白須清美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
★5 追い詰められた人々が守りたかったものとは? 極限状態の愛と選択を描く、濃厚な人間ドラマが好きな人へ!
■あらすじ
アメリカのペンシルベニア州、ラストベルト地帯にある街ロックスバーグ。優秀な頭脳を持ちながら吃音の息子をもつシングルマザー、亡くなった母を想いつづける自閉症の若い男性、音楽の才能がありながら借金と腐れ縁に苦しめられる女性。
寂れた街で生き抜く彼らが、なぜ"死体"と向き合わなければならなくなったのか…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 深く深く人間を描いた犯罪小説。日本人の好みにも合った内容なので、普段は海外ミステリーを読まない人にもぜひ手に取ってほしい一冊。
本作は時代に取り残された街で、様々な因果によって汲々と生きざるを得ない人々を描いていく。視点人物は3人で、それぞれの物語が交互に展開していくのですが、そのすべてに”死体”が関わっているのです。
当然ながら犯罪に手を染めることになるのですが、そこまでして彼らが守らなければならなかったものは何だったのか… を追っていくという物語。
視点が順番に変わるのって読みづらくない?と思われるかもしれませんが、ちゃんと読者を惹きつけるプロットが組まれているのでご安心を。むしろえぇぇっ? って思うような展開が次々とやってくるので、ページをめくる手が止まりませんよ。
まず本作の読みどころは、3人の背景とその丁寧な描写ですね。さらにそこへ切迫した状況が押し寄せてくる。ギリギリで生きているのに、なんでこんなにもヤバい状況なんすか… と頭を抱えたくなるほどなんです。次々と対峙する危機的状況を切り抜けられるのか、ハラハラドキドキ感が止まんない。
気持ちが痛いほどわかるのは、息子思いのシングルマザー、カーラ。犯罪なんて良くないのだけれど、よく頑張ったね… と言いたくなってしまう。
応援したくなるのは自閉症のリード。周りからは厄介者扱いをされているかもしれないけれど、きみの信じる道を行けばいい。あなたは近い将来、大物作家になるはず。
説教したくなるのは歌手志望のリズ。あんた隙が多すぎるのよ、もっと狡猾に生きなさいよ。まぁでも彼女にも幸せになってほしいなーと思ずにはいられなくなる。
そして本作一番のポイントは、彼らがなぜここまでしなければならないのか?という部分。自分を犠牲にしてでも信じなければならない何かがある。それは愛する人、約束、夢、プライド、信条など様々。
たとえ追い詰められても守りたいものってあると思うし、それはとても尊いものだ。でも、犯罪を犯してはならないのです。
給料は上がらないのに物価ばかり上がっていく今の日本にも、同じように追い詰められている人たちがたくさんいるんじゃないすかね… 犯罪に手を染めてしまう人の横顔が見える物語でした。
■ぜっさん推しポイント
本作で一番好きなのは、リードの心情描写ですね。ピュアで圧倒的な力強さがあり、私の心臓にまっすぐナイフを突き刺してくるんすよ。こうした文章に触れていると、気取った言い回しなどよりもずっと心に伝わってくるものだと実感しました。 -
Posted by ブクログ
★5 アメリカの田舎町、スモールタウンで繰り広げられる犯罪小説ならぬ "罪の小説" #罪に願いを
■あらすじ
アメリカはペンシルベニア州、ラストベルト地帯にある錆びついた街。
工場で働きながらボランティア消防員をする男、生まれつき顔面に疾患を持つ女性看護師、妻と娘を亡くしたガソリンスタンド従業員。底辺を彷徨い続けている彼らが、それぞれの「罪」と向き合う物語。
■きっと読みたくなるレビュー
★5 なんちゅう本を読ませるんや… 読めば読むほど辛くなってくるんだけど、陽だまりの優しさに包まれるような感覚にもなってくる。感情の揺れ幅に酔ってしまうような、そんな小説でした。
アメリカのラストベルト(赤さび地帯)かつては栄えた工業地帯であったものの、今や斜陽の一途をたどるスモールタウン。そこに住む悩み多き若者たちが、図らずも犯罪に手を染めてしまうというストーリーです。
