ポール・タフのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『私たちは子どもに何ができるのか』を通して、子どもの発達は本人の努力以前に「環境」、とりわけ家族の関わりが決定的に重要であると学んだ。ストレスや親の反応欠如は、ネグレクトに至らなくとも深刻な影響を及ぼす。一方で、声かけや微笑み、温かい対話といった些細な配慮が、非認知スキルや自制心の土台を育てる。問題行動は子どもの資質ではなく、大人側の余裕や状態が反映された結果であることも印象的だった。管理や強制、インセンティブに頼らず、失敗を学びの機会として受け止め、試行錯誤の過程を支える姿勢こそが、子どもの内的動機づけと健全な自己形成につながると感じた。
-
Posted by ブクログ
子育てに当たり気に留めて置きたいことメモっとこう
・子供にとって読み書きや計算練習よりも、親や周囲の人とのコミュニケーションが知能や将来の幸福度、年収に影響する。
・親が冷たいと問題行動が増える。
・親へのカウンセリングを行い、子供との関係について気を楽にさせると、親子関係が良好になる。
(親が既に行なっている良い行動に目を向けるだけで改善する。)
・発達の流れを考慮すると、学習面の遅れはストレス管理等の心のケアから改善すると最良。
・好きなことに対して報酬を与えない。創造力と好奇心を大切にする。
・学校、グループなどへの帰属意識を持たせることが大事。参加型の教育。
・フィードバック時に少しの期待を添えるだけで積極的になり、成績が向上する。
・日本の数学教育は質が高い。アメリカでは先生が解法を教え、実践を繰り返す反復学習に割く時間が96%、日本はまず答えを考えさせる時間が44%、反復は41%ほどである。 -
Posted by ブクログ
いわゆる「知能」は、
今でも、IQの高さや成績の良さなどを尺度に語られる性質のつよいものです。
これらは、最近では「認知スキル」とくくられるそうです。
そして、認知スキルこそが何より重要だとする人(認知決定論者)の言い方として、
「重要なのはIQであり、それは人生のかなり早い段階で決まるものである。
教育とはスキルを身につけさせるものではなく、人々を選り分け、
高いIQを持った者に、潜在能力をフルに発揮させる機会を与えるものだ。」
というものが、いくぶん極端ではありますが、あります。
そういった「認知スキル」のいっぽうで「非認知スキル」と呼ばれる能力があります。
「非認知スキル」とは、やり抜く力、自制心、好奇心、誠実さや意志の強さなどなどのことです。
本書では、「認知スキル」よりも「非認知スキル」のほうがずっと大切である、
という昨今の研究を軸に、
発達心理学と労働経済学、犯罪学と小児医学、ストレスホルモンと学校改革など、
それぞれ独立した分野を繋げることで浮かびあがる事実から、
子ども時代の貧困などからくる劣悪な家庭環境や人間関係などの逆境でそこなわれる人生を、
どうすれば救えることができるのかを探り明かしていきます。
「非認知スキル」をはぐくみ、生かして好転するケースやデータを例示し、
とりあげられたさまざまな逆境にあえいできた人物のストーリーを語りながら、
その大事さがつまびらかになっていきます。
性格ってすごく大事なんだ、ということなんですよね。
これは政治的にいえば保守の人たちが「それみたことか」
とふんぞりかえってもおかしくない結論でもあります。
性格を作っていくには道徳教育が必要になります。
道徳教育なんていうと、抽象的だし精神論的でくだらない、なんて怒る人も多い。
しかし、ここでいう道徳教育は、
権威や規則に従え、というものではありません。
そういった、「それは誰の倫理基準・価値基準なのか?」
という疑問があたまに浮かぶような、従来の倫理・価値に従う種類の道徳教育ではなくて、
自制心や意志力を持とう、というような、
有意義で充実した人生のための能力を自覚するためのような教育です。
個人主義的な道徳、といいますか、
または、自分を守り尊重するための道徳、といえるのではないでしょうか。
アメリカでは、KIPPアカデミーという教育機関が、
「非認知スキル」を育てることで学力も向上させるシステムを作り上げ、
