本田靖春のレビュー一覧

  • 誘拐

    Posted by ブクログ

     1963年に東京で起きた誘拐事件「吉展ちゃん誘拐事件」を描いている。この事件は、警察の失態により身代金を奪われ、吉展ちゃんも戻らず2年が経過した。迷宮入りかと思われたが、捜査員の粘り強い捜査で犯人を逮捕することができた。

     本の帯にはこうある。「ノンフィクション史に刻まれた圧倒的傑作」と。まさにその通りだと思った。綿密な取材により、事件の全貌を描き出している。特に犯人の生い立ちから事件を起こすまで、そして事件を起こしてからの行動を詳しく描いている。

     犯人は死刑判決を受けて執行されたが、ことさら犯人を極悪人と決めつることなく、犯行の背景を描き出しているのは好感がもてる。 

    0
    2025年02月12日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    一般に「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件」と呼ばれる、1963(昭和38)年に起こった営利誘拐事件を題材にしたノンフィクション小説。

    事件の経緯は以下の通りである。
    19630331: 東京の下町入谷で4歳の吉展ちゃん誘拐される
    19630407: 犯人から被害者宅へ7回目の電話。身代金の受渡指示→犯人は逮捕されないまま、身代金だけ奪われる
    その後、犯人の小原保は捜査線上に浮かび、警察は2回に渡り小原保を別件逮捕し取り調べるが、いずれも証拠不十分で逮捕に至らず。
    19650513: 背水の陣での警察による3回目の取り調べ。事件から2年経過している
    19650704: 犯人自白、逮捕。翌日に

    0
    2023年09月11日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    昭和に起こった誘拐事件のノンフィクション。
    有名な事件だが、一般的に紹介されにくい警察の度重なる不手際や犯人の生い立ちがくわしく書かれている。

    と書くと、あたかも犯人に同情的で警察に批判的なように聞こえるかもしれないが、そうではない。たしかに犯人の生い立ちは凄絶で、警察はずっと失敗している。ほとんど人災といってもいいレベル(結果からみてみれば、誘拐直後に被害者は殺されているので最善を尽くしたとて助かりはしなかったが)。

    しかし、犯人への同情の念を覚えそうになると、すっとはしごをはずす。ミスばかりの警察に対しても、怒りを覚えそうになるところで、読み手を見透かしたかのように抑制させる、相互にバ

    0
    2023年07月22日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    昭和38年に発生した誘拐事件、吉展ちゃん事件を描いたノンフィクション。加害者の暗い過去など時代背景、高度成長期の影の部分がリアルな力作。

    東京オリンピックの直前の台東区入谷で発生した4歳男児の誘拐事件。警察の不手際により身代金50万円は奪われ事件は迷宮入りの様相。だが伝説の刑事平塚八兵衛らの執念の捜査で事件は解決。男児は遺体で発見され、犯人は死刑となる。

    犯人の小原保の生い立ち、親族の悲しい宿命に多くの頁が費やされているところが独特。

    インターネットより前の時代、行方不明となった男児を心配する両親に、多くのイタズラ電話が来るところが現代と変わらず切なくなる。

    警察の初動対応の不手際と隠

    0
    2020年05月16日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    "私がまだ生まれる前、昭和38年に起こった誘拐事件。その真相に迫るノンフィクションの傑作。最後のページまで緊張感が続き、被害者、加害者、関係者、この事件に関わる全ての登場人物との距離感も絶妙。
    著者の綿密な取材、苦労とともに、書き手の文書力がなければ本作品は成り立たない。

    吉展さんのご冥福を祈り、本書をたたむ。"

    0
    2018年11月25日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    事件ノンフィクションの古典。

    時代と言ってしまうとそれまでだが、
    戦後に起きたとても悲しい物語。(108)

    [more]
    (目次)

    発端
    展開
    捜査
    アリバイ
    自供
    遺書

    0
    2018年10月12日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    1963年に起きた「事件」である
    その次の年が「東京オリムピック」、
    高度成長期に差しかかかり始めた時代の
    「明」と「暗」を象徴している事柄である

    あれから半世紀以上経とうとしているが
    果たして、庶民の置かれている状況は
    どうなっているだろう…
    あの時代には存在しなかった
    携帯電話が普及し、インターネットが普及し
    果たして、庶民たちの生活は豊かになった
    といえるだろうか…

    あと数年後に開催されるらしい
    東京でのオリムピック関係の
    浮かれた報道を
    目にするたびに、
    耳にするたびに
    この一冊を思い出してしまう

    今、本田靖春さんが
    もしご存命だとしたら
    この優れたジャーナリストは
    何を見

    0
    2018年09月01日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    素晴らしいノンフィクションの傑作。吉展ちゃん誘拐事件。東北出身の犯人の哀しい人生。容疑者として追い詰めながらも捕まえられない警察。その失態も不可解。警察、被害者の両親、特に犯人の人生を浮き彫りにした構成は読み応えがある。