本作では主に三人の視点人物で物語が進行する。
・ネイサン
工場で働きながらボランティア消防員。結婚しているが子供ができない悩みをもつ。ある日、火災現場で大量の札束が入ったカバンを見つける。
・キャリー
生まれつき口腔顔面裂という疾患を持つ看護師、容姿のためにこれまで男性との縁はほとんどない。仕事場で末期がん患者の若い女性と出会い…
・アンディ
薬物中毒と戦いながらガソリンスタンドで働く青年。愛する妻と娘を亡くしてしまい…
それぞれ悩みがあって、報われない人生を歩んでるんだけど、みんな一生懸命生きてるんです。そんな辛い日常の隙間に、ほんの少しだけ希望が繋がる禁断の道筋が提示される。
誰しも好き好んで犯罪なんて犯したくないんだよね… 日本でも特殊詐欺の犯罪に手を染めてしまう若者がいるけど、手を伸ばしてくれる人が近くにいたら、もっと選択肢があればと思ってしまいますね。はー、切ない。
そして本作の一番の読みどころは人間の繋がりなんです。
まず最も腹立たしいのはリーリーですよ。こ、こいつだけは… 息子に年ごろになってきたのでよく言い含めるんです、人生台無しにする悪い女には気を付けろと。
ネイサンの奥さん、ポーラも素敵だったなぁ~。こんなにも包容力のある女性と結婚出来る男は幸せですよ。とは言え、ネイサンの気持ちも痛いほどわかる。
死の水際を彷徨うアンディもめっちゃ力強いんです、終盤なんてカッコイイまである。薬物がなければなー…と思わずにはいられないすね。
そしてなんといっても17歳の末期がん少女のガブリエラですよ。彼女のささやかな希望にキャリーの取った行動に号泣。キャリーも自身も新しい自分に生まれ変わるんすよね。はー、この感動、ぜひ読んで欲しい。
アメリカの小説ですが、まるで日本の小説みたいに「人の絆」を豊潤に描いている傑作です。お時間を取って是非どうぞ。
■ぜっさん推しポイント
大人になるにしたがって欲望が出てきてしまい、行きつく先は"罪"に手を染めてしまう。
私も人の親になって結構の年月が経ちますが、子どもに教えられるということが良くあります。本作のアンディパートのラスト、娘から父に向けた素敵なメッセージが手向けられています。引用はしませんので、ぜひ読んでみて下さい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026年の32冊目は、ケン・ジャヴォロウスキーの「死体はどうなる」です。ペンシルヴェニアの寂れた田舎町ロックスバーグを舞台とした、「罪に願いを」に続くラストベルト3部作の2作目となります。
最愛の息子が埋めた死体の処置に苦慮するシングルマザーのカーラ、亡き母との約束を守るため深夜の墓地に忍び込み母の棺に人形を入れようとする自閉症の青年リード、シンガーになる夢を叶えるため恋人の死体からある物を見つけだそうとするリズ、この3人の死体をめぐる物語です。
愛する家族を守るため、自分の夢を摑むため、3人は罪を犯し、嘘を重ねます。絶体絶命のピンチを何度も切り抜け、時に3人が交錯しながらエンディングに向かって行きます。日本人は、絶対大好きなはずです。もっと話題になって、売れることを望みます。
保奈美さんに読んで欲しい本です。
☆4.8 -
Posted by ブクログ
ネタバレ寂れた田舎町・ロックスバーグを舞台に、3人の男女が抱える「罪」と「切実な願い」が交差する群像劇。
三者三様の人生・罪があり、それぞれの選択があり、それらがどこに帰着するのか。ハッピーエンドという分かりやすい結末を迎えるのではなく、痛々しいぐらい現実的に描かれている作品だと思った。
▪️惜しい点
最後の方が、少し駆け足というか、急にスピードが速まった様に感じでしまった。
また、キャリーの章をもう少し充実させて欲しかったな。。
あと、原題の『Small Town Sins』が持つ寂れた町の佇まいや雰囲気を考えると、邦題はドラマチックに寄せすぎでは??と感じました。 -
Posted by ブクログ
2025.12.27
《罪に願いを ケン・シャボロウスキー》
ペンシルベニアの田舎町を舞台に三人が語るそれぞれの罪...