社会的にも経済的にも学力的にも恵まれていない子どもたちを
大学に入学させるまで育てて注目されて、
アパレル大手GAPの創業者の目にとまって多額の寄付を集めたりしたそうです。
KIPPアカデミーは数を増やし、質を高めて今日にいたっているようですが、
本書でKIPPアカデミーを扱った章を読むと、
そのやり方がふつうの日本の学校のやり方に通じるようにも感じられて、
アメリカでは新しいやり方であっても、僕としては懐かしさのようなものが甦るものでした。
そうなんですよね、
本書の帯には書評サイトHONZの代表である成毛眞氏の言葉として、
「『やり抜く力』、『自制心』、『好奇心』、『誠実さ』
これこそ、われわれ日本人が再発見すべき能力だ!」
とあります。
日本人って非認知スキルを大切にしてきたところはあると思います。
最後に、
これはしっかり覚えておきたいところを。
性格や知能は変えていける。
変えていけると信じている人は、そのしなやかな姿勢ゆえに変えていける。
変えていけないと考える人は、その凝り固まった姿勢ゆえに変わらない。
性格も知能も、影響をうけやすいのがほんとうのようです。
人間は柔軟にできているんです。
また、
思春期にうまく挫折や失敗をする大切さについての話もありました。
(僕個人は過保護に育ったので、思春期は失敗や困難を渇望して反抗したもんだった。
それを思いだしました。)
示唆されるところからいろいろとふくらんで読めていく、内容のある豊かな本でした。
やっと手に取りましたが、読んでよかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子育てにおいて尊敬している方がオススメしていた本。
読んでみて本当に良かった。
自身の子育てのヒントになればと思ったけど、
結果として、日本の子供、ひいては人類に対して誰しも責任があると感じた。
日本でもますます深刻化していく貧困差。
それに伴う学歴格差、比例して犯罪率。
日ごろから憂いてはいたものの、自分には手の届かない世界だと思っていた。
でも違った。
この本は希望の塊のようにみえた。
翻って、人間には格差なんて存在しないと提言している。
そして、読書中何度も自分の受けてきた教育や学生の時の周りや自分の雰囲気を振り返った。
それがすべて今現在と直結していることを実感した。
なぜ自分は大学進学が魅力的と思えなかったのか。
なぜ自分は勉強が嫌いだったのか。
改めて、自分史は自分だけの物語であると同時に、こんなにも時代の一部でしかないことを認識した。
分かったからにはどうすべきかとてもクリアになった。
たくさんの指南も与えてくれている本だ。
子供への責任。そして自分への責任。
本当に豊かな読書体験になった。
個人的にはこの翻訳はとても読みやすかった。
この本は、ハウツー本?というより、貧困地区に暮らす学力格差底辺の子供達に学士号を取らせるために人生をかけた人たちのお話。だと思う。
ストーリー仕立てだし、いくつもの映画を観たような気持にさせられる。
まさか号泣するとは思わなかった。。。
最後に、子育てのヒントは以下のように得られた。
忘備録としてのせる。
親がしてあげられること
子供時代は、安心場所を提供する
愛情深く注意深く子供を見守る➡子供は快活に好奇心旺盛に精神安定して育つ
子供に見合った逆境が必要であることを認識する➡やり抜く力は失敗を通してしか育たない
ある程度(自分で解決させることが何より大切)の放任は必須
本人以上に本人の可能性を強く信じること➡とくに思春期のやり抜く力に有効な動機付けとなる
子育て本としてはママ友にはオススメできない。笑
でも、人間は一人では育てない。
人間が人間を世話し、教育を施す限り誰しもが無視すべきでない、目を向けるべきことが書かれてある素晴らしい本だ。 -
Posted by ブクログ
本書から得られた学びは、子どもの成功を考える上で、従来の知性や学力に偏重した見方を大きく転換させる重要性を示唆しています。
成功を支える非認知能力と環境の力
まず、ストレスに満ちた環境が子どもの中核的な能力の発達を阻害するという指摘は、家庭環境や初期のケアがいかに重要かを痛感させます。集中力、自制心、立ち直る力といった、学力の土台となる非認知能力は、安全で応答的な環境(幼児期の感情面での要求に対する対応)の中で育まれます。
