ネイト・シルバーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
500頁超の大作ながら、何とかGW中に読み終えた。名著「マネー・ボール」に登場する野球データ分析アルゴリズムの開発者が、シグナルとノイズを見分けながら如何にしてより精度の高い予測を行うか、についての方法論と考え方を解くもの。
不確実性が高い世の中を生き抜く上でとても知的で楽しい内容だった。原著2012年、日本語版2013年発行、と年数は経っているものの、不朽の名作と言えるのではないだろうか。
本書全編を通じて、「ベイズの定理」に対する信頼が非常に高く、あらゆる可能性を検討した上で、新たな事象が起きるたびに見積情報を絶えず更新していくことで、真実に近付くことができる、という点が主張の骨子。
ベイズの定理が機能するには、初期見積(事前確率)が0%や100%であってはならず、その場合には如何に重要な新事実に行き当たっても見積の修正がなされ得ない、という点が示唆に富む。
以下は13章の事例(9.11の航空機テロ)を8章、12章の計算例に照らしてみたもの。
事前確率が低くとも可能性として検討さえしていれば、新事実に出会うに伴って確率見積が適切に修正され得ることが分かる。要は、(事後評論ではなく、その時に実際に)9.11 は止めることが出来たかもしれない、ということだ。あるいは、その後、見事に次の大規模テロを止めることが出来ている、ということかもしれない。
〈ベイズの定理の計算例〉
事前確率
航空機による自爆テロの初期的見積 x 10%
新たな事象が起こる ー 飛行訓練時間50時間の訓練生がB747のフライトシミュレータ訓練を希望する(2001.8.16. にこの訓練生は逮捕された)
航空機による自爆テロが計画されていた場合に、飛行訓練時間が極端に短い訓練生が大型旅客機のシミュレータ訓練を希望する確率 y 70%
航空機による自爆テロが計画されていない場合に、飛行訓練時間が極端に短い訓練生が大型旅客機のシミュレータ訓練を希望する確率 z 5%
事後確率
飛行訓練時間が極端に短い訓練生が大型旅客機のシミュレータ訓練を希望した場合に、航空機による自爆テロが計画されている確率の修正見積
xy / (xy + z(1-x)) = 61%
事前確率10% は、新事実の認知に伴い
事後確率61% に更新された。
航空機テロは十分に起こり得る。
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Posted by ブクログ
邦訳されたすぐ後に買っていたのだが1/3くらい読んだところで放りだしていた。分厚いながらも別に読みにくい本ではないのに。このたび、家ですごす連休のお供として引っぱり出したのだが、これがまたコロナの時代にピッタリの内容であった。いま世界中が、きわめて不確実な状況に置かれながら少しずつ明らかになるウイルス/疾病の情報をもとに今後の見通しを更新していく、まさにベイズ的な過程のただなかにいる。私たちが「知っていること」と「知っていると思っていること」の違いを識別しなければならないと教えてくれる本だ。
ネイト・シルバーの文章には論理的な明晰さがあって読みやすい。少し斜に構えたユーモアとあわせて、なんとなく余白がない感じがアメリカ的な薄っぺらさとも言えるのかもしれないが、読んでいるこちらまで少しアタマが良くなったような気がしてくる。
本領である選挙やスポーツの予測にはじまり、金融、経済、気候、地震、テロリズムなどなど意欲的に幅広い分野の予測をテーマとしている。個人的には、シルバーの個人的な体験であるオンライン・ポーカーのくだりを特に興味深く読んだ。彼の実践的なスタイルは鉄火場で培われたのではないかと思わせる。
まさにタイムリーにインフルエンザなどの感染症の予測、疫学モデルにも1章を割いている。SIRモデルはシンプルすぎる(多様な行動をとる異なる人々のグループを捨象してしまっている)として批判しているが、ワタクシの最近の付け焼き刃知見では、そこらへんの多様性を導入したモデルもすでにあるようだ。これについては、この数年間での疫学の進歩なのか、単に著者のリサーチ不足なのかは不明。 -
Posted by ブクログ
自分が興味ある分野だけに、500ページのボリュームでしたが、かなり興味深く読みました。
リーマンショックや巨大地震、インフルエンザなどの予測に関する失敗のエピソードは、参考になりました。
著者は、最近のビックデータ分析で用いられているベイズ統計の重要性と推奨をしてます。
ある事象を分析する上で、その事象が起こる前の事前確率を見積もり、現実の事実を組み合わせて、確率的に予測する理論です。
ベイズ的アプローチは、問題解決のための観察・仮説形成・検証というアプローチと、概ね同じプロセス・思考法であるという切り口は、圧巻でした。
