“「……うむ。」
わずかにうなずくと、お嬢様は手をのばして、スコーンをつかみました。そのあいだも、書類から目をおはなしになりません。
お嬢様はベッドの上にひざを立ててすわり、書類と本を交互にごらんになりながら、スコーンにかじりつきます。
とても行儀が悪いのですが、とがめる者はだれもおりません。
この
...続きを読むありすお嬢様こそ、二ノ宮家の当主でいらっしゃるのです。
ぼくはじっとベッドサイドに立って、お嬢様が食事を終えられるのを待ってました。
お嬢様は無言で、スコーンをほおばります。
薄暗い中、ベッドにうずくまり、何日間も同じパジャマで、髪はねぐせだらけでもじゃもじゃとあれば、そのお姿は女の子というより、野生動物かなにかのようで……。”
イラストに惹かれて。
あっさり読めた。
“「わたしという探偵が現れなければ、彼女は復讐をまっとうできたでしょうに。」
冗談とも本気ともつかない口調でおっしゃると、お嬢様はふうっと息を吐いて、シートにもたれます。
「桜子さんだって、わたしがあの男の過去の罪をあばかなければ、真実を知ることもなく、傷つかずにすんだかもしれない……。わたしが外に出ると、いつもこうよ。」
そうつぶやかれたお嬢様の声は、どこか投げやりで、悲しげな響きを含んでいました。
これまで、つねに自信満々といった態度でいらしたお嬢様には、このようなお言葉は似つかわしくないように思えて、ぼくは思わず、口を開きました。
「しかし、ぼくはやはり、お嬢様が事件を解決なさったのは、いいことだと思います。」
執事という立場で、お嬢様に自分の意見を申しあげるなんてですぎたまねだとは思いますが、言わずにはおられませんでした。
「うまく申しあげることはできませんが、お嬢様が過去の事件を解決してくださったからこそ、かすみさんの心はすくわれたのだと思います。それに、桜子さんもだまされてしあわせでいるよりは、つらくても本当のことを知ったほうが、よかったのではないのでしょうか。」
「そうかしら。」
「はい、お嬢様。」”