三浦明博のレビュー一覧
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すこぶるよくできた作品。
読後、解説を見て江戸川乱歩賞受賞作品と知る。受賞は伊達じゃないと納得。ミステリの面白さはもちろん、戦争の悲惨さを伝える社会性も備えており、一気に読み終えてしまった。
骨董市で売られた古い釣り道具が、戦時中の封印された犯罪を暴き出す。過去と現在を結ぶ展開は見事だった。戦争が生み出した狂気を、ミステリという小説の形にして読む者の心に打ち込もうという意欲を感じた。
ラスト。過去の残酷な真実が明らかとなり、しばし茫然。このラストで、過去の罪の真相について多くを語らせなかったところは特に好感が持てた。いろいろと考えさせられるところとなったからだ。
著者の誠実さが滲み出た、 -
Posted by ブクログ
ー 「1999年の改正住民基本台帳法、そして翌年国会に出された個人情報保護法案、自衛隊法改正案。すべてが法案として通過しているわけではないが、こういうのが続々と出されてくる。何やらきな臭い感じもする。見過ごしておるうちに、わしらは、国家の奴隷になってしまうかもしれん」
奴隷という言葉に、少なからずショックを受けた。
「歴史は、単なる過去ではない。未来のひな形だ。不平を言うだけで手をこまぬいておれば、ひな形はそのままの形で現実となる。そうなるに決まっておる。何故なら人間は愚かだからじゃ。わしだって、正真正銘の愚か者だ」 ー
戦時中の“罪”に向き合わない政治家との戦いを描いたサスペンス。
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Posted by ブクログ
『バドバーグ』
キャンペーン中のビールの名前を叫び、自殺した男。そして、同じ様な自殺が続く。
なぜ、彼らは自殺をするのか、そしてキャンペーンとの関係は?
主人公の堂門 修介は、中堅広告代理店のディレクター。
大手ビール会社の商品『バドバーグ』のリニューアルキャンペーンの責任者を任され、張り切っていた。
しかし、最初は大成功と思われた野心的なキャンペーンは、大変な事態へとなった。
ビールの名前を連呼して、自殺する者が相次いだのだ。
真相を追う修介。しかし、一向にキャンペーンと自殺の関係が見えず、やがて...
サブリミナル映像、バックワード・マスキング、そして20khz以上の非可聴音など。
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Posted by ブクログ
第48回江戸川乱歩賞受賞作。
CM制作者・日下が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した古い16ミリフィルムの映像を使い政党の広告を制作しようとする日下だが、そのことから歴史の中で蓋をされてきた事件に巻き込まれていきます。
トーマス・グラバー、長崎の原発、特高警察、在日外国人二世
戦争と言う狂気が生んだ事件。でも、それで済まされることなのか?戦争の歴史が忘れられ、市民が考えることをしなくなった時、狂気の歴史をまた繰り返すのではないのか?真実から目を背けようとする怠惰な生き方を戒める一冊です。