ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
2pt
豪雨が続いて百年に一度の洪水がもたらしたものは、圧倒的な“泥”だった。南インド、チェンナイで若い IT 技術者達に日本語を教える「私」は、川の向こうの会社を目指し、見物人をかきわけ、橋を渡り始める。百年の泥はありとあらゆるものを呑み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、大阪万博記念コイン、そして哀しみさえも……。新潮新人賞、芥川賞の二冠に輝いた話題沸騰の問題作。(解説・末木文美士)
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
第158回芥川賞受賞作。百年に一度の洪水で泥の山となった橋を会社を目指して渡り始めると物語は次第に現実から不条理な世界へと入って行く。インドという未だ日本人にはどこかな捉えどころのない異国情緒も相まって不思議な作品。
東京FMのラジオ番組「Panasonic Melodious Library」で(けっこう前に)紹介されていて、興味を持った。 あらすじはこうだ。南インドの都市チェンナイで日本語教師をする私は百年に一度の大洪水に見舞われる。水が引いたあと私は、百年分の記憶を孕んで地上に投げ出された泥の山から、チェ...続きを読むンナイの人々が、遠い昔に死に別れた家族や友人をいとも自然に引っ張り上げては思い思いに邂逅を果たすさまを見る。日本語講座の生徒である青年が熊手で掻き出す泥の中からは、この地にあるはずのない私の思い出の品も転がり出てきて、私の、彼の、語られなかったはずの記憶の声が鳴り出す。 ラジオでこの作品の特徴として、インドに行ったみたいなちょっとした旅行気分を味わえる、そして大阪出身の作者の醸し出す独特のノリがある、と語られているのを聞いたとき、「あ~遠くへ行きたい」と兼ねてから思っていたつもりはなかったのになんだか遠くへ行きたかったような気持ちになり、異国情緒や旅情を求めて読み始めた。 まず、癖のある文体が癖になる。「、」でだらだらと続けたり、助詞をちょいちょい省いたり、語彙が妙に古めかしかったり、それでいてユーモアもある。とにかく普通じゃない。もう既にトリップ気味。 そして虚構と現実が容赦なく入り乱れる。マジックリアリズムというらしい。インドのIT企業のエグゼクティブたちは翼を装着して飛翔通勤する。インドなら、そうかもしれない。思っていたよりずいぶん遠くに来た。 私の出身地は明らかにされていない(いなかったと思う)。ただ、「大阪出身の友人」が複数名登場する。大阪出身の、といちいち説明されるので私はそうではないように読めるのだが、インド人に「日本人はマクドナルドをマクドと呼びます、『マクド』、はい」と復唱させるシーンがある。大阪ではないが関西人だと考えるのが自然なようにも思うが、でもそれもどこか釈然としないところがあり、あのマクド発言はすごくひっかかる。 というかもっと大筋においてひっかかるところだらけの不思議な小説だったが、ただ難解なだけでなく、わかりやすい「良い話」や「浮いた話」も絶妙~なさじ加減で入っていて、なんかすごく好きだった。 他の作品も読んでみたい。
読書開始日:2021年7月5日 読書終了日:2021年7月6日 所感 芥川賞受賞作品を読み進めている最中ではあるが、とても好きな作品に出会えた。 タイトルとはかけ離れた清涼感があった。 ラストシーンの鳥肌は、川上弘美さんの「真鶴」以来かもしれない。 この作品は、チェンマイに降りかかった百年に一度の大...続きを読む洪水により浮上した百年積み重ねた歴史ともいえる泥を掘り起こすことによって、 登場する人々の過去を振り返る内容。 飛翔通勤や、泥から出てくる人間、それらがしっかりと作品の中の現実になじむくらいに、現実と虚構の線引きが無い。 過去は年月を重ねるうちに変形し、過去への思いの強弱も変わる。 そこにある事柄、発せられた言葉よりも、発せられなかった言葉、おきえた事柄に重きを置いてきたがゆえの、百年泥。 もはや原型をとどめていない過去でも、思いが強すぎるあまり、泥から虚構を見るがそれを虚構と気付かない。 作中の文章「俤が俤を引き寄せる」はすごく腹落ちした。 ラストシーン、デーヴァラージの日本語で語るシーンは最高に澄んでいる。 その一瞬で泥が消え、今までの停滞が嘘のように未来が流れ始めた。 正直自分の読解に自信が無いからもう一度どこかのタイミングで読みたい。 主人公の母の件についてはまだ不明な点が多い。 ああ地面 そうつげる自分の声に救われるごとく この変幻自在さこそが彼以外の知り得ない過酷な人生の刻印 それとも夫に惚れてたのかもしれない 自分が土をふむ、それを土がすなおにうけあしあとでへんじするそのことをたのしんでるふうにみえた 世界はただ受け、惜しみなく返事する たったひとつ母がこの世で得た日本の脚、それは私だった。 そこにある事柄、発せられた言葉よりも、発せられなかった言葉、おきえた事柄に重きを置く。 火葬して天国へ連れて行き、ガンガーへ遺骨を流し穢れをとる 俤が俤を引き寄せる かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聞かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。 どうやらわたしたちの人生は、どこどう掘り返そうがもはや不特定多数の人生の貼り合わせ繋ぎ合わせ、万象繰り合わせのうえかろうじてなりたつものとしか考えられず 今までの停滞が嘘のように
