実吉捷郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
感想 ネタバレなし
タイトルからして不穏な雰囲気が漂っていたので、読む前から嫌だな...という心境でしたが、とても面白かったです。辛い場面は多いですが、少年時代の痛々しくも、楽しく、美しい思い出を回顧できる作品でもあります。
本作品を通じて、ヘッセの少年・青年時代の心情を描き出す手腕には、驚嘆させられました。大学以降の心情描写に優れた作品はいくらでもありますが、それ以前の心情をここまで瑞々しく描ける作者は中々いないと思いました。国や時代は違えど、どんな人であっても自分の子供時代にあったキラキラしたドロドロした何かに、出会い直せる作品です。
あとは、本作品が1904年刊行ということで、この時代のドイツの資本主義や商売のあり方、徒弟制度を窺い知れたのもよかったです。
感想 ネタバレあり
1.主人公が亡くなった場面の表現の巧みさ
まず、主人公が亡くなったことが判明する文章の表現がとにかく素晴らしい。ただ死んだとするのではなく、主人公の死体が流れる様子が描写されると、死が現実として感じられて、絶望感が一気に押し寄せました。これは、本当にとんでもない表現です。
2.画一的な教育の暴力性と日独の共通性
また、本作品のテーマである教育についても考えさせられました。読んでいる中で、きっとこの筆者はギフテッドか何かで、画一的な規範を押し付ける教育への個人的な恨みがあるんだろうな、と思っていました。読み終わった後に調べてみると、筆者はいろんな学校を辞めたり、職場を逃げ出したりしていて、自伝的な側面も強かったと知り、納得しました。教育に殺されかかった筆者だからこそ、教育に潜む悪牙を表現できたのでしょう。
本書で問題視されているドイツの教育は、日本と共通している点が多いように感じました。例えば、受験への過度なプレッシャー、封建制度の名残なのか、目上が言うことは絶対という教職員・校長の態度や従順で規律正しい国民の育成を目的とした教育。これらは、ドイツだけでなく、日本でも見られる特徴で、本書の問題意識は日本人が共感しやすいと思います。
3.青年期の快い美化と美しいものに「出会い直せる」感覚
ヘッセの描き出す青年期は、美しい場面が多く含まれています。これは郷愁や憧憬の思いが大いに含まれた美化されたものであり、あくまでも大人が振り返った時のイメージなのだと思います。振り返ってはじめて、過ぎた時代の美しさや価値に気づけるし、何なら美化しすぎるのもよくありません。人生は常にうっすら辛いものであって、常に安楽なものではないと思います。過去の過度な美化は、それと比較した時の現実の辛さを増幅させて、「今」に向き合うことを難しくしてしまいます。
ただ、過去を美化することの弊害は分かりつつ、ヘッセの描写は本当に美しいことは認めざるを得ません。私は学生時代はどちらかというとネガティブな思い出が多いので、わざわざ思い出すことは少ないです。(環境や周囲の人間関係には恵まれていたが、自分がダメだったので、思い出すと嫌になるため。)そんな私でも、ヘッセに過ごした日々の美しさや価値を再発見してもらったような思いがしました。ありがとうございます! -
Posted by ブクログ
繊細な少年の幼少から青春を描いたヘルマン・ヘッセの代表作です。
傷付きやすく、繊細で、多感な少年時代。心理描写や自然描写の詩的な美しさに、豊かな感性を持った少年の心の内を思わされます。親や周囲からの期待に応えようと自分を追い込み、努力をし、必死で掴んだ神学校への切符も、学友との関係の中で色々なことが変化していく。どうにもならない車輪の下で必死にもがく姿に、なんとも苦しい心地になります。
決して、読後が爽やかな話ではありません。
でも、読めてよかったと思う一冊です。
じわじわと身体の中に落ちてくるような、やりきれなさと日々の中にある輝きを見る物語でした。