飯島周のレビュー一覧
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ロボットの名付け親
カレル・チャペック『絶対製造工場』
物質をエネルギーに変換する発明品「カルブラートル」は、物質に封じられた〈神=絶対〉も解放してしまう。〈絶対〉がもたらす啓示・宗教的恍惚や奇跡によって世界は混乱と争いの時代へ。約100年前の小説だけど、風刺されている世相は現代にも当てはまると思う。
【読書案内】絶対製造工場/チャペック
人類はついに『絶対=神』の製造に成功した。『絶対』は、人々に陶酔を、感動を、信心を与えながら急速に増殖していく。しかし、それは、世界全体を巻き混む混乱と破壊への序章であった。
神とは、絶対とは、真理とは何かを問う傑作SF
「「わたしは何も信じない」マ -
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1924年の5月23日~7月27日(ちょうど100年前!)、チャペックはイギリスを訪れた。本書は、その時にチェコの新聞に連載した紀行エッセイ。ロンドンからウェールズ、スコットランドまで、ほぼ全土をめぐっている。その風土や文化についてはもちろんのこと、ユーモアにあふれた人間描写がたまらなくいい。イギリス贔屓だったこともあって、懐かしいよきイギリスが活写されている。
アイルランドへも行きたかったのに、あんなとこには行くもんじゃないとみなから止められ、行かずじまい。そのことも縷々綴っている。
風景や人物を描いたマンガチックな絵が70以上。描いているのはチャペック本人。印象的なのはバーナード・ショーの -
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何かの本を読んだときに、その著者が、自分の『愛読書』として紹介していたので、読んでみたのですが、ユーモアが随所にちりばめられていて、かなり面白かったです。
園芸好きの方なら、自分にも思い当たるフシがあることに気付き、大笑い間違いなしでしょう。
園芸に興味がなくても、天候や植物に1年中振り回される園芸家にクスッとなるでしょう。
植物の名前もたくさん出てきますが、そこは全然知らない植物名が出てきても何の問題もありません。かなり楽しめる1冊でした。
雪の降ることもあり、寒い12月~2月くらいまでは、何かすることがあるの?と思いますが、園芸家にはやることが沢山あるんですね。園芸家には休みはないの -
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猫丸さんのお薦め本です。ありがとうございます。
カレル・チャペックは1890年生まれのチェコの作家。
プラハのカレル大学で学んだ後、ベルリンとパリに留学。
帰国後の1916年(26歳)から創作開始。
1921年に新聞社入社。
生涯ジャーナリストとして活動。
この作品はエッセイ集で
Ⅰ男と女と日常生活
Ⅱ文化と社会
Ⅲ政治的動物
ⅠとⅡは大変面白く読みましたが、Ⅲは私には少々難しかったです。
Ⅰの男と女と日常生活は軽妙洒脱な男女の違いの妙などユーモアの溢れるエッセイが多く、例えば「毛皮なしのシラミ」では
「それは豊かな人たちが貧しくなるようにということではなく、豊かな人たちが他人の貧しさの -
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日常のささいなできごとを見守るチャペックは、からかいまじりのユーモアを発揮する。鼻かぜや、女について、男について、家にまつわるあれこれ、買い物について・・・。上機嫌の底にあるのは、それほど偉くも立派でもない、人間に対する愛情だろう。その愛情が政治に向かうと、人間らしい生き方を求めての、熱い呼びかけとなる。チャペックは偏ったものの見方を嫌う。人間をひとつの鋳型に押し込めるのではなく、多様性を認めたうえで、人としての共通項に目を向ける。チャペックは、肯定の人だ。否定を重ねて唯一のものを求めたりはしない。雑然として、非効率かもしれないが、豊かだ。
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チェペックが行く、豊かな旅の記録・イギリス編。
これはチャペックの温かみあふれるまなざしと、ウィットに富んだユーモアが素晴らしい旅行記。
豊かな人間愛・郷土愛から、チャペックの人柄が透けて見える。
内容的には、歴史とかその土地の風土とかよりむしろ、著者が見たこと、感じたことに重きが置かれているかんじ。
でも、それだけで十分面白い!
結構前に書かれた本なのだが、全く古臭さを感じない。チャペックが頭の柔らかい人だったんだな、とよくわかる。
著者の自筆イラストも多数。
このシリーズは他にもチェコスロバキア編(チャペックはチェコスロバキア出身)、スペイン編、北欧編とある。
私は今のところ、イギリ -
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ほぼ100年前の旅行記。
筆者のカレル・チャペックはチェコ・プラハ出身の、ジャーナリスト・エッセイスト・小説家・劇作家。1924年の5月から7月にかけてイギリス国内を旅する。この間に書いた紀行文がプラハの新聞に連載され好評を博した。それを書籍化したものが本書。
「あいさつ」と題された、筆者による前書きがある。その中に心を惹かれた文章があったので、少し長くなるが引用したい。イギリスで見た光景を思い浮かべて、筆者が考えたこと、感じたことである。私には、筆者が「旅とは何か」についてを語ってくれているように感じた。
【引用】
わたしが思い浮かべるのは、ただ、ケントにある一軒の赤い小さな家である。なんの -
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チェコのジャーナリスト、小説家であるカレル・チャペックがイギリスに滞在した際のイギリスに関するエッセイ。
カレル・チャペックについては、全然知らなかったのだけれど、「ロボット」という新語を世に広めた人らしい。へぇ。
カレル・チャペックの旅行記としては、他に、イタリア、オランダ、スペインなどがあるけれど、この「イギリスだより」は特に好評を得て、人気もあるとのこと。へぇ。
で、内容だけど、まぁこれが独特の表現で、ユーモアあり、奇抜な言い回しあり、でわかりにくいところも多々あるのだけれど、なんか楽しい。こういう文章をウィットに富むというのだろうか。イギリスやイギリス人に対して、ズバっと毒をはいた -
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チェコ語で書かれた原典など読むことはできないが、本書の訳文の多彩な文体を見ていると、翻訳大変そうだなあ、と想像できる。
飄々とした味わい、ちょっぴりの皮肉。
ペンクラブの招きでのロンドン行きだったそうで、当時のイギリス文人の錚々たる顔ぶれの戯画もある。
何でも、チャペックをそれまで高く評価していたチェスタートンは、本書p.206の戯画でかなり不愉快になったとか。
約100年前のイギリス。
ロンドンの様子は変わったに違いないけれど。
郊外や地方の町はどれくらい変わったのだろう。
そして、イングランドの人々が「私たちが行かない所」と言ったアイルランドは。
チャペックがアイルランドに執心したこと