この本に出てくる主人公と場所は違えど同じ職業をしている身として、彼女の日本語を教える教室での心労が手に取るようにわかるのだけど、この本の本筋はそこにはなく、インドという国とそこの考えに全く馴染みのない自分でも、そこにある宗教的というか土着的というか、そういう世界観の深さを垣間見ることができる話だった...続きを読む。 百年泥から湧き上がってくる記憶とも過去ともつかない幻想的な物事の中で、主人公と主人公を悩ませる生徒の過去が一際色鮮やかに語られて、そこに何があるという訳もなく、ただ彼らが今どうして彼らであるのかがわかっていく話。橋を渡り始めてから渡り終わるまでに、主人公と学生がこの企業の一教室で出会ったことの不思議というものを体感させらる。 この本の中で一番好きだったフレーズは、『世界はただ受け、おしみなく返事をする』だった。砂浜を歩く主人公の母親が感じた安心、生きているという感触を、こよ一文からひしひしと感じた。
場所は南インド、チェンナイ。百年に一度の洪水によってもたらされた膨大な泥。アダイヤール川にかかる橋を渡ると、泥の中から無くした人や物を探しあて、再会に涙ぐむ、喜ぶ人達の姿で溢れていた。 インドの文化をリアルに描きつつ、ファンタジー要素を隠し絵のごとく違和感なく盛り込んで、圧倒的な混沌の中から人生の悲...続きを読む喜こもごもをインド哲学と日本の仏教の両方から掘り起こして表現しているような印象がしました。 現在と過去、インドと日本、現実と仮想を交互に行き交う文体は、読みやすくはなかったですが、不思議な世界観でとても面白かったです。インドってすごい!と素直に思いました。 本当にインドでは飛翔通勤してる人達がいるんですか?(いませんよね??笑)
インドで日本語教師として働く主人公は、百年に一度の洪水が残した泥の中から様々なものが出てくるのを目にする。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、大阪万博の記念コイン、そして行方不明だった人までも!? 雑多でパワフルな国で、そんなこともあるかもと感じさせる描写。 私も何か昔なくしたものを探しに行きたいような...続きを読む気持ちになった。
2017年芥川賞(下半期①) インドでの百年に一度の洪水を元にした話 とにかく忙しく、忙しなく場面が変わる インドでも聞き慣れない南インド、チェンナイ 知らない文化の中にチョイチョイ放り込まれる嘘 飛翔、招き猫とガネーシャの交換 真面目の嘘(法螺)…信じちゃう… 話は橋を渡る間に百年泥から引っ張り...続きを読む出されるモノを元に話が展開されていく
うーん、私はあんまり好きな種類じゃなかったな。 ちょっと話も文体もごちゃごちゃし過ぎてるな。 私は結構、簡潔でハードボイルドな文章が好きだからねえ。 最後ふいに哲学っぽくなってアレ?ってなったんだけど、作者がインド哲学仏教学だもの…ってなるかんじ
ファンタジーなのか、と前情報なく読んでいたのでリアルとその境界線が絶妙に構築されていてなるほど、と思った。 構成力と設定の素晴らしさ。 その想像力と点と点とを結んでいく感じ。 唯一無二の作品であると思った。
南インドのチェンマイで若きIT技術者たちに日本語を教えている「私」。 ある日、豪雨が続き百年に一度の洪水が町を襲い、もたらしたものは圧倒的な”泥”だった。 「私」は会社を目指して橋を渡り始めるが、百年の泥はありとあらゆるものを吞み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、そして哀しみも。 新潮...続きを読む新人賞、芥川賞の二冠を獲得した文学小説。 百年に一度の大洪水であふれた泥の中から、登場人物たちの過去を振り返っていく作品です。 チェンマイという具体的な地名が出ており、主人公の「私」も現地IT企業の日本語講師という地に足のついたものであるにもかかわらず、現実と虚構、現在と過去の境が曖昧で、SFのようなファンタジーのような掴みどころのない雰囲気。 言葉選びもストーリー展開も独特な浮世離れした空気感で、読み進めるにつれ幻惑されたような、酩酊したようなふわふわした気分になります。 外国に行った事が無い日本人が、インドのミステリアスな印象だけを固めたような、過去に無くしてしまったものがきっとインドに行ったら見つかるのではと思わせてくれるような、不思議な異国情緒を感じさせるお話です。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
百年泥(新潮文庫)
新刊情報をお知らせします。
石井遊佳
フォロー機能について
「新潮文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
受験生をふりまわすな! 入試大混乱
象牛
ティータイム
「石井遊佳」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲百年泥(新潮文庫) ページトップヘ