出口顯のレビュー一覧

  • 声と文字の人類学

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    「リテラシーとは何なのか?」という問題について興味を持ったものの、通り一遍の理解ではつまらんな、と思って本書へ。リテラシーとリテラシーがもたらす影響について、「識字化以前/以後」、「音声VS文字」といった二項対立を超えた理解の仕方についてたくさんのヒントを与えてくれる。というより、読むほどに問題が複雑だと実感し、ますますわからなくなってくる。SNS時代=「打ち言葉」の時代という視点から過去を見直すと、たしかに事は単純でないことを実感する。事例が大変豊富に引かれていて文献レビューとして今後も参照したい本。

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    2025年10月05日
  • ほんとうの構造主義 言語・権力・主体

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    著者の専門は文化人類学なので、レヴィ=ストロースを中心とした「構造主義」の話しかと思ったら、レヴィ=ストロースは最初の方で少し出てきたら、あとは結構、フーコーの話しが続く。そして、バルト、ラカンの話しを経由して、レヴィ=ストロースに戻ってくる。

    非政治的で、静的にみえるレヴィ=ストロースとは、かなり違うものにみえるフーコーの権力論なのだが、実は、かなりの共通点をもっているんだな〜。

    というか、お互いを必要としあう対称的な存在。つまり、構造主義的な構造にこの2人はあるというわけ。

    フーコーは、ポスト構造主義と位置付けられることもあるけど、構造主義としての側面もしっかりあるんだよね。というか

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    2020年04月01日
  • 声と文字の人類学

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    「最初に声の文化があって、その後文字の文化が生まれた」という文明観を再検討した本。

    最初に取り上げられるのは、ジャック・グディ(初めて知った学者だ)、マクルーハン、オングのリテラシー研究。
    文字が人間の認識様式を変容させ、西洋的科学を発展させ、視覚を特権化した、とまとめてある。
    これに対して、筆者は歴史的な社会や、西洋文明に植民地化された社会を取り上げ、必ずしも口承から書承へ単純に移行したわけではないという例を対置する。

    「書承」という言葉は、この本のキーワードの一つ。
    そういう言葉があるんだ、と思ったら、筆者の導入する用語のようで、「リテラシー」とされている。
    ただ、読み書き能力だけを指

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    2024年11月17日
  • ほんとうの構造主義 言語・権力・主体

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    レヴィ=ストロース、ラカン、バルト、フーコーの4人の思想を読み解きながら、「構造主義」と呼ばれる人文科学の方法論的革命の意義を論じた本です。

    著者は、構造主義からポスト構造主義への発展という図式を退け、レヴィ=ストロースの神話分析の中に、ラカンの『S/Z』やフーコーのマグリット論、あるいはラカンの鏡像段階論と共通する志向を読み取ろうとしています。4人の仕事に共通しているのは、他者を巻き込み他者に巻き込まれる中で主体や自己が形成されるという発想であると著者は主張します。神話や文学作品などの対象を分析的に捉える西洋近代の主体を相対化することは、自己の視線が他者の視線と輻輳する場へとみずからを開く

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    2016年06月29日