大西裕のレビュー一覧
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面白かった。韓国ってそれなりに発展しているけど、どこか不安定というイメージがあるものだけど、金大中、廬武鉉、李明博、朴槿恵という4代の大統領政権下での、特に貿易・経済政策、社会保障・福祉政策をしっかり分析的に解説している。
それによると、韓国という国そして各大統領ともまったく無策だったりあさってを向いた政治が行われていたわけではない。停滞も後退もせず、歩幅は小さいけれど着実に前進しているように読めた。韓国びいきの私としては溜飲が下がる。
大きな前進とならないのは、大統領が大きな権限をもつものの1期5年で交代していくためか。そのうえ、ダイナミックな変革を目指すためにこの期間ではなし遂げにくいとい -
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本書は、過去約20年にわたる韓国の歴代政権(1998年の金大中政権から、盧武鉉政権、李明博政権、朴槿惠政権の4つの政権)に焦点を当てて主に福祉政策と通商政策の変遷を詳述している本でした。著者も本書内で述べているように、福祉と通商政策(FTA)をあわせて分析しているという意味で、面白い視点だと思いました。確かにギデンズの「第三の道」アプローチはこの両者を包含することが可能ですし、韓国の場合は福祉だけでなく通商政策もイデオロギー対決(保守vs.進歩)になるというのは興味深かったです。
全般を通じて面白いと感じた一方で、細かい点では首をひねる点もありました。1つ目。前半部分で、雇用者と労働者の利 -
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韓国の政治上の問題点を挙げた本。金大中、盧泰愚、李明博、朴クネの4人の大統領の取り組み、特に社会保障政策と新自由主義に基づく経済政策に焦点を当て、なぜ、政策がうまくいかなかったかについて意見を述べている。保守派、進歩派の対立、湖南、嶺南など地域的な対立、年代の対立、貧富の格差の対立などが複雑に絡み合い、時の政権に影響を及ぼしている。この20年の状況から言えることは、今後も韓国は難しい状況が続き、なかなか問題解決できないと言うことだと思う。
「若年世代が進歩派政党を支持し、朝鮮戦争を経験した高齢者世代が保守派政党を支持する傾向が強い」p8
「1997年に韓国が直撃を受けたアジア通貨危機以降、金 -
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著者の大西裕(1965年~)は韓国の政治・行政を専門とする政治学者。
本書は、サムスン、現代グループなどの製品が世界を席巻し、ビジネス上は存在感を増す韓国が、国内政治において抱える課題を明らかにしたもので、2014年のサントリー学芸賞受賞作。
本書の主な内容は以下である。
◆韓国の政治は従前より、平等重視、反米・親北朝鮮の進歩派と、自由重視、親米・反北朝鮮の保守派のイデオロギー対立が激しい。進歩派の支持基盤は南西部の湖南地方(全羅道)と若年世代、保守派の支持基盤は南東部の嶺南地方(慶尚道)と高齢者世代である。
◆金大中政権(進歩派、1998年~)では、1997年の通貨危機で救済資金を提供したI -
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韓国へは2回訪れたことがある。
ソウルマラソンと学会参加が目的。
いずれも目的がはっきりしていただけに、韓国の様子をのんびり楽しむことなく帰国。
そんな訪問の仕方をしているだけあって、韓国のことは全く知らないに等しい。
海外の人からすると、日本には未だに忍者や侍がいるのではと思われているのと同じように、韓国と言えばキムチをはじめとする韓国料理の印象が強い。
これではいけない。お隣さんのことをここまで知らなくて、仲良くできるはずがない。
ということで、手に取ったのが本書。
恥ずかしながら民主化されたのがつい最近の出来事であることもこの本で知った。
格差が広がり、高齢化社会が深刻化していて -
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著者もあとがきに書いているが、韓国に対する日本人の評価は、あるときは好調な経済から羨望の的となり、あるときは竹島問題などで嫌悪の的となり、またあるときは、フェリー事故のように蔑視の的となるなど、激しく揺れている。反韓・嫌韓の気持ちと同時に、隣国として実態を知りたいという気持ちも強いのではないだろうか。
本書は、そういう関心の一助になると思うが、他方、分かりやすい本ではない。というか、表面だけなぞって、分かった気にさせてくれるという本ではない。キムデジュン、ノムヒョン、イミョンバクという3代の大統領の福祉政策と経済政策から、韓国特有の保守・進歩というイデオロギー対立や地域主義といった特徴をあぶり