胡桃沢耕史のレビュー一覧

  • 黒パン俘虜記
    凄く面白かった。浅学なもので「シベリア抑留」の中にまさかモンゴルへの抑留が含まれているとはこの本を読むまで知りもしなかった(モンゴルへの抑留をシベリア抑留としてくくるのは違和感がある)。ソ連とモンゴルの密約によって労働力として2万人が提供されたということ。ウランバートルでは今でも俘虜たちが建設した建...続きを読む
  • 黒パン俘虜記
    終戦直後、中国に取り残された日本人は敵国の強制収容所で俘虜として労働させられた。学生だった著者はモンゴルの収容所で2年間を過ごす。

    収容所生活では寒さと栄養不足から2万人の入所者の内、4千人が死亡した。この高い死亡率は日本人収容者同士で格差が生じ、格差の高いものが低いものに労働を課し、処罰したこと...続きを読む
  • 黒パン俘虜記
    ・・・・・書きかけ・・・・・


    存命なら85歳、1925年4月26日に東京都墨田区生まれて、16年前の1994年3月22日に68歳で亡くなった小説家。作家の中には、普通の人より何倍も数奇な人生を生きた人がいますが、こと胡桃沢耕史に関しては、誰にも負けないとびきり波乱万丈の人生を送った人で、ひょっと...続きを読む
  • 黒パン俘虜記
    1983年の直木賞受賞作品。作者自身のモンゴルでの捕虜体験記。戦争、敗戦、極寒、飢餓、暴力、政治、ヤクザ‥‥サバイブするという言葉の意味を初めてちゃんと理解できた気がする。
  • 黒パン俘虜記
    この作家は初めて読んだが、誤解覚悟で書けば「面白かった」。
    改めて感じるのだが、戦争を体験した作家の作品は人間の生臭さ、生きることへの執着をひしひしと感じさせ、自分の置かれた環境の大事さを思い知らされる。
    平和が一番だし、それと比較するのは酷なのかもしれないが、戦争を経験していない世代(よしもとばな...続きを読む
  • 黒パン俘虜記
    戦後のシベリア抑留での著者の体験もとにした直木賞受賞作品。
    かなり過酷で残虐な記録にもかかわらず、そういったものが苦手なわたしも淡々と読むことができた。
    本当の意味での戦争は、敵は相手国ではなく、人間の愚かさ、醜いこころから生まれてくるものなのかもしれない。
    かなり重いテーマではあるが、読後感は悲愴...続きを読む
  • 黒パン俘虜記
    ー「私は故郷に帰ってこれを食うまでは、決して死にませんよ」
    老人の目はその一点に止まってもう三十分も動かない。明日も生き抜く執念をチャージしているのだ。-

    満州引き揚げから発展してシベリア抑留の本に手を出したがこちらも壮絶。カツ丼の夢想で性的興奮とかまじで凄すぎます、胡桃沢先生!
    直木賞受賞。ぜひ...続きを読む
  • 旅券のない旅
    最初の章からして、作者の紀行文かと錯覚するのだけれども、背景となっている時代と場所以外は創作と見て間違いない。

    東京で不動産屋を営む62歳のおっさんが、甥の受験失敗を機にイギリスに渡り、第二次大戦前~大戦中の満州周辺での出来事を確かめに行く。第二次大戦直前に、大学(拓殖大?)から機密任務ということ...続きを読む
  • 翔んでる警視正 平成篇2 ゴンドラの花嫁
    読書録「翔んでる警視正平成篇2」3

    著者 胡桃沢耕史
    出版 文藝春秋

    p140より引用
    “明治・大正・昭和と、まだ国民生活が、ご
    く貧しく平凡なときは、それほど変態的な
    欲望は複雑な様相を見せていなかった。”

    目次より抜粋引用
    “敢えて殺人を求めず
     ゴンドラの花嫁
     真犯人は伯爵令嬢
     殺し...続きを読む
  • 乳房の殺し屋
    読書録「乳房の殺し屋」3

    著者 胡桃沢耕史
    出版 光文社

    p113より引用
    “どこの国でも、スチュワーデスには、最上
    の美人を揃えていることは間違いない。飛行
    機は、外国から外国へ飛び、外国人の客を迎
    える。いわば、外国の人にまずその国を認識
    させる、最初の機関になる。彼女らは私設の
    外交官だ。...続きを読む
  • カスバの女
    旅情ロマンとも違うし、旅行記とも違うし、さりとて冒険譚でもない。
    世界のあちこちを通りかかった日本人を戦争と絡めた短編集。
    人の心の襞を静かに描いて、心にじんわりと染み込む様な作品集だった。
    特に中国残留夫人と、その元夫の再会を描いた1作はよかった。
    自己保身に走り、どうしようもない男に一見与えられ...続きを読む