三浦明博のレビュー一覧
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秋田犬の五郎丸が山里の民家の納屋で亡くなるまでの足取りを、途中途中で関わった人々との交流を交えながら追って行きます。
とても賢く思慮深い五郎丸はゆく先々で、人々の心に何かを残していきます。一か所に留まる事が出来ず飼い主が変わっていく気の毒な犬です。やはり犬は飼い主とずっと一緒に居られることが一番の喜びですから・・・。
道で秋田犬を見かけるとむっつりしているので、なんか怒ってんのかなと思ったりしますが、日本犬特融の感情を表に出さない所がまた可愛いです。五郎丸も淡々としていますが愛情深いいい子です。
中には五郎丸をシンプルに捨てるクソ家族もいてぶっ飛ばしたくなりますが、実際こういう風に捨てる人もい -
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日本の過去の罪に切り込んだ作品。過去の話とは言え、まだ生々しさが残る戦時中の問題。先の大戦を語るとき、どうしても語り手のイデオロギーが強く出てしまったり、感情的な描写が増えたりすると思うのだが、本作は極めて淡々と日本の過去を見つめていたと思う。
何をもって日本人と定義するのか、誰もわからぬままに、結論だけが先走る恐ろしさ。弱い者の矛先はさらに弱い者に向くという言葉に、現代日本にも通ずる闇を感じた。
良作ではあると思うが、もう少し事件に意味を持たせてほしい…と感じた。核となる事件が、あまりにもあっけなく、それを取り巻く物語の重厚さに霞んでいる印象を受けた。このあっけなさが、ある意味リアルか。 -
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ネタバレ滅びのモノクローム/三浦明博:第48回大賞受賞。2002年。
始まりは、長崎原爆。そして現代の仙台と日光。骨董市で高値をつけて売る出戻り女。出戻り女は由緒ある家の娘。当然売れないのだが売れた。それは売ってはならないものだった。祖父に回収を命じられる。助手にいけすかない男。そいつが自殺っぽく殺される。
出戻り女の元夫が会いに来る。来る衆院選?のため協力してほしい。はぁ?
買った男は釣り好きだから。そこに古いフィルムを発見。修復してくれる男に依頼。修復してくれた、けど行方不明に。ひとりでごはん作れない父を残してどこかに行くはずがない。
犯人は、出戻り女の元夫の祖父の隠し子。祖父はもちろん地元の権力 -
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考えてみれば特別なことではない。
それまで普通に友情や交友関係を築いていた人たちが、戦争のという状況下で敵国人になってしまう。
歪んだ攻撃性は無抵抗な人たちへと向かい、それまで平和に暮らしていた同じ空間で無惨に命は奪われていく。
偶然に手に入れた1本のフィルムには、遠いけれどけっして忘れてはならない過去が封印されていた。
あらたに起きた殺人事件のきっかけになったものは何だったのか。
現代の事件を手がかりに過去の事件に迫っていく。
とても読みやすかったけれど、途中で展開が読めてしまった。
江戸川乱歩賞を受賞した物語・・・ハードルをあげて読んでしまったせいだろうか。
奥行きのないミステリといった思 -
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ネタバレ消費者は何をもって商品を購入するのか。
TVでCMを見て購入を決める人は意外に少ないような気もする。
ただし、商品イメージはCMによるところが大きいのも現実だろう。
堂門は全面的に任された「バドバーグ」のCMのために奔走する。
ようやく出来上がったものは話題を攫い、ウェブサイトの閲覧者は日を追って増加していった。
けれど、すべてが上手くいっていると思った矢先、駅のホームで不審な死を遂げた男が最後に呟いていたひと言が問題となる。
「バドバーグ」・・・そう言って男は線路へと落ちていったのだ。
どんな仕事にも責任が伴う。
大きいとか小さいとか関係なく、請け負った仕事に見合った報酬が与えられるのと同時