特に、「幼児の発する信号に注意深く、温かく、落ち着いて反応すること」が、ストレスを緩和し、良好なアタッチメントを築くという学びは、親や養育者の役割が、単なる世話を超えた、子どもの脳と心の健康を形作る行為であることを示しています。親への介入が行政措置による隔離よりも有益であるという知見は、問題解決の焦点が「親子関係性のケア」にあることを裏付けています。
努力と姿勢が能力を超える
「人生の成功とIQ、テストの点数は相関しない」という事実は、現代社会においてもなお過大評価されがちな能力主義への反証です。それよりも、「ビックファイブの勤勉性」や「実行意図」といった、努力の質と継続に関する要素が成功に不可欠であると強調されています。
• 成長マインドセット:能力は固定されたものではなく、成長するものだという考え方
• 失敗からの学び:「失敗が唯一、成長を促す」という言葉に集約されるように、失敗をネガティブな終わりと捉えず、一時的なもの(負けはその場、その場の出来事で永続性はない)として、次の成長への糧とする姿勢
• 習慣の力:「繰り返し折れば折り目がつく」という例えは、目標達成に向けた習慣化と継続の重要性を端的に示しています。
これらの学びは、才能よりも、適切な心構えと**具体的な行動(習慣)**が、持つ能力を「使いこなしてなんぼ」の状態へと導くことを示しています。
常に学び続ける姿勢
「初心者の心を忘れるな」や「反証」の精神は、成功者が陥りがちな現状維持への安住を打破するための鍵です。特に、「事実を明らかにする方法は間違っていることを証明すること」という指摘は、自身の考えや現状を常に疑い、問い直す科学的なアプローチを日常にも適用することの重要性を教えてくれます。
そして、指導者に求められる「臨機応変さ、レジリエンス、熱意、専門意識、高潔さ」は、子どもを導き、社会を築く大人がまず身につけるべき人間性の羅針盤と言えるでしょう。
結び
この本から得られた学びは、真の成功とは、高IQや高得点といった表面的な結果ではなく、自己制御能力、レジリエンス、勤勉性といった、逆境を乗り越え、主体的に成長し続ける内面的な力であると結論づけています。そして、これらの力を育むために、温かく応答的な親子の関わりと、失敗を許容し、成長を促すマインドセットの重要性を改めて認識させられました。
尚、星4つにしていますが、自身で理解が不十分な部分から4つにしました。再読予定です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルで損してる素晴らしい教育の本。「失敗・成功」って書かれると、まるで融通の効かない教育ママの発言みたいだけど、全然違う。タイトルどうにかできないかと思う。
そしてこの本での「失敗」は、例えば志望校に合格できないとかではなく、犯罪や自死等、起こってしまえば簡単には人生を取り戻せないほどの恐ろしい出来事を指す。
中身は、アメリカの教育格差とその改善策や、貧困層の子どもがなぜ「失敗」するのかの詳しいメカニズムを書いている。
メカニズムについては、貧困層の子どもは家庭内暴力に晒される傾向があり、その被害(間接的にでも)を受けたときには脳内でストレスホルモンが分泌される。これが頻回となるにつれ、ストレスホルモンを分泌する回路が強化されてしまい、アロスタシスという慢性的なストレスホルモンの曝露状態になる。
今日よく早期教育で使われる「非認知能力」についても、このアロスタシスが悪影響を及ぼすことが指摘される。「非認知能力」について、今までしっくり来てなかったんだけど、この本の解説はとてもわかり易かった。例えば、紹介されてた「非認知能力」の一例が、赤字で書かれた「緑」の文字を「この文字は何色ですか」と聞かれたときに、少し立ち止まって考える力というもの。かんたんに言えば、問題に対して冷静に多角的な面で考える力ということで、犯罪の抑止力にもなるし、ペーパーテストではこの力があると優位に点を取れるように出来ている。
話を戻すと、アロスタシスが発達してしまった子どもは、常にストレスホルモンに晒され、情緒が安定せず、いつもビクビクして、上記の非認知能力を発揮することが難しくなる。そしてテストで落伍し、就職が不利になり、衝動的な気持ちに任せて危険な人生を歩んでしまう…
