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七十億円を稼いだリングの悪役、グレート・トーゴーをはじめ、第二次大戦直後、アメリカで人気を呼んだ日系悪役レスラーたちの消息を求めてハワイに行った主人公が、プロレスの世界に仮託してみずからの想いを重ねあわせる表題作をはじめ、プロレスという虚実の境目に実人生の機微を鮮やかに浮かび上がらせた「覆面剥ぎマッチ」、「セメントの世界」「クレージー・タイガー」「奈落の案内人」「ひとりぼっちのツアー」の異色短篇小説六作を収録する。
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Posted by ブクログ
『私、プロレスの味方です』で有名な村松友視の短編小説集。『当然プロレス』も昔買ったけど、プロレス話が深すぎて1作しか読んでない。実家に有るんだっけな。 グレート東郷を筆頭に、戦後活躍した日系悪役レスラーたちの足跡を追うために、なんとなくハワイに降り立った主人公。ひょんなことからつきまとってきた現地...続きを読むの運転手か、その知り合いかは定かではないが、とてつもなくプロレス人脈を持っており、ハロルド坂田に会わせてもらうことになる…。 前半数作は、プロレスサークルの覆面レスラーの話が若干変わっているが、プロレス中心の話。後半数作は、プロレス関係ない話で意外であった。 もともと編集者ということで、語彙がしっかりしており、言葉選びも相当細やかなところは好感が持てるし、同僚の観劇担当編集者が、「奈落を見せてやる」と裏方を覗きに行ったっきり失踪するなど純文学としてもドラマとしても完成度の高い作品が詰まっている。 ただまあやっぱり、プロレスに思い入れがないとのめり込めない部分が有るのは、若干ハードルが高いかな。クレイジータイガー(ジェットシン)やアラブの暴れん坊(ブッチャー?)が、パイプ椅子を相手の顎めがけて打ち下ろすなんていうのは、プロレスから離れている人にとっては、痛いとしか感じないわけで、あれはそういう演出だという情景が見えないと辛い。 また、タイガーにしろ覆面レスラーにしろ、情景でもあり、人生の比喩でもありという表現で、プロレスを見ている人にとってはうまくはまるのかもしれないが、そうでない人にはどっちつかずの印象になるのではないか。 高度成長期の日本、アメリカにとって、仮想的としての特定国や文化があり、プロレスがそれにうまくマッチしていた時代であったということを知るには非常に良い作品であろう。 あ、プロレス以外の話も面白いよ。
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