    0
    2023年01月16日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    重厚なノンフィクション。とても読み応えがあった。どうも文章が古臭えなと思ったら46年も前に書かれた本だった。多角的な視点で事件を捉えてて、回りくどいなと思う事もあったけどそのおかげで色々時間がくっきり見えた。うまい。

    0
    2023年10月26日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    ノンフィクションを初めてしっかり読んだ気がする。今まであまり触れてこなかったジャンル。

    誰か一点の視点では見えてこない事実。
    最初は家族の視点の次が、お前誰やねん、ってなってしばらく頭が追いつかなかったのだが、犯人か、この人、となってからは切り替えられるようになった。
    ページのボリューム的には犯人に寄りそってるような(同情をかうような)書き方だな、と途中までは思ったのだが、最後警察のターンで一気に様相が変わってゆく。

    最後の短歌と地の文の交互のたたみかけがよかった

    2023.10.7
    168

    0
    2023年10月08日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    吉展ちゃん事件については、元東京新聞記者により比較的最近に出版された「誘拐捜査」を先に読んでいた。この作品のほうが同テーマを扱ったものとしては先行かつ有名。両作品のアウトラインは当たり前だが似通っている。こちらの方が、犯人である小原保に関する叙述が、生い立ちや自白後の顛末など多い印象。逆に捜査陣の内幕は、当時の担当記者が書いた「誘拐捜査」により詳しい。

    東京で自分のだらしなさ故に借金を作ってしまった小原。決してベラボウな金額ではないが首が回らなくなる。金策のため郷里へ帰るが、会わせる顔もなくて4日間をこそこそと野宿して過ごす。「悪い血」が淀む故郷には頼れる人もないことが改めて身に沁みたろう。

    0
    2018年11月05日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    なんとなく事件名は知っていたものの詳細は全く知らない状態で読み始めた本作。読みやすく読み応えのあるノンフィクション。

    0
    2018年08月30日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    まだ営利誘拐に慣れていない時代。ノウハウ持たぬ捜査陣のあたふたぶりがよく分かる。終盤、昭和の名刑事と犯人の直接対決場面が見どころ。

    0
    2020年06月20日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    被害者、加害者、捜査の裏側等、色んな角度からの状況が書かれているのが面白かった。
    戦後直後の捜査状況等が分かるのも面白い。

    0
    2017年02月16日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

     かつて、吉展ちゃん誘拐殺人事件という事件があったことを知っている。
     しかしながら、それがどのような事件かについてはほとんどを知らない。

     この本を読んで、どんな感想を言えばいいのか、適当な言葉が思いつかない。
     ただ、読んだことのない人には読んで欲しいと言いたい。

    0
    2020年09月19日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    有名なノンフィクションなので読んでみた。冒頭、被害者や遺族だけでなく事件当日に公園にいた人々のそれぞれの背景まで細かく描写されていて驚いた。まるで小説のような描写に著者の文章の上手さと綿密な取材力を感じた。

    犯罪ノンフィクションはよく読むけど、本作の特徴は被害者家族と犯人の視点を同じ時間軸で描いていることだと思う(だから小説ぽい?)。被害者側の吉展ちゃんが無事で見つかってほしいという視点と、捕まるんじゃないかとヒヤヒヤする犯人側の視点を両方味わえた。事件について敢えて事前情報なしで読んだが、吉展ちゃんの安否については最後まで書かれていないのも上手いと思った。

    戦後の街や人々の雰囲気なども活

    0
    2025年08月09日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    自身滅多に読まないノンフィクションでした。
    時代背景や、登場人物ひとりひとりの心情描写など細かく描かれているので、感情移入がしやすかった。
    後半の犯人の描写は時代問わず考えさせられるものがあると思うが、やはりならぬものはならぬものです。

    0
    2025年05月06日
  • 複眼で見よ

    Posted by ブクログ

    今もこういうジャーナリストはいるのだろうか?
    権力に阿り、阿諛追従することで口を糊する「自称」ジャーナリストが目立つ昨今、こういう気骨のあるジャーナリストこそ現れ出てほしいのである。

    0
    2024年05月30日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    感想
    光が強ければ影も濃くなる。ありふれた言葉だが正鵠を射ている。豊かになれば幸せになる。ついていけない人を振り払って。今はどうか。

    0
    2023年03月03日
  • 誘拐

    Posted by ブクログ

    あまりノンフィクションを進んで読んできていないのですが、本書と同事件をベースとした『罪の轍』(奥田英朗)を読みまして本書に興味を持ちました。

    読み始める前にWikipediaで「吉展ちゃん誘拐事件」についてざっと目を通したうえで読みました。

    ノンフィクションというともう少し進めにくいかと思っていましたが、作者が記者であるためか最初から最後まで緊張感が途切れることのない胸が苦しくなるノンフィクションでした。

    0
    2022年12月12日