日和聡子のレビュー一覧
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面白かったです。
小川洋子さん選の短編集で気になった詩人の小説です。
こちらの方が、以前読んだお話よりも柔らかい印象ですが、でもどこか不安定で不穏なところが好きでした。
「湖畔情景」の人ではないものの世界も穏やかに受け入れられました。労りの一文が素敵だったので手帖に書き込みました。
「校舎の静脈」は、とある学校の生徒たちが主人公となる連作短編みたいなお話だったのですが、ずっとちりちりした不安がありました。給食運搬用のリフトに乗り込んだ英祥太がどうなったのかとか、生徒が群がってた窓から見下ろしたら何があったのか(直前に何かが激しくぶつかる音がしていた)…はっきり書かれていないのが想像を掻き立てま -
Posted by ブクログ
『その合間に、犬をちらちら見たり、そのまわりにいる人たちを視線の端に入れつつも、絶えず誰からも目を逸らすようにして歩いた。先ほど少しだけ降った雨にかすかに湿る地面をゆく足の運びに合わせて、じゃ、じゃ、じゃ、じゃ……、と音が鳴り、その音を立てる靴裏の感触が、ふくらはぎに伝わって、背中にはりつくようにして後ろからついてきた』ー『兎』
言葉の響かせる音は時に字義通りの意味とは別に何かに成りかけのものを連想させる。うっかりしていると頭の中はそんな中途半端な出来損ないの未成熟の言葉で埋め尽くされ息苦しくなる。詩人と呼ばれる人の頭の中はさぞやそんな風に次から次に浮かび上がる意味を掴みかけたもので埋め尽く -
Posted by ブクログ
詩人というとやたらレトリックを駆使したり奇をてらった言葉の術で煙に巻いたりが昨今の流行り?なのであるが日和さんの小説はそれが少なく直球勝負が多いように思う。
だからこそその飾りのない剥き出しの言葉の破壊力は凄まじく例えばそれがスーパーのチラシや給食の献立表の羅列からでも易々とドラマを産み出すことが出来るのだ。
そしてその感性が学校という日常を切り取るとき校舎に生命を与え子供たちの他愛ないことばや行動が赤い血となって流れ出す。
当然動の対には静があり青く流れる血がこの作品の主題となるのだが…踏み込んで心の臓は何かを探すのも一興かも知れない -
Posted by ブクログ
ネタバレヒグチユウコさんの絵が先か物語が先か。
あまりに絵とお話が合いすぎて、不気味な不思議世界にどっぷりとつかる。
とくに表題の佐左目谷行の彼が畳に身を任せ、擦りつける様子がたまらない。。。
不穏なのにユーモラスで、まくしたてる台詞は滑稽なのに闇を感じる、そんな3篇。
宿なしで居所も定まらない「私」を御屋敷に招き入れてくれた夜見闇君。
お座敷で恋文などをしたためたりとごろごろと過ごしていたら、繭君の日終(ひねもす)君を友人の佐左目谷君のところまでお連れしてほしいと頼まれて。
影を追って海辺の小屋へたどり着いた彼女。
小屋には娘のこと綴った黄色い表紙の本があり。
境内の夜店で自分の草紙を売る男が