吉田一郎のレビュー一覧
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素晴らしいの一言
『九龍城』と聞いて思うのは圧倒的な巨大違法建築集合体であった事と、犯罪者の巣窟、というマイナスなイメージだった。
この本はそこに住み、生活をする普通の人々やかつての建物群、また路地裏を非常に魅力的に紹介してくれる本当に素晴らしい資料集であり読み物です。
建物は鬱蒼として無秩序だし、路地は暗くて怖いけど、写真に写る人々は暗い表情をしているのではなく本当に「普通で当たり前の生活」を送っている。良い話ばかりではないし辛かった時代、これからの不安を語る人もいるがこれまでの激動の人生を生き抜いたバイタリティー溢れるインタビューは多くの人に読んで頂きたい。
これまでに読んだ中でもトップクラスに魅力的な一冊 -
Posted by ブクログ
何故ひとは九龍城にこうも惹かれるのか。
世には廃墟マニアという人種が存在する。私にもまたその傾向がある。
恩田陸は著作の中でこう語る、廃墟とは人がいたところ、過去の残骸、かつてたしかにあった営みの記憶の焼きついた場所であると。
歳月が経ちその営みの記憶が風化してもなお形骸化した器は―「建物」は残る。
九龍とはかつて混沌の代名詞であった。世界最大のスラムであり、犯罪の温床と忌避される危険地帯であった。しかし私たちはどれだけ正確に九龍の本当の姿を知っているのか、一人歩きする風聞に惑わされ果たして往時の九龍の姿を把握してると言えるのか。
本書は九龍内部を撮った多数の写真とともにそこに住む人々へのイン -
Posted by ブクログ
謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地帯のイメージが根強いが、それは以前の話で、実態は外と比較しても犯罪は少なく、住民の自己決定による独自のルールで成り立った自律性のある一つの社会なのだ。ピーク時は3万人が暮らしていたと言われる九龍城の外観は圧巻の一語であり、建築基準法をガン無視した行き当たりばったりの建物が犇いており、子供がブロック遊びをしたかのように自