村松友視のレビュー一覧
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2010年に創業120年を迎えた帝国ホテル。そこで働く人々のインタビューを通して、歴史あるホテルの姿を明らかにする。
インタビューされるのは支配人にはじまり、料理人、フロントマン、清掃人、マネージャー、設備担当、さらには請負の神主やピアニストなど。
彼らへのインタビューで著者が重視するのはホテルに勤める前の人生と今の仕事を選んだいきさつ。小さい頃からのあこがれが叶った人もいれば、なんとなく勤めてしまって現在に至るなんて人もいる。
ホテルの宿泊者にそれぞれの人生があることと同じく、そこで様々なサービスを提供する仕事人たちにも、それぞれの人生がある。そのホテルに伝統があればあるほど、その味わいは深い。
一流ホテルの歴史、重みを感じさせてくれる内容だが、インタビューのトリを飾るのが意外にもホテルのIT担当。一息つける「オチ」にはピッタリの人選だ。 -
Posted by ブクログ
マルノウチリーディングスタイルで、作家さんの誕生日ごとに並んでいるバースデー文庫を買ったらこれでした。だから最初は内容で読みたいと思ったわけじゃなくて、そもそもあんまり動物が好きではないし、ペットを飼うのもむしろ嫌なほうなんだけど、読んだらほっこり、じんわりしてしまった。解説にもあるとおり過剰な表現ではなく、あったことを書いているという感じなんだけど、確かにそこには誠実な愛情が滲み出ている。そしてあっさりゆったり力の抜けた文章で語られるものだから楽しく油断して読んでいたら、エピローグで泣きそうになってしまった。それでもエピローグも抑えた描写で、ちゃんとアブサンと向き合っていたのだなという姿勢が見える。
先日読んだ「昭和の犬」といい、淡々と抑えめに書かれた動物の話なら読めるなあと思った。それは、「動物の気持ちがわたしには分かる!通じ合っている!」と思い上がることのない誠実な愛情が良いのだなと思う。人間同士だって相手の心など分からないのだから。 -
Posted by ブクログ
2ヶ月毎の本場所を心待ちにしだしたのは、小学2年の時。昭和46年(1971年)当時の大相撲界は、昭和の大横綱 大鵬が力士として落日を迎えようとしており、そのバトンを受取るように台頭してきたのが前年横綱に同時昇進した北の富士と玉の海。三役には貴ノ花と輪島の若きプリンスが大関を目指し、しのぎを削っていた。
贔屓は玉の海と貴ノ花。ふたりの星取りが気になる小2。それだけに、玉の海が虫垂炎をこじらせ現役の横綱のままで急死した時は大ショックも大ショック。その前年、三島由紀夫が自決して激しいショックを受けた母親の気持ちが痛いほどわかった。
さて、本書。
作家 村松友視が描く第52代横綱 北の富士勝昭の評伝。著者と北の富士の交友はあとがきで明かされる。これが中々粋な交流。知り合ってから会食したのが実に30年後。その間の交流は、ふたりの馴染みである銀座クラブ姫にて、時折交わすコースターに書いたメモのみ。ちなみに最初のメモは、「北天佑は横綱になれますでしょうか?」。この「コースター文通」は10通に及び、後年北の富士がそれをきちんと保管していたことを知り、著者は北の富士にますます魅了され、やがて筆を執るに至る。
その北の富士の現役時代の成績。幕内優勝10回。取り口は典型的な攻撃相撲。突っ張って相手の体勢をくずし、右上手・左下手の左四つからの上手投げ、そこに外掛けという速攻相撲。このパターンが崩された時は脇の甘さを突かれた時で無謀な首投げをしたり、守勢にまわるとあたふたとして呆気なく負けた。横綱昇進後も4場所連続で11勝4敗が続き、「イレブン横綱」とも呼ばれ、出入りの激しい安定性に欠いた横綱であった。
そもそも本書を手に取ったのは、大好きだった玉の海のことが書かれていたから。ただページをめくるにつれ、すっかり北の富士に魅了されてしまった。とにかく、おおらかで何事にも恬淡とし泰然とし、華がある。それを饒舌に物語るのがニックネームでありエピソード。夜の帝王、プレイボーイ横綱、現代っ子横綱、現役力士でレコードデビュー、夜のヒットスタジオで熱唱、休場中にハワイでサーフィン、断髪式後のお色直しではタキシードで登場、国技館近くに豪勢な部屋ビルの建築、銀座のママと結婚。そこに親方として千代の富士・北勝海のふたり横綱を育て上げた名伯楽という冠がつく。現在はNHK大相撲の人気解説者。時に毒を含んだユーモア、時に辛辣、時に賛辞…と縦横に持ち前の口跡の良さで語る。
それと何と言ってもお洒落である。和服にスーツ、ジーンズ、レザージャケット…、見事に着こなす北の富士を見たくてNHKの大相撲中継を観る方も多いと聞く。表紙カバーに、北の富士の着物姿の写真をもってきたのも頷ける。洒脱でダンディ。豪放磊落さと繊細さと気風の良さを合わせ持った、「現代っ子横綱」の来し方を昭和の大相撲史もなぞりながら堪能できる好著。 -
Posted by ブクログ
10年ほど前に読んで、部分的に何度か再読していたが、今回ふとしたいきさつで知人のネコをひと月半ほど預かったことで読み直した。
子供の時から家にはネコがいて、ずっとネコを見ながら生活していた。そんなネコを飼ったことのある人なら文中の描写にネコのしぐさがありありと思い浮かび、ニヤリと笑いながら読んでしまうだろう。愛すべきネコへの気持ちがにじみ出てくる文章だ。ネコを飼っている人にたびたびこの本を勧めてきた。
ペット、いや伴侶のネコはいつか死の旅に出る。最後はさすがに湿っぽいが、21年の生涯を全うしたネコへの愛情と家人との暮らしぶりをユーモラスに描いた物語。一気読みだった!