あらすじ
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九龍城ファンの間で伝説的な写真集「City of Darkness」の日本語版─在りし日の九龍城が蘇る──
魔窟と呼ばれ、惜しまれつつも1993年に撤去されてしまった“City of Darkness”こと九龍城。
九龍城は、大都市香港の中心に紛れもなく存在した。
ここでは法律は適用されず、警察官も立ち入ることができなかったため、文字通りの「無法地帯」であった。
「一度入ると二度と出られない」などといった数々の都市伝説を持ち、多くの人間を魅了しながらも、外部の人間の侵入を拒み続けたため、その内部での生活について語られたことはほとんどない。
その九龍城はどのように生まれたのか?住民たちがこれほど過酷な環境で生活できたのはなぜだったのか? 取り壊しを前にした生活者たちのありのままの姿、さらに九龍城の歴史を収めた本書は、もはや存在しないこの特異なコミュニティを浮き彫りにした、比類なきドキュメンタリーである。
全盛期の九龍城内部を取材した唯一の書籍であり、生活者のインタビュー、内部および外観写真、九龍城が完成に至るまでの歴史などで構成された九龍城ファン必携の写真集。
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素晴らしいの一言
『九龍城』と聞いて思うのは圧倒的な巨大違法建築集合体であった事と、犯罪者の巣窟、というマイナスなイメージだった。
この本はそこに住み、生活をする普通の人々やかつての建物群、また路地裏を非常に魅力的に紹介してくれる本当に素晴らしい資料集であり読み物です。
建物は鬱蒼として無秩序だし、路地は暗くて怖いけど、写真に写る人々は暗い表情をしているのではなく本当に「普通で当たり前の生活」を送っている。良い話ばかりではないし辛かった時代、これからの不安を語る人もいるがこれまでの激動の人生を生き抜いたバイタリティー溢れるインタビューは多くの人に読んで頂きたい。
これまでに読んだ中でもトップクラスに魅力的な一冊です。
Posted by ブクログ
九龍城が好きな人なら持っていて損はないバイブル的な本だと思います。写真が多いのはもちろん、当時お住みになっていた方たちのお話や成り立ちの歴史なども書かれていて勉強になる一冊です。
Posted by ブクログ
何故ひとは九龍城にこうも惹かれるのか。
世には廃墟マニアという人種が存在する。私にもまたその傾向がある。
恩田陸は著作の中でこう語る、廃墟とは人がいたところ、過去の残骸、かつてたしかにあった営みの記憶の焼きついた場所であると。
歳月が経ちその営みの記憶が風化してもなお形骸化した器は―「建物」は残る。
九龍とはかつて混沌の代名詞であった。世界最大のスラムであり、犯罪の温床と忌避される危険地帯であった。しかし私たちはどれだけ正確に九龍の本当の姿を知っているのか、一人歩きする風聞に惑わされ果たして往時の九龍の姿を把握してると言えるのか。
本書は九龍内部を撮った多数の写真とともにそこに住む人々へのインタビューで構成されている。
一口に九龍城といえど中は広く多数の区域や通りに分かれている。
本書ではその様々な区域に居住する様々な職種のもの、飴職人、歯医者、宣教師など幅広く取り上げて、それぞれの波乱万丈の半生を九龍城の歴史に絡め振り返る形での取材を試みている。
九龍城は要塞である。そして有機的に胎動する一つの都市である。
犯罪が多発する危険地帯として外の住人に恐れられた九龍城も、中に住まう者からすればそれが日常であり、けっして危険で不潔なばかりの魔窟ではないのだ。九龍城で生まれ九龍城で育ったものにとってこそは九龍城こそがかけがえのない故郷であり、彼らは自分が生まれ育った土地に愛着を抱いている。
九龍城は闇を抱えている。上下水道の整備も整っておらず、家庭で出たゴミは中庭に張った網の上に投げ捨てられ何層も積み上げられる仕組みだ。しかし、託児所がある。保育園がある。教会がある。老人ホームがある。人が人らしく生活する為に必要な最低限の施設はちゃんと備えているのだ。汚水滴る壁や床で絡み合いのたくる配線、迷宮の如く複雑怪奇に入り組んだ路地、猥雑に立て込んだ建物と狭隘な通路。異形の建物である。九龍城とはいくつもの高層建築の複合体である。