また、ベイズ統計が批判されている部分である、事前確率に主観性が入ることについても、大まかですが人間が思考して行動する以上は主観性は避けられず、またベイズ統計の、日々変化している世の中の事実に対応出来る柔軟性があれば、問題を最小限に抑えることができるという論には、なるほどと感じました。
いままで自分は、多変量解析など頻度論での統計解析を経験してきましたが、解析対象と実際の頻度理論が乖離しており、解析後に再解釈するという場面が多く、馴染みにくいというのが現実です。それ故、なかなか統計学が世の中に浸透しない一因かと思います。
一方、ベイズ統計の場合、自分の思考そのものをベイズ的に変えることができれば、解析対象そのものの思考がベイズ的思考で考えるので、合理的であると思います。
ぜひ自分の身の回りに適用していきたい考え方だなと、あらためて感じ入りました。
ちなみに、他の予測に関するエピソードとして、ポーカー勝負、地球温暖化、テロ防止のための国家インテリジェンスなど、多様です。
この様な予測に関する学習ができる本を探していた自分としては、大ラッキーでした。 -
Posted by ブクログ
大リーグの弱小チーム オークランド・アスレティックスを低予算でも統計を駆使することで割安なプレイヤーを集めることでプレーオフの常連にした『マネーボール』で有名になった野球データを分析したセイバーメトリクスPECOTAを開発。大統領予選について統計的に予測をしてWebサイトに発表した結果がほぼ的中したことでも有名。
著者は一時期、オンラインポーカーゲームにもかなり熱中していたらしい。第10章に詳しいが、カモがいると勝てる理論は納得。自分の経験でも、フリー麻雀で点5の東南では余裕を持って勝っていたけど、点10の東風では勝てなかった。この結果は、おそらくはカモがいるかどうかに依存していたんだと思う。カモは時間を掛けて楽しむのが目的なので東南に行き、腕に覚えがあってスリルやお金を求めていくと東風になる。そうなると余程でない限り場代分は確実に沈んでいく感じだった。
そのほかにも、選挙結果予測、天気予測、巨大地震予測、経済の統計的予測、プロスポーツ選手の成績予測、パンデミック発生予測、コンピュータによるチェス、ポーカーゲーム、金融市場予測、地球温暖化、テロ発生、についても統計や確立論をベースに分析していく。ノイズを取り除いて、シグナルを取り出していく。それは実に難しくて、時に人の直観に反していることもある。ベイズ理論についてもしっかりと理解しておくことが必要だし、アウトオブサンプルの影響にも意識を持つことが必要である。情報が多くなればばるほど予測の精度が上がるべきだが、実際には情報の扱いが正しくないことで、そうでないことも多い。予測の自己充足の効果だって甘く見ない方がよい。著者の論は、非常に理知的。最初の方に出てくるが、テレビに出てくるような人の予測は当たっていないことの方が多い、なぜならそれらの人は立場を持って発言をするからだと。だよね。
長いけど、面白い。いろんな意味で著者の性格があらわれているんだと思う。統計学の本がたくさん出ているがその中でもおすすめできる部類の本だと思う。 -
Posted by ブクログ
■予測
A.予測する際は、もっと確率と不確実性を受け入れねばならない。この点において役立つのが、条件付き確率を導き出す「ベイズの定理」だ。1 つのアイデアを違う角度から考える必要性を理解し、検証する方法を得る手がかりとなる。
B.ある心理学者によれば、専門家は「ハリネズミ」と「キツネ」の2 つのグループに分類できる。
・ハリネズミ:大きな考えを信じ、社会には基本原則があると信じている。大胆な予測をするのでよくメディアに登場するが、予測する能力はキツネより劣る。
・キツネ:これといった原則を持たず、問題に向けて様々なアプローチを試みる。より良い予測を行うが、メディアにはなじまない。彼らは多くの問題は予測困難だという信念を持つため、自信なさ気に見えるからである。
C.学者の中には、積極的に表に出たがる人がいる。彼らは自信たっぷりにドラマチックな変化が起こると言いたがる。そうすれば注目される。つまり、ハリネズミのように大胆な予測をすれば、テレビに出やすくなるのだ。
D.キツネはテレビやビジネス、政治の世界になじまない。多くの問題は予測困難であり、不確実性には率直に向き合うべきだとする彼らの信念は、自信のなさと受け取られてしまうからだ。 -
