稲葉陽二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
目的:
人とのつながりが、なぜ重要か、社会科学的に理解するため。
感想:
ソーシャル・キャピタルの入門として良書。
わかりやすく、コンテクスト、先行研究がまとめられている。ソーシャル・キャピタルとは、一般的に人々に協調的行動を促す「信頼・規範・ネットワーク」だと定義される。
特に、社会関係資本が不平等によって毀損されるという議論が面白い。筆者は、社会関係資本を豊かにすることが社会に不可欠であると論じており、そのためには不平等の改善が急務であるとまとめている。
また、社会関係資本のダークサイドとして、悪いネットワークや規範の強制の議論が見られる。この部分は、人間的に成長することが不可欠だと -
Posted by ブクログ
本書を読んだ感想として、本書ではソーシャルキャピタル、いわゆる社会関係資本についての概要や構成要素、私たちに及ぼす外部経済、社会関係資本の崩壊の原因や暗黒面、そして、豊かな社会関係資本を築くための方法について紹介されている。
私は社会関係資本について本書を読むまでは知らなかったが、言われてみると当たり前のことであると感じた。社会関係資本は私もすでに持っている物であり、その重要性についても「コネ」や「人脈」という言葉で一部であるが知っていた。また、私は教員を目指していることもあり、教育関連の書物においても、児童生徒、同僚、保護者、地域との豊かな人間関係を築くためには「信頼」が大切であるとしばしば -
Posted by ブクログ
ソーシャル・キャピタルを理解するために読んだ。
初めて聞く概念だし、その「蓄積」(あるコミュニティでの)というのは、
目に見えないものだけに定義付けを行うのを困難にも感じていたが、
要するに、人と人との関係において、誰しもが感じているつながりや
それを誘発させるもののことであり、その際の暗黙のルールのことを
言うようだ。
著者はそのわかりやすい例として、「星の王子さま」における王子さま
とキツネとの出会いの場面を引用していて、市場に内部化できない
(内部化すると人の心を踏みにじる)「心の外部性」という言い方で
わかりやすく解説していた。
ほかにもソーシャルキャピタルが生み出す数々の効用や -
Posted by ブクログ
最近の新書は親切設計なものが多い中で、久しぶりに読みにくい新書だった(笑)。
ソーシャル・キャピトルは、本書では「社会関係資本」と訳されている。
それは、「人々の間の協調的行動を促す『信頼』『互恵性の規範』『ネットワーク(絆)』を指す」とされる。
欧米の研究を紹介しつつ、社会関係資本が経済活動、地域社会の安定、健康、教育水準から、政府の効率にまで影響を与えると説く。
本書では一応、その「ダークサイド」(しがらみや村八分を生むなど)も指摘しているが、やはりその正の効果を述べたところが圧倒的に多い。
社会関係資本の所有には男女差があり(中高年の男性は乏しくなる傾向があり)、経済格差は社会関係資本 -
Posted by ブクログ
【読書その23】3月11日の東日本大震災の影響に以降、より注目された絆や他者への信頼、思いやり。このような絆や互酬性の規範をソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という。そうしたソーシャルキャピタルが教育や健康等において、どのように大きな役割を果たしているのか、その可能性を論じた本。
ここで注目されているのが、ソーシャル・キャピタルにとる健康と福祉の向上。アメリカのペンシルベニア州の田舎町であるロゼトや、長野県の須坂市の事例の紹介。そこでは、コミュニティの結束が介護などの社会的支援の提供を容易にし、健康上の規範の強化につながるという。
確かに、自分自身、上越での生活保護のケースワーカー時代に見 -
Posted by ブクログ
「人にとって一番つらいことは、社会的孤立とそれに伴う孤独ではないだろうか」・・・人生の最後まで孤立感を持たずに生きられる社会の構築を課題とする問題意識が著者にはある。
社会関係資本・・・と訳されるソーシャルキャピタルについて、上記の問題意識のもと概要が説明されている、まさに入門の書。
信頼・規範・ネットワーク、互酬性と信頼性の規範、という要素を中心に、そもそも社会関係資本という漠然とした、この目に見えないものについて詳しく定義付けというか、先行事例を踏まえて内容を説明している。
