ネタバレ
Posted by ブクログ
2022年07月03日
三角は幼い頃から良くないものが見えていた。目を逸らして生きていた彼の前に、冷川が現れ、自分と一緒にいれば怖くないと囁く。言葉につられる様に彼の元で働くようになるが、自分が見ていたのはその世界の上澄みでしかない事を知る。
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原作は漫画だっただろうか。それが映画化してノベライズ化した、というな...続きを読むんとも複雑な変遷を経たこちらの一冊。
映画も漫画もまだ見てないが、興味がある一作なのでまずは小説から。
幽霊が見えるが祓えない書店員、三角と浮世離れした祓える男、冷川の二人が契約のもと奇妙な事件を解決していくというストーリー。
ホラー小説やホラー映画は好んで視聴したり、読んだりするが、何もできない無力な人間が怪異に脅かされる話を多く見てきたため、祓える人間が出てきてある程度怪異に対して優位に立つのは新鮮。
登場する登場人物のかなりキャラクターが立っていたり、シリアスな雰囲気でありながらかなりストーリーが快活に動くのでエンタメホラー映画という位置づけになるのだろうか?陰鬱なシーンはあったが、怖いというよりは、何となく少しだけわくわくするような感じだった。
読み始めは、奇妙な凸凹な二人が片方に振り回されながら(主に三角が)進んでいくバディものだと思ったが、どうにも雰囲気が違う。
和気あいあいとするわけでもなく、かといって腐れ縁で付き合うようなバディものにある少し殺伐とした雰囲気があるわけでもなく、謎の距離感を保って進行していく。冷川の方が急に三角に距離を詰めたりして、なんとも関係がちぐはぐ。
この関係のちぐはぐさが起こる原因の大多数は冷川にあるわけだが、この冷川がなかなかの曲者だ。
浮世離れしていて飄々としているというのが一番近い表現かもしれないが、なんだかそれも違う気がする。打算的で自分の利益を優先し、他人を顧みない発言を多用し、なんだこの野郎と思う瞬間もあったりしたが、同様に自分の事も顧みない危うさも感じさせる。
とにかく、心を介して感情が発露されていないと感じ、人形に無理やり心を作ったらこんな風なのかな?
この変な感じは読んでもらわないと分からない気がする。とにかく表現に困るのだ。
そのため、この作品もバディものと表記するのは違う。
そんな二人が、様々な事件に巻き込まれながら、呪いを振りまく女子高生の影を追う。そして、少しずつ関係を近づけつつ、最後は一筋の闇に導かれるように、これまで起きた事件たちの大元に至るわけだが、この大元こそが冷川が現在の冷川たる存在になった原因。
冷川がなぜこうなったのかという過去話はかなり胸糞悪いので読んでいてしんどい。
冷川の子ども時代の無邪気さと、彼が知らずに引き金を引いた惨事とのミスマッチが本当にしんどい。
こんな壮絶な過去があればそうなるわと納得。彼もまた被害者だったのだ。
三角の助けもあり、過去を一部清算できた冷川は少しだけ人間味を取り戻せたのかもしれない。あんまりすぐは変わってなかったけど。
最後はさわやかな終わり方をしていたが、一つ納得いかなかったのが、すべての原因となった黒幕の正体が知れなかったこと。
(漫画の結末が同じような流れになる場合に限るが)映画では漫画に配慮して明確な表現を避けたのか、映画のテーマがオカルトではなく、三角と冷川の成長を見るという方面の様なので、そこまで重視されなかったのかは分からないが、うやむやのまま終わったのはちょっと残念だったかなぁ。
漫画を読めばこの続きが分かるのか、どうなのかちょっと気になるので、漫画も読んでみようかと思っている。