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未来を予想するための理論としてペイズ定理というのがある。過去の情報に基づいて未来を予想する。しかし、過去の情報には、重要な情報であるシグナルと、誤情報であるノイズとがある。ノイズによってバイアスがかかり、誤った予想がなされてしまう。そこで、結果と照らし合わせて、確率論的に次の予想を行う。これを何度も繰り返すことで、より正確な予想が行えるようになる。これは、気象予想やチェスでは威力を発揮する。正確なフィードバックが得られ、コンピュータの力、特に生成AIの力を存分に発揮できるからだ。一方、地震や経済のように、システムが複雑で、予想が正しかったか否かの検証が難しい場合には、コンピュータでは対応出来ないという。兎に角、複雑な未来を予測するヒントが詰まった必読の書である。
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統計というシロモノは門外漢からすると、たいていいかがわしく見える。
それは、本質的には確率論でしか語りえない予測が、あたかもそれが絶対的なことように提示されるからだ。統計に100%がないことは、素人でも皮膚感覚で十分にわかる。
著名な統計家である著者ネイト・シルバーの会いに行く「優れた統計家」たちは、いずれも予測があくまで確率論であることを真摯に語り、フィードバックを用いしてモデルを修正し精度を高めることにこそ心血を注いでいる。
著者自身も自信を「ベイジアンである」と語り、人間を完全に合理的なホモ・エコノミクスとして想定するフィッシャー学派と対置させ、不確実性の存在を隠そうとせず、むしろ積極的に語っている。
「事前確立」をモデルに組み込むというベイズ統計学は、経済学における行動経済学の台頭と軌を一にしており、両者は同じ思想に根を張った兄弟分といえると感じた。
これからもテクノロジーは高度化していくだろうけれど、数字だけをブラックボックスの中でこねくり回して、それらしい理屈で大衆を扇動しようとする統計家は、もはや信用を得ることはできない。“正しい”インプットと、修正を恐れない真摯な態度。統計と向き合うににあたって失ってはならない金科玉条(皮肉ではなく)。
ビジネスにおける統計の活用においては、どうしてもハッタリの要素も交じってくる。競争原理のなかで、切り捨てなければならない正直さもあるだろう。正確性を欠いたとしても押し切らねばならない場面があるのであれば、やはり一番大切なのはクリエイティブ/アウトプットの突破力ではないか……?そんな気がしている。 -
Posted by ブクログ
予測についてのデータサイエンティストの本。政治の選挙予測、経済から野球、テロの発生確率、天気予報、地震予知、オンラインポーカー、人工知能によるチェスのプログラム等、扱う範囲が広く、事例が多いので面白い。
◼︎予測には向いている分野とそうではない分野がある(現時点では)
過去の観測から天気予報の精度は非常に向上しているといえるが、未だに天気予報士は予報が外れた時に怒りのメールを受け取る。
地震は発生の間隔が天気の変化より長く(予測のためのデータが圧倒的に少ない)、かつ観察対象は地中で見えづらく、複雑なため予測することは非常に難しい。確率論で「何百年に何回、どれくらいの確率論でどれくらいの規模の地震が起きる」と予想はできても、「●月●日××で地震が起きる」という予測はできない
◼︎世界はそんなに単純ではない
予測モデルを作るときに失敗しがちなのは、単一の現象など少ない指標で複雑な世界をシンプルにあわらそうとすることである。すべての事象が単純なモデルで説明できるわけではないという前提にまず立つ。
◼︎シグナルとノイズを見分ける
シグナルは、予測したい事象が発信する兆し、ノイズはシグナルをシグナルであると分からなくしてしまう雑音。
物事が起こった後に、シグナルをノイズから見分けるのはやさしいが、その前からシグナルをシグナルとして見ることは至難の技である
◼︎予測することが未来に良くも悪くも影響する
選挙戦など、候補者の支持率などが公表されることで、有権者の行動が変わることもある。カーナビシで、渋滞を抜ける最適な道路選択に従った途端、同様の指示を受けた車が集結して渋滞するなど。 -
Posted by ブクログ
『マネーボール』で有名になった野球データを分析し、選手の優秀さを予測するシステムを開発した著者。
2008年の大統領選の結果も予測したらしい。それがどれほどすごいことなのか実感はないが。
①ノイズとシグナルを見極め、より最適な判断ができるようになるためには?
②ベイズの定理について
①
知識としてノイズのパターンを知り、見分けられるようにする
②
ベイズの定理で使うデータは、すべて事実に基づいた数字ではなく、推測や人の主観が入る。そこにこそ、優位性を見出している、のかな?
ベースボールのスカウトはいなくならないし、データや計算だけに頼るのではなく、人の経験や判断、直感などがコンピューターに勝ることは少なくない。
ただし、より適切な判断を常に行うことを人は苦手とするため、データを用いることも忘れてはならない。