もちろん、戦後こうした社会関係資本は「しがらみ」として、そこから脱却しようという傾向が社会的に顕著であ -
Posted by ブクログ
ソーシャルキャピタルは、簡単に言うと、人と人、社会との相互信頼や絆としてのネットワークであると解釈した。それを強めていくことが人との人との関係性、仕事の中での生産性、教育、政治経済、といった自分を取り巻く大きな範囲までその影響をうけることから、その重要性について理解できた。ソーシャルキャピタルが強く形成されていればそれは好転するが、弱い、または、ない状況には社会問題や経済に悪い影響を及ぼす。
また、時代の変化により、ソーシャルキャピタルが希薄化し、格差社会によりその溝がさらに深まっていく悪循環の恐れがある。資本主義経済において、今後の世の中で格差社会をなくすことはできないと考える。格差を格差と -
Posted by ブクログ
書店で本を買うときは、大体池袋で、東武の旭屋書店かサンシャインの新栄堂書店。店舗面積としては圧倒的に旭屋書店に分があるのだが、読みたくなる書をよく発見するのは新栄堂書店。先日「つながり」をテーマにした書をコーナーにしていて、思わず本書を含めて数冊買い漁った。
ソーシャル・キャピタルは大学4年の時に卒論を書いているときに気になった言葉。当時面白いテーマだと思ったが、それ以来あまり目にしなかった。懐かしいなあと思いながら読んだ。
「もう少し社会関係資本について知りたい読者のためのリーディングリスト」を見ると、2000年以降の著書がほとんど。最近になってようやく研究され始めたということなのだろう。
-
Posted by ブクログ
私たちの「あいだ」にたしかにあり、目に見えないが大切なもの。
私たちの消費行動に大きく影響するばかりではなく、これが損なわれると、私たちの体や心の健康も失われたりする。
すでにそこ(人びとのあいだに)にあるもの。
それをどのような仕方でとらえて何と名づけるか、学問によって取り組みかたは様々だ。
しかし現代社会の問題の多くは、ここで社会関係資本と規定されているものが損なわれていることに少なくとも原因のひとつがあるのは確かだろう。
「コミュニティが存在しなければ社会関係資本は成立しない」
つまり、ここでもコミュニティの恢復、いや創出が求められている。 -
Posted by ブクログ
格差を生み出すのは、経済力や容姿だけではない。人間関係スキルも致命的に影響するはず、と昔からずっと考えてきた。で、「社会関係資本」という用語を知ったときは、そうそう、それが言いたかった!と妙にスッキリしたものでした。
この本によれば、ソーシャルキャピタルを構成する3つの要素は、「信頼」「思いやり(互酬性)」「きずな」だとのこと。どれもお金では買えない。高齢シングルが激増するこれからの時代、その3つの要素を、ある程度は公共的なサービスとして提供していくほうがいいのかねえ、とは思う。
でも、ソーシャルキャピタルを維持するには、それなりの苦労もあるわけで・・。苦労せずサービスだけ得ようなんて、そんな -
Posted by ブクログ
ソーシャルキャピタルとはなにか。社会関係資本。インフラだとずっと思っていましたが、そうではなく信頼・規範・ネットワークの三つの要素で成り立っていると著者はいう。また社会関係資本のなかにも2種類存在し、閉じたネットワーク(地縁的・大学など)のものと開いたネットワーク(橋渡し的・NPOなど)があると説明。閉じたネットワークは規範が通りやすいが新たな情報は入って来ない。開いたネットワークはその逆である。
個人がどんなに能力があっても社会関係資本がなければ発揮されない。
社会関係資本がどう社会に影響さるのかということも書かれており、経済活動、地域社会の安定、福祉や健康、教育、政府の効率のそれぞれの -
Posted by ブクログ
職場の本屋の平積みから購入。
ソーシャルキャピタルは、社会関係資本と最近訳しているようで、まあ、人と人とのつながり、ネットワークだと思って間違いない。
社会関係資本が豊かな国、日本は基本的にそうだと思うが、そういう国は住みやすい、効率的、社会発展が望めると思う。
例えば、自動販売機なんかも、地域の人間関係、地域の目があって、だれもバンダリングに走らないから、営業できると、東京のど真ん中でも、のどが渇いたら、清涼飲料水が飲める。
この本は、それがいくつかの観点から危機になっているという。
①経済格差(所得格差、資産格差)
②高学歴
③親の七光り
実は、以上