あらすじ
風雲急を告げる中国大陸で、美しい亡命ロシヤ人の娘ソニヤと燃えるような恋に落ちた青年の夢は、“組織”の巨大な魔手によって無残にも打ち砕かれた。青年の手元に残ったのは黒龍江岸の崖に建つ古い碑から取った謎の碑文の拓本のみ。その秘密と失われた愛しい女性の跡を求めて、四十年後、異国へ旅立った男は意外な人物と再会したのだった。
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Posted by ブクログ
最初の章からして、作者の紀行文かと錯覚するのだけれども、背景となっている時代と場所以外は創作と見て間違いない。
東京で不動産屋を営む62歳のおっさんが、甥の受験失敗を機にイギリスに渡り、第二次大戦前~大戦中の満州周辺での出来事を確かめに行く。第二次大戦直前に、大学(拓殖大?)から機密任務ということで中国の北部にわたった青年が見たものは…。
Wikipediaを調べると、胡桃沢耕史の生まれた時期や大学までが一致するので、その辺は本当なのだろう。
てっきりそこから、殺人事件でも起こって、それを解決するのかと思っていたら、むしろハードボイルド的な展開になっていき、ちょっと面食らってしまう。
結局のところ、司教の目的が最後まで明らかにされず、隠されて展開していくもんだから、なかなかストーリーが消化されないという悶々とした部分がつづくのは、やや食傷気味である。
満州へわたってから最後まで、結構なスピードで展開するし、そこは飛ばしつつもそのスピードを維持したほうが楽しいのだが、ちょいちょい伏線が見え隠れし、案の方拾われたりするので、早く読んでよいのかゆっくり読むべきなのか、悩ましい作品である。