すなわち、九龍城は生きているのだ。
Posted by ブクログ
かつて香港にあったスラム・城砦である九龍城のカラー写真満載の本。
よくぞあれだけ無秩序に増築され、多くの人が暮らしていたものだと、感心してしまう。
廃墟後の写真集なども出版されているが、この本は実際に生活している人がまだいた当時のものであり、とても興味深い。
Posted by ブクログ
写真とともに多数のインタビューが収録されていて、とても面白いです。これはいい。九龍城砦内の様々な人々の生活の様子がよく解る。
お値段ははるが、それに見合う内容だと思います。
Posted by ブクログ
写真も、住居者へのインタビューもしっかりしていてとても面白い。巨大な建築物として、小さな都市として、ともに司法の手の及ばぬところで着々と人々が一日を営んでいたことがよく分かる一冊。
Posted by ブクログ
魔窟と言われた時代の九龍城。
ただの写真集でなく、住民たちのインタビューがあり、
そこでの生活がいきいきと想像できる本。
寝床に持ち込んでちびちび読んでます。
Posted by ブクログ
魔窟で暮らしているのは魑魅魍魎の類か水パイプをふかす虚ろな廃人か。実は俺たちと同じ普通の人間だった。明日の食事に悩み、子供の将来を楽しみにしている人たち。九龍城に抱くイメージを大きく破壊された。
Posted by ブクログ
魔窟と恐れられる九龍城で、実際に生活している人達の様子を、インタビュー記事とカラー写真で綴る。見ごたえ充分で、何度読み返しても飽きません(私だけか…
Posted by ブクログ
原書(洋書)を持っている人には退屈な本かもしれないけど、原書で読むのが億劫な時には重宝する本。写真集としても楽しめるし、読み物としても楽しめる1冊。九龍城砦好きならマストアイテム当然。
Posted by ブクログ
九龍城砦は恐ろしい場所だと思っていたが、インフラが整っていたり、住人同士の絆が強かったりと、割と住みやすい環境だったことがわかった。インタビュー形式で、各々の人生や解体、補償金についてどう思っているかなどがわかり、興味深かった。
Posted by ブクログ
トワイライトウォリアーズを観て読んだ。映画で見ていたよりも普通の生活を営んでいる人たちが多く、商店や工業、医者や老人ホームなど多種多様な施設があった。
外部の人の印象よりも九龍城内は平和だったようで驚き。この環境で毎日たくさん働いて、暮らしている人の話をたくさん聞いてみると、今の自分の生活は恵まれているというか、イージーな環境にいるんだなと思った。またトワイライトウォリアーズが見たくなった。
Posted by ブクログ
「東洋の魔窟」を大解剖した一冊。
九龍城に魅了された人達には是非手に取ってもらいたい。当時九龍城砦に住んでいた人へのインタビュー、内装や生活の様子が写真付きで詳しく書かれている。
住人の私生活メインで、今や取り壊されてしまった建物なのでしかたがないが、外観の写真がもっと沢山あれば良いと感じた。
Posted by ブクログ
謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地帯のイメージが根強いが、それは以前の話で、実態は外と比較しても犯罪は少なく、住民の自己決定による独自のルールで成り立った自律性のある一つの社会なのだ。ピーク時は3万人が暮らしていたと言われる九龍城の外観は圧巻の一語であり、建築基準法をガン無視した行き当たりばったりの建物が犇いており、子供がブロック遊びをしたかのように自己増殖していく自由かつ悪夢的な九龍城のビジュアルは素晴らしく、写真だけでもその雰囲気がひしひしと伝わってくる。天井から滴る汚水。ネットにうず高く積まれたゴミ。九龍城内で精製された魚肉団子に無免許の歯医者、学校にストリップ劇場と、まさに自由奔放であり、その世界は凄まじい。水源が貴重であるというのは非常に面白く、ギャングのような集団が管理していたのは中々に興味深かった。九龍城自体の怪しさに反比例して住民の生活は穏やかで、だからこそ取り壊しに対する怒りの言葉は生々しく、その感情の行き所のなさには深く同情すると同時に一抹の哀愁を感じてしまう。個人的に刺さったのは日の光の刺さない九龍城の屋上の写真で、抜けるような空と足元のアンテナの残骸、そして住民の子供の笑顔とのコントラストが素晴らしく、団地住まいだった幼少期のことを思い出してしまった。