本書では実際にアロスタシスが発達せざるを得なかった子どものエピソードが紹介され、そしてそこに寄り添い導こうとする教育者の方法論も具体的に記されている。
いわゆる「普通」の家庭には関係ないな、と思うかもだけど、これは複数あるエピソードの中のほんの一部。
他にはチェスのコーチの女性の方法論に焦点を当てたものも面白かった。
彼女は端から見ると可哀想になるくらい容赦がないやり方で教え子のミスを詰める。「褒める子育て」に全振りしてる人なら卒倒するんじゃないかってくらいの冷たさで。
じゃあ教え子たちは彼女を嫌いになるかというと、その中の一人の子は人間関係での問題が起こったときに彼女に意見を聞きにくる。そこで彼女はものすごく残酷なくらいに冷静に第三者としての意見を述べるんだけど、その子は「もういいです」とプイッと居なくなり、しかしまた同じことが起こったときに聞きにくる。それは、彼女が冷たくても的確なアドバイスを、そして一番重要なのは忖度なしに教えてくれることを子どもが理解しているから。
勿論このコーチを嫌う子もいるだろうけど、子どもは実は厳しい意見も飲み込んで血肉にする力を持つことがわかる。そして重要なのは、コーチが親ではなく子どもにとって第三者であるということ。親は子どもが傷ついたときに受け止めるための安全基地として機能することが重要というエピソードもある(全肯定するべきという話ではなく)。
子育てで嬉しいけど悲しいことはいつか社会に出るということ。社会では親は守ってやれない。だから華々しい成功とまではいかなくても、危ない道に行かず、自分のための人生を歩んでほしい。そのための参考書としてとても有意義な本だった。 -
Posted by ブクログ
どこに生まれたかで、その先の人生が決まってしまうような不合理。これを甘受してしまうような人間にはなりたくない。何か出来るとかではなくとも、それを認識していたい。
何もしなければ、貧困層に居続けることになるような子どもとその親に、継続的な支援を。家庭での教育、家庭環境の重要性。だからこそ、親へのフォローも大切にする。親といえども、まだ10代。
幼少期の親からの愛情と関心、声掛けで認知能力に差が出る。適切な声掛け、博物館や水族館などへの知的活動、本の読み聞かせの重要性。
ミドルスクールの一時閉鎖は、決断が早い気がしたし、子供達が見捨てられたと思うんじゃないかと、苦しくなった。投資者や、学校の評判を意識せざるを得ないと、子供の教育のための最適な判断が難しいのではないだろうか。
難しいことだけど、結果が伴ってきているのに安心する。先の未来を楽しめる子どもが増えてほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ親として子供とどう関わるかの道筋を示してくれる良書。
最後の方は市民として国の在り方も変ってくると訴えており教育参考書感覚で購入した自分にとっては求める内容ではなかったため★4つとした。
しかし、序盤の子供と関わる親の対応や、行動に求められる正解を実例(研究結果)を元に語ってくれているため参考になった。
実践として、毎日、夫婦お互いが子供と接する中で良かった行動・言動を客観的に評価し褒め合う習慣を作ることにした。
どうしても、お互いに反面教師の部分「ああなっちゃダメよ」と子供に教えてしまいそうになるが、そういった親の行動は百害あって一利なしだと読んでいて学ぶことができた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエデュケアは一種の投資である。では、日本という社会は一体何に投資をしているのか?
若者の非行は、理性とかけ離れた感情や精神やホルモンの影響を受けている。すなわち、罪を重くしても、非行を防ぐ効果は薄い。逆に、生徒が自ら自生の力を発達させようとする状況や仕組みを作ることに重点を置いたほうが効果は高い。テストの点数にインセンティブを与えても、効果は薄い。むしろ、時には遊びや楽しいという感覚さえも、報酬は「仕事」に変えてしまい、モチベーションをなくさせてしまう。
添削やフィードバックのコメント、教室の雰囲気を変えることで十分教育は変化する。