村井章介のレビュー一覧
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【世界をつなぐ海の王国】
「古琉球史はなんてったっておもしろい」で始まるこの本は前近代の琉球について、各国に残るありとあらゆる史料と人種論・言語などから分析したもので、日本とは異なる独自の文化があったことがよくわかる。琉球人の起源(確かなことはわかっていないが)、その後中国文化が流入。王国が誕生して東南アジアと明とをつなぐ「中継貿易」で栄える。世界に開かれた繁栄の時代を経て島津氏の琉球征服。1冊に収まっているのが嘘のような圧巻の内容だ。
沖縄の歴史というと近代以降の琉球併合や第二次世界大戦前後についてばかりだが、古琉球の時代を知り日本史とも並行してみてみたい。たとえば遣唐使のころ奄美からの貢 -
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海洋アジアに足跡を残す、古琉球の成り立ちから終焉までを、
多彩な史料を読み、検証して、明らかにする。
序論 古琉球から世界史へ
第一章 王国誕生前夜
第二章 冊封体制下の国家形成
第三章 冊封関係と海域交流
第四章 和/琉/漢の文化複合
第五章 王国は滅びたのか
文書、碑文、書簡等の画像豊富。各種地図有り。家譜有り。
引用文献・参考文献有り。
かつては、ヨーロッパの古地図にも記されていた、琉球。
ヤマト(日本)のみならず、中国や朝鮮とも関わりを持ち、
シャムやマラッカ等の東南アジアとも取引をする貿易の中継基地
として、発展しました。
その歴史、かな文字や漢字、異なる宗教をも取り入れる柔軟さ。 -
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中世日本史を専門とする村井章介先生の一般向け書籍。
東アジア諸国との関係が不安定になり市井の日本人や韓国人、中国人の相互の感情が悪化していく今において、改めて東アジアにおける日本とは何かを考えるにあたってよい材料となる本でした。
大学生向けの入門授業のノートをもとに構成したという本書は、現代とは異なる中世日本をを素人にもわかりやすく展開しています。
この本のテーマは日本中世の国際交流や交易について。
元寇・日宋貿易・日明貿易といった高校の授業で出てきたキーワードについて、貴族や幕府などの中央権力だけでなく相手国の状況や実際に交易に携わっていた人々についてもその実態を明らかにすることで、中世 -
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元寇の際の鎌倉幕府執権の座にあったことで有名な北条時宗であるが、実はそのひととなりを物語る史料が極端に少なく、具体的な人物像を描くことは難しいとのことである。
そのような中ではあるが、様々な史料を博捜して時宗の人物像に迫ろうとしたのが本書の特徴である。あわせて、時宗を支えたものの時宗死後、いわゆる霜月騒動で落命した安達泰盛にも焦点を当てて、将軍権力と北条得宗体制との桎梏、元寇後の政治改革の在り様等が論じられる。
元寇については関係書籍も読みある程度の知識は持っていたが、霜月騒動のことは御内人と安達氏の争いといったことくらいしか知らなかったので、本書を読んで、背景にある対立の所在について -
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世界のネットワークに繋がってた、琉球。大航海時代のヨーロッパから見ると、鎖国を敷いた日本より、琉球国の方が、大きな存在だった。それを現してか、ヨーロッパで作成された世界地図の中で、日本よりも琉球の方がかなり大きく描かれていた。
様々な地域と繋がり、交易をすることで生き延びる戦略は、弱者の闘い方として参考になる。小さなベンチャー企業が生き延びるには、ネットワークを張り巡らさなければいけない。
開かれた繋がりという点では、琉球はインターネット的なのかもしれない。さらに、交易を促進するために内部に華人を取り込むなど、多様性やフラットな関係という考え方もある。非常に先進的な考え方を持っていた。
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全て理解できていない。理解を進めるには、朝鮮史や中国史も知る必要がある。中世の境界に対する意識にせまるという視点が興味深い。国境や一つの国家という概念が生じたからこそ、国際化は難航しているのかもしれない。多少脇道にそれるが、外国人労働者の劣悪な労働環境や、インドネシア?などからの看護師?の受入がその例。異文化を「異」文化と感じなくなったとき、本当国際化にボーダーレス化がなされたといえるのだろう。外国に対する意識が中世日本に逆行しているという指摘が新鮮だった。江戸時代においても、知識層にとっては鎖国は鎖国でなかったことを踏まえると現在の国際化の進度は、単に本来日本は開かれたものであるという意識が