Posted by ブクログ
かつて香港に存在した九龍城(クーロン)の写真集及びレポートです。
九龍城をとりあげた本はいくつか見たことがあったのですが、ここまで詳細に撮られたものはないのでは?と思います。またそれぞれの住民の暮らしや生活の詳細の話題も書かれておりかなり読み応えのある一冊です。
Posted by ブクログ
かつて香港に存在したカオス空間「東洋の魔窟」の写真集。
商店主や肉加工業者、理容師や医師など30数人のインタビューが写真と共に掲載されている。
暗く汚いスラムのイメージなのに意外と犯罪が少ないとか、
あんな迷路みたいな建物なのになんと郵便が機能しているとか、
っていうか彼らがどこから来てどうして九龍城に住み着いてどうやって生きているのかとか、
インタビューだからこそ見えてくる一冊。
Posted by ブクログ
ここにしかないもの、がここにはある。
完全にここにしかないものが、ある。
完璧に、ここにしかないもの。
そして、消えてしまったものたち。
ああ、すごいなーって。
Posted by ブクログ
行ってみたかった場所No1。現存してても実際怖くて行けなかっただろうけど。
値段もそれなりですが、読みごたえたっぷりで素晴らしい!ひとの生活の匂いがする本。
Posted by ブクログ
1993年に刊行された書籍が再版された本である。自分が読んだ九龍城に関する書籍や写真集の中で、唯一実際に人が住んでいた時期に撮られた写真が掲載されている。住んでいた人々のインタビューも併せて、城内でどのような生活がされていたのかを知りたければこの本が最適だと思う。
読んでいて感じたのは、同じ城砦内に住む人でも、住んでいる場所や職業によって、危険度も住みやすさも全く意見が異なるということ。また、取り壊しの際の補償内容に関しても、工場や商店など小企業を営んでいる人たちと無免許の医者は全く納得していないというのも興味深かった。
城外に出ても,住める場所があればいいという話じゃない。仕事を再開するためには多額の費用が必要だったり、免許を取り直す必要がある。城内で認められていたことの多くは、城外では認められない。
そんな人達がその後、どのような人生を辿ったのか。日本でも被災地で住処や仕事を失った人達の話を聞くので人ごとだとは思えなかった。
また、話す人によって危険だと言われていた時期が異なるが、前に読んだ本によると「人間の脳には時間という概念がない」らしいので、そこらへんの正確さはあまり重要ではないのだろう。
Posted by ブクログ
映画「トワイライト・ウォーリアーズ」があまりに面白かったので、ぼんやりとしか知らなかった九龍城砦について学びたくなり購入。
貴重な写真と住人や関係者の貴重な話が多数収められていて興味深く読み進めた。
Posted by ブクログ
さらっと読んだのみ。基本歴史とか地理苦手やけど人間にフォーカス当てられてて読みやすかった。写真も多く、九龍城のごちゃごちゃな雰囲気が伝わって来てよかった。
Posted by ブクログ
外観と同等の狂気じみた住人がいるものと思いきや、インタビューを受けているのは至って普通の、常識の範囲内のひとばかり。初中期にはそんな雰囲気もあったらしいが、インタビューが取り壊しの近い時期なのでそんな話は少ない。…やっぱり、この世ならざる場所にはこの世ならざる人がいてほしい。そんなエピソードが読みたかった。でもま、そういうもんよね。
Posted by ブクログ
写真はどれも興味深かった。
建物を側面から見ると、階がバラバラなのがとても面白い。
city of darkness…
って割には住人のインタビューは結構明るかったけどね。
もっともっと胡乱な感じを期待していたんだけどな。
Posted by ブクログ
きっかけは、無限城(笑)
東洋の魔窟、九龍城。
非日常感にゾクゾクするのが魅力的ですが、そこに住んでいた人々にとってはそれは日常であり、九龍城砦の解体は彼等にとって永遠に続くはずの日常の崩壊であると考えると、好奇心という言葉だけでは語ってはいけないものがあるように思います。