【感想・ネタバレ】九人の偽聖者の密室のレビュー

あらすじ

伝説の「さまよえるユダヤ人」を名乗るアハスヴェルが主宰する教団「光の子ら」を糾弾すべく準備を進めていたカルト宗教の研究者ウルフ・ハリガンは、ひょんなことから知り合った作家志望の青年マット・ダンカンの協力を得、二人は「光の寺院」で開かれる教団の集会に参加する。その集会の場で、全身に黄色い僧衣をまとった教祖アハスヴェルは、信者たちとともに「ナイン・タイムズ・ナイン」の呪いを唱え、ウルフの死を予言する。
その翌日、ハリガン家の家族とクロッケー場でゲームに興じていたマットがふとウルフのいる書斎を見ると、ウルフの机に身をかがめている黄色い僧衣を着た人物の姿が目に入る。窓は施錠されており、邸内の扉から書斎に入ろうとするものの、やはり鍵がかかっていて中に入れない。再び外に出て窓から中をのぞくと、ウルフは顔面を撃たれて床に倒れており、存在したはずの黄色い衣の人物は消え失せていた……。
この不可解な密室殺人の謎に直面したダンカンは、探偵小説嫌いのマーシャル警部補と共に「密室派の巨匠」ジョン・ディクスン・カーの《密室講義》を参照しながら推理・検討をするのだが、なんと《密室講義》のどの分類にも当て嵌まらないことが判明する。困惑する捜査陣を前に、難事件の経緯を知った尼僧アーシュラは、真相究明のために静かに祈りを捧げるのだった……。果たして異色の尼僧探偵の祈りが通じ、神をも畏れぬ密室犯罪の真相が看破されるのだろうか!?
ジョン・ディクスン・カーに捧げられ、エドワード・D・ホックが主催する歴代密室ミステリ・ベストテンにも選出された、都市伝説的密室ミステリが新訳によって半世紀の時を経てここに甦る!

装訂・シリーズロゴデザイン=坂野公一(welle design)

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Posted by ブクログ

伝説のミステリ小説です。作者はH.H.ホームズ。H.H.  ホームズとは19世紀アメリカで27人を殺した連続殺人鬼の名前だ。これはあくまでペンネームで、その正体は評論家として有名なアンソニー・バウチャーである。おふざけとはいえ現代なら犯罪者の名前を使ったら炎上しそうですよね。

さて、話はこんなです

カルト教団「光の子ら」を糾弾しようと準備を進めていた研究者のウルフ・ハリガンは助手として雇われた作家志望の青年マットと共に集会に参加する。そこで黄衣を着た教祖は呪を唱えてウルフの死を予言する。翌日ウルフは書斎で顔面を撃たれて殺された。現場の窓から黄衣を着た人物が目撃され、書斎は密室だった。

この密室殺人の謎に取り組むマットと、マーシャル警部は、ディクスン・カーが「三つの棺」で書いた【密室講義】を持ち出して推理、検討を進めるが、どの分類にも当てはまらない!この本はカーへの挑戦状としてカーに捧げられた本であるあたりも楽しみのひとつ。

そしてマットとウルフの娘コンチャの甘い恋愛がまた素敵。コンチャはマットの旧友の婚約者であり家柄も全く違うので、マットはよそよそしい態度で控えめに接する。一方で積極的に気持ちを伝える可愛いコンチャがいじらしい。

さらに途中まで誰が探偵役なのか忘れていたのですが、静かに祈る尼僧探偵アーシュラの鮮やかな推理はお見事でした。80年以上前の密室トリックですからそれ自体が古いのは当たり前ですが、小説として面白いです。アンソニー・バウチャーさすがですね。

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

真相自体はそれほど驚くものではないが、ミスディレクションが上手いのでなかなか気づけない。探偵役のシスターアーシェラが魅力的。この作家のものをもっと読みたい。

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2022年10月10日

Posted by ブクログ

<奇想天外の本棚>第一回配本。
カルト教団を弾劾しようとしていた研究者が教団の集会で死を予言され、密室で殺された。目撃者は黄色い僧衣をまとった教祖らしき姿を目撃するが、その姿は消え失せてしまう…
トリックはそれほど驚くものではないが、登場人物がディクスン・カーの《密室講義》を参照しながら推理するところが面白い。不可能犯罪やモヤモヤするロマンス要素などもカーを意識しているのか。尼僧探偵は地味ながら最後になかなかすごい活躍。全体的にクラシックな雰囲気がよく、楽しめた。

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2022年12月02日

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