【感想・ネタバレ】罪に願いをのレビュー

あらすじ

火災現場で見つけた大金を自宅に隠したボランティア消防隊員ネイサン。末期がんの少女の夢を叶えるため病院の外へと連れ出す看護師キャリー。妻と幼い娘を同時に亡くしたアンディが狙いを定めた地獄への道連れ・・・・・・。横領、誘拐、殺人。ペンシルヴェニアの寂れた小さな町を舞台に、男女三人が犯したそれぞれの「罪」と運命が交差する。悲痛で愚かで温かい、極上の犯罪小説。本作は著者のデビュー作にして、エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀新人賞候補作となった。

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Posted by ブクログ

★5 アメリカの田舎町、スモールタウンで繰り広げられる犯罪小説ならぬ "罪の小説" #罪に願いを

■あらすじ
アメリカはペンシルベニア州、ラストベルト地帯にある錆びついた街。

工場で働きながらボランティア消防員をする男、生まれつき顔面に疾患を持つ女性看護師、妻と娘を亡くしたガソリンスタンド従業員。底辺を彷徨い続けている彼らが、それぞれの「罪」と向き合う物語。

■きっと読みたくなるレビュー
★5 なんちゅう本を読ませるんや… 読めば読むほど辛くなってくるんだけど、陽だまりの優しさに包まれるような感覚にもなってくる。感情の揺れ幅に酔ってしまうような、そんな小説でした。

アメリカのラストベルト(赤さび地帯)かつては栄えた工業地帯であったものの、今や斜陽の一途をたどるスモールタウン。そこに住む悩み多き若者たちが、図らずも犯罪に手を染めてしまうというストーリーです。

本作では主に三人の視点人物で物語が進行する。

・ネイサン
工場で働きながらボランティア消防員。結婚しているが子供ができない悩みをもつ。ある日、火災現場で大量の札束が入ったカバンを見つける。

・キャリー
生まれつき口腔顔面裂という疾患を持つ看護師、容姿のためにこれまで男性との縁はほとんどない。仕事場で末期がん患者の若い女性と出会い…

・アンディ
薬物中毒と戦いながらガソリンスタンドで働く青年。愛する妻と娘を亡くしてしまい…

それぞれ悩みがあって、報われない人生を歩んでるんだけど、みんな一生懸命生きてるんです。そんな辛い日常の隙間に、ほんの少しだけ希望が繋がる禁断の道筋が提示される。

誰しも好き好んで犯罪なんて犯したくないんだよね… 日本でも特殊詐欺の犯罪に手を染めてしまう若者がいるけど、手を伸ばしてくれる人が近くにいたら、もっと選択肢があればと思ってしまいますね。はー、切ない。

そして本作の一番の読みどころは人間の繋がりなんです。

まず最も腹立たしいのはリーリーですよ。こ、こいつだけは… 息子に年ごろになってきたのでよく言い含めるんです、人生台無しにする悪い女には気を付けろと。

ネイサンの奥さん、ポーラも素敵だったなぁ~。こんなにも包容力のある女性と結婚出来る男は幸せですよ。とは言え、ネイサンの気持ちも痛いほどわかる。

死の水際を彷徨うアンディもめっちゃ力強いんです、終盤なんてカッコイイまである。薬物がなければなー…と思わずにはいられないすね。

そしてなんといっても17歳の末期がん少女のガブリエラですよ。彼女のささやかな希望にキャリーの取った行動に号泣。キャリーも自身も新しい自分に生まれ変わるんすよね。はー、この感動、ぜひ読んで欲しい。

アメリカの小説ですが、まるで日本の小説みたいに「人の絆」を豊潤に描いている傑作です。お時間を取って是非どうぞ。

■ぜっさん推しポイント
大人になるにしたがって欲望が出てきてしまい、行きつく先は"罪"に手を染めてしまう。

私も人の親になって結構の年月が経ちますが、子どもに教えられるということが良くあります。本作のアンディパートのラスト、娘から父に向けた素敵なメッセージが手向けられています。引用はしませんので、ぜひ読んでみて下さい。

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2025年07月24日

Posted by ブクログ

アメリカの架空の田舎町の、3人を主人公にした群像劇。
地元出身で工場勤務しながらボランティアで消防団員のネイサンは、近くの火事で瀕死の人を助けるが、同時に大量の札束を発見し、密かに持ち去る。看護師のキャリーは、医学を信じない新興宗教牧師の父をもつ余命僅かの少女と仲良く成り、彼女の希望を叶え様と病院から連れ出す。麻薬常用者のアンディは妻の妊娠を期に麻薬を止め、ダウン症の娘を心の糧として過ごしていた。
直接は繋がりのない3人のそれぞれの物語が哀しい。特に私はキャリーを応援せずにはいられなかった。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

原題は『small town sins』、小さな町の罪だが、この罪はcrimeではない。日本人には分かりにくいが、宗教的な罪である。

この小説には三人の主人公による群像劇となっていて、相互にあまり関係してはいない。
火事場から大金を盗んだ消防隊員のネイサンは、誠実で真っ当な考えの妻の声に耳を傾けることなく、二人でそのお金で人生やり直すことを説得できると思っている。そしてそのお金を守るために殺人まで計画してしまう。

そして末期ガン患者の少女の夢を叶えようとする看護師のキャリー。本人の希望とはいえ、保護者の許可がないので誘拐になってしまうのだが、少女の父親が宗教に傾倒していて科学的治療を受けさせない、神に召されたら仕方ないと考える人物。キャリーは少女を連れ出し、いろんな事件に巻き込まれながらどんどん仲良くなっていく。キャリーだけは応援したい気持ちで読んだ。

妻子を亡くしたアンディは盗んだものの中に、子どもが性犯罪に遭っている写真などを見つけ、その加害者を激しく憎悪し、地獄へ道連れにすることを決意する。

薬物、暴力、強盗、アメリカでは珍しくないのがひしひしと感じられ、後味が悪かった。その中で、作者の教会や神に対して懐疑的であることが見てとれる。アメリカでリアルにありそうな犯罪が多いため10代の人には勧めない。

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2025年07月21日

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