著者はモンゴルの収容所で2年間を過ごす。
収容所生活では寒さと栄養不足から2万人の入所者の内、4千人が死亡した。この高い死亡率は日本人収容者同士で格差が生じ、格差の高いものが低いものに労働を課し、処罰したことも理由の一つだ。
そんな劣悪なモンゴル収容所だが、本書には暗くジメジメした印象はない。それは主人公が学生であったために収容者同士の格差に取り込まれず、そのうえモンゴル語を知っていたためモンゴル側から重宝され、主人公が第3者の立場で虐げられた人を傍観することが多かったためだ。さらに著者がもともとユー -
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ー「私は故郷に帰ってこれを食うまでは、決して死にませんよ」
老人の目はその一点に止まってもう三十分も動かない。明日も生き抜く執念をチャージしているのだ。-
満州引き揚げから発展してシベリア抑留の本に手を出したがこちらも壮絶。カツ丼の夢想で性的興奮とかまじで凄すぎます、胡桃沢先生!
直木賞受賞。ぜひノンフィクションが好きな人には読んで欲しいが、絶版のはず。古本屋さんで見かけたら是非に。友人・知人なら喜んで貸します。☆5つ!
(『流れる星は生きている』で、ゾンビのように凍死していたシベリヤからの帰還組みは、あれは脱走してきたひとらだったんだなあ。) -
Posted by ブクログ
最初の章からして、作者の紀行文かと錯覚するのだけれども、背景となっている時代と場所以外は創作と見て間違いない。
東京で不動産屋を営む62歳のおっさんが、甥の受験失敗を機にイギリスに渡り、第二次大戦前~大戦中の満州周辺での出来事を確かめに行く。第二次大戦直前に、大学(拓殖大?)から機密任務ということで中国の北部にわたった青年が見たものは…。
Wikipediaを調べると、胡桃沢耕史の生まれた時期や大学までが一致するので、その辺は本当なのだろう。
てっきりそこから、殺人事件でも起こって、それを解決するのかと思っていたら、むしろハードボイルド的な展開になっていき、ちょっと面食らってしまう。
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読書録「翔んでる警視正平成篇2」3
著者 胡桃沢耕史
出版 文藝春秋
p140より引用
“明治・大正・昭和と、まだ国民生活が、ご
く貧しく平凡なときは、それほど変態的な
欲望は複雑な様相を見せていなかった。”
目次より抜粋引用
“敢えて殺人を求めず
ゴンドラの花嫁
真犯人は伯爵令嬢
殺し屋のお値段
花嫁御寮はなぜ刺されたのだろ”
警視庁の腕利き刑事を主人公とした、短編
小説集。前六話収録。
優秀な警官を両親に持つがゆえ、大変な思い
をしてきた、主人公夫婦の子供。ある時母親が
子供にある才能を見出して…。
上記の引用は、変態性欲をテーマに書かれ
た話での一文。欲望の多様化 -
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読書録「乳房の殺し屋」3
著者 胡桃沢耕史
出版 光文社
p113より引用
“どこの国でも、スチュワーデスには、最上
の美人を揃えていることは間違いない。飛行
機は、外国から外国へ飛び、外国人の客を迎
える。いわば、外国の人にまずその国を認識
させる、最初の機関になる。彼女らは私設の
外交官だ。”
目次から抜粋引用
“拳銃に生きる女
殺しの信用取引
ワルサーこそ我が恋人
謀略の柔肌
拳銃姉妹”
殺し屋たちを主人公とした、短編小説集。
数々の著名人たちが入居する高級マンショ
ン、そこには一人だけ、誰にも正体が分から
ない美女が住んでいる…。(拳銃に生きる女)
上記の引用は