辺見じゅんのレビュー一覧
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大宅賞と講談社ノンフィクション賞のダブル受賞作品。
題名から、文書で届いた遺書に基づく作品かと思っていた。
しかし、強制収容所から出るときには、紙類など記録媒体は持ち出せず、何と抑留されていた仲間たちが頭の中に記憶し、あるいは小片に折りたたみ肌着に縫い付け、日本に帰ってから一字一句を文章化して遺族に届けたという。
彼らの巧まざる努力と知性に、驚嘆するばかり。
その遺書とは、ダモイ(帰国)情報で彼らを励まし、収容所生活に少しでも潤いをと俳句を主宰した山本幡夫のもの。
その彼自身が病に倒れ、帰国を果たせなかったとは。
著者による、帰国した人びとに対する綿密な取材が、リアリティに満ちた感動の傑作とな -
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ネタバレ映画の予告を見て気になっていたのだが、結局映画よりこちらを先に読むことになった。
こんな悲惨な出来事はフィクションであって欲しかったけど、主人公の山本幡男は実在する人物で、第二次世界大戦後にシベリアに抑留されていた60万人のうちの1人だ。
強制収容所(ラーゲリ)で約11年間過ごした。過酷な条件下の中、11年も強制労働させられるなんて想像もつかない。本では「それから2年半が過ぎ」と簡単に書けるけど、彼らにとっては絶望の中生きるか死ぬかの2年半で、とても長く感じただろうと思う。
故郷に帰れず、強制労働を強いられ皆が絶望に打ちひしがれている中、どんな理不尽な状況であっても喜びや楽しみを見出して -
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私たち現代人の思い描く、絶望とは、失恋、リストラ、落第、などであろう。豊かな生活を送ることのできる私たちはいよいよ承認欲求、自己実現欲を満たさんとする中に生まれる挫折で絶望を感じうるだろう。そんな現代人が想像するに難い戦時中の絶望とは…。常に死と隣り合わせ、気を抜けばすかさず命を失う状況。いつ祖国に帰れるか、そもそも我が身を待つ者は、いるのか。絶望の中においては、日々の当たり前が貴いものであるのは、頭では理解しても、身をもって体験できないならば、我が身に置き換えて考えることもできない。現代人には語り尽くせぬ逆境に打ち勝とうとするものに心を打たれた。
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195 人間を、「捕虜」という扱いやすく管理しやすいものに変えようという圧倒的な暴力の中で、ずっと人間であり続けた人。
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感想
ネタバレあるので映画まだ見てない方は読まない方がいいです!
一昨年たまたま渋谷の蔦屋書店で見つけて買った本。
映画『ラーゲリより愛を込めて』のノベライズ本です。
1回読んで、ボロクソに泣いて、映画も見て、ボロクソに泣いて、去年末に再読。
映像も好きだけど、ノベライズは文章で登場人物の気持ちが追えるのでより好きです。
僕は登場人物の中だと相沢さんが一番好きです。松田さんもすごく人間らしくて好きです。
なんか、感想を書こう -
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Audibleにて。
「ラーゲリより愛を込めて」でこの原作を知りました。(映画は未視聴)
シベリア抑留ものは辛いシーン(寒さで鼻がもげるとか、遺体が凍るとか)が多いため、山崎豊子の「不毛地帯」以来読めていませんでした。
この物語にも、抑留による辛いシーンはありましたが(私は同胞による吊し上げが辛かった)、それ以上に希望に満ち溢れていました。
東南アジアの収容所ものはいくつか読んでおり、そちらはイギリスやアメリカの管轄のため、比較的人道的な待遇がなされており、文化活動が行われていたのは知っていました。
しかし、国際法違反の非人道的待遇が取り沙汰されることの多いソ連によるシベリア抑留で、そのような -
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ネタバレ二宮和也主演の映画「ラーゲリより愛をこめて」の原作本です。映画、観ました。
原作となっている本書はずいぶん以前に書かれたようで、1989年に単行本が出版されている。解説では、1990年代の今、読むべき本とか書かれているけど、もちろん2023年の現在読んでも価値ある本です。
先に映画を観ているので、ラーゲリの厳しい寒さや、日本人の中にもスパイがいるかもしれないという緊迫感、やせ衰えて死んでいく仲間、懲罰房の恐ろしさなどが読みながら思い出された。映画でも山本が俳句を詠んだり、知的な部分が存分に描かれていたが、本書の中にもたくさん、山本やその仲間が収容所で読んだ俳句や詩が出てくるので、よくこんなに覚 -
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先日、映画「ラーゲリより愛を込めて」のDVDを観た。
シベリアの収容所で帰国を果たせずに病死した男の遺書が、思いもかけない方法で家族に届けられる。
良作でした。
その原作本。
第二次世界大戦終結後、たくさんの日本人がシベリアの収容所に送られたことは聞いたことがあったが、巻頭の地図を見て、収容所の多さと収容者の人数に驚く。正確な数は今も分からず、およそ60万人だということだ。
無知であった。
映画では長くなる説明はされないため、少し背景に分からなかったこともあって、原作本はそれを知る手掛かりとなった。
抑留から2年半後、一般の捕虜の多く(一部?)は帰国が叶った。
しかし、ソ連側から見て「戦犯 -
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以前、私の周りにはキャラの濃い友人が多いと書きましたが、その中の1人に本人は読書をあまりしないのに何故か私の読書事情を把握したがる女性がいます。
そんな彼女に「そろそろ部屋で軍歌を流し出しそうやな、そうなったら絶対に遊びに行かへんから言ってよ。」と、あらぬ疑いを掛けられましたので暫く第二次世界大戦関連の本から離れようと思っていたのに、気付けばまた手を出してしまいました。
もういっそ大音量で『日の丸行進曲』でも流してやろうかと思う私ですが、本作は敗戦後にソ連軍に捕われ、極寒と飢餓と重労働で有名なシベリア抑留をされていた山本氏と、山本氏と関わった仲間達のお話です。(嫌な知名度ですけれど)
タイ -
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