火災現場で人助けはしたものの、現場にあった大金を持ち逃げし、将来に夢を抱く〈ネイサン〉
末期ガンの少女の夢を適えるために、病院から少女を連れ出し海を目指す看護師の〈キャリー〉
愛する妻娘のために薬物を断ち切り、懸命に働いていたある日、妻娘を失ってしまった〈アンディ〉
それぞれに辛く悲しい人生を送り、やっと幸せをつかんだかと思えば無惨にも消えてしまう…
報われない日々…
そして彼らはさまざまな形で事件の渦中へ追いやられていく
その過程に胸が苦しくなるが、ウィットに富んだ軽快な会話に救われる!
罪とは無縁で生きてきた男が重ねていく罪
誰かのために人生をかけた罪
罪を犯し更生するも絶対に許されないことのための最後の罪
現代社会の問題を三者三様に投げかけてくる…
三人の群像劇をみているようだったが、三人に繋がるものがあるとさらにおもしろかったように思う
読み終えてタイトルが胸に染みた
-
Posted by ブクログ
伝説のミステリ小説です。作者はH.H.ホームズ。H.H. ホームズとは19世紀アメリカで27人を殺した連続殺人鬼の名前だ。これはあくまでペンネームで、その正体は評論家として有名なアンソニー・バウチャーである。おふざけとはいえ現代なら犯罪者の名前を使ったら炎上しそうですよね。
さて、話はこんなです。
カルト教団「光の子ら」を糾弾しようと準備を進めていた研究者のウルフ・ハリガンは助手として雇われた作家志望の青年マットと共に集会に参加する。そこで黄衣を着た教祖は呪を唱えてウルフの死を予言する。翌日ウルフは書斎で顔面を撃たれて殺された。現場の窓から黄衣を着た人物が目撃され、書斎は密室だった。
この密室殺人の謎に取り組むマットと、マーシャル警部は、ディクスン・カーが「三つの棺」で書いた【密室講義】を持ち出して推理、検討を進めるが、どの分類にも当てはまらない!この本はカーへの挑戦状としてカーに捧げられた本であるあたりも楽しみのひとつ。
そしてマットとウルフの娘コンチャの甘い恋愛がまた素敵。コンチャはマットの旧友の婚約者であり家柄も全く違うので、マットはよそよそしい態度で控えめに接する。一方で積極的に気持ちを伝える可愛いコンチャがいじらしい。
さらに途中まで誰が探偵役なのか忘れていたのですが、静かに祈る尼僧探偵アーシュラの鮮やかな推理はお見事でした。80年以上前の密室トリックですからそれ自体が古いのは当たり前ですが、小説として面白いです。アンソニー・バウチャーさすがですね。 -
Posted by ブクログ
原題は『small town sins』、小さな町の罪だが、この罪はcrimeではない。日本人には分かりにくいが、宗教的な罪である。
この小説には三人の主人公による群像劇となっていて、相互にあまり関係してはいない。
火事場から大金を盗んだ消防隊員のネイサンは、誠実で真っ当な考えの妻の声に耳を傾けることなく、二人でそのお金で人生やり直すことを説得できると思っている。そしてそのお金を守るために殺人まで計画してしまう。
そして末期ガン患者の少女の夢を叶えようとする看護師のキャリー。本人の希望とはいえ、保護者の許可がないので誘拐になってしまうのだが、少女の父親が宗教に傾倒していて科学的治療を受けさせない、神に召されたら仕方ないと考える人物。キャリーは少女を連れ出し、いろんな事件に巻き込まれながらどんどん仲良くなっていく。キャリーだけは応援したい気持ちで読んだ。
妻子を亡くしたアンディは盗んだものの中に、子どもが性犯罪に遭っている写真などを見つけ、その加害者を激しく憎悪し、地獄へ道連れにすることを決意する。
薬物、暴力、強盗、アメリカでは珍しくないのがひしひしと感じられ、後味が悪かった。その中で、作者の教会や神に対して懐疑的であることが見てとれる。アメリカでリアルにありそうな犯罪が多いため10代の人には勧めない。