Posted by ブクログ
2021年02月07日
著者の本はビジネスモデル全史以来2冊目。
豊富な事例と明快な解説が印象的だったので、バラバラと学んできたビジネス知識の棚卸しのために購入。
世の中に多くあるMBA本に比べ、以下の点が優れていると感じた。
・事例が多く、その事例分析が新しく深い
・説明の仕方が非教科書的で頭に入ってきやすい
・しかし...続きを読む、記載されていることのレベルはかなり高い(初学者向けに平易になりすぎていたりはしない)
・筆者の「ビジネスの面白さ」を伝えようとする姿勢が強い
・理論の羅列ではなく、学ぶ理由やコーヒー事業に例えたコラムなど読者が共感できる要素が詰まっている
明日からビジネスの楽しさが1.3倍くらいになるので、ビジネス書が好きな人にはおすすめの内容。
最も印象的だったのは、「ケイパビリティを作るのはオペレーションとリソースで、オペレーションを先に決めよ」という点。
今あるリソースの活用で考えてスケールの小さいアイディアしか出てこなかったり、オペレーションを考えていないがゆえに絵空事のようなビジネス案しか出てこなかったりすることが往々にしてあるので、この点を意識した発想をしたいと感じた。
【感想】
・うちの会社はケイパビリティを無視して絵空事をいうか、既存のケイパビリティにしか目を向けられない人が多すぎる
・「ケイパビリティ」目線でのビジネスモデルの引き出し(単にうわべの仕組みを理解するだけでは物知り止まり)を増やさないと何も事業に貢献できないと痛感
・リソースを鍛えるためにどうするかを真剣に考える。やる気を高めるだけで上手くいくなら苦労しない
【メモ】
○経営学(≒MBA)が必要な理由
・経営に必要なビジネスモデルを描き実現するためには、機能横断的な共通の事業視点が必要で、MBAの知識はどれもこれに不可欠なものだから
・ビジネスモデルは以下の4つから構成される。ビジネスは必ずこの4点を踏まえて構想すべきだし、経営学の知識は構想のための武器になる。
①ターゲット(狙うべき相手)
②バリュー(提供価値)
③ケイパビリティ(価値の提供方法)
④収益モデル(マネタイズの方法)
・ちなみに、組織戦略などに関わる立場にないのであれば問題意識も生まれず、学びの嗜好や実践の場も持てないので、経営学を学んでも学びが深まらず、自らのスキルにもならない。
○ターゲットについて
・使用者、意思決定者(DMU)、支払者がそれぞれ誰なのかしっかり考える
・STP思考(マーケティングの戦略を決めるプロセス)
Segmentation:顧客のタイプを分析
Targeting:どの人に集中するかを選ぶ
Positioning:その人に向け、自分がどうなっていくか
→これは個人のポジショニングにも使えそう
○バリューについて
・ウォンツを見極める。ドリルを買う人は、ドリルの穴が欲しいのでもないかもしれない。DIYで子供からの尊敬を集めたいのかもしれない。人間を心理的に観察し、見た目以上の真因に辿り着かないと意味がない
・バリューの構造
A)使用価値→使った時の嬉しさ
①中核価値:それがないと買わない
②実体価値:それがある物を買いたい
③付随価値:そうだとちょっと嬉しい
B)交換価値→金銭的な価値
C)知覚価値→エモさ・期待
・B2Bで顧客が感じるのは、QCDS
→顧客企業は「そのサービスを採用したときに自社システム全体のQCDSはどう変わるか?」を考えている。提供する側もそれを意識する。
・究極系は、「自社の世界で唯一の商品でしか解決できない問題点を、顧客に対する無料コンサルティングを通じて明らかにする」こと!
・キャズム(アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間の谷)を越えるには、アーリーマジョリティへのマーケティングが不可欠。
○ケイパビリティについて
・リソースとオペレーションによって構成される。オペレーションは「どうやってサービスを作り、運び、提供するか」
・垂直統合と水平分業に正解はなく、どんなターゲットにどんなバリューを提供しているかで異なる。アップルは個性的なPCのデザインのために垂直統合をし、IBMは水平分業で勝負した。
・オペレーションが先でリソースが後!設計図やスケジュールがないと必要なリソースは決まらない!
→リソースを先に固定してしまうからイノベーションが生まれない。足りないなら調達するか鍛えるしかない。
・オペレーションの中核はSCMとCRM。総合してバリューチェーン。
調達→生産→流通(物流)で顧客に届ける体制を作り、
マーケティング→営業→サービスで顧客を囲い込む。
・リソースについて
カッツモデルとは階層ごとに求められるスキルが異なることを示した図。大きく以下3つに分かれる。
①ヒューマンスキル(対人関係力)
②コンセプチュアルスキル(問題の核心を捉え概念化する力)
③テクニカルスキル(専門性)
・ソリューションビジネスは上位下達では成立しない
・ケイパビリティの変革方法はサウスウエスト航空に学ぼう!→同社が社員に求めたのは「ユーモア」。ユーモアがあれば厳しい状況も耐えられるし、顧客を感動させようとする原動力にもなる。変革への抵抗を乗り越えるには心理的安全性を与えることが必須!
○収益モデルについて
・市場シェアはあくまで平均値に過ぎず、カテゴリ別に見れば凸凹が見えるので、それを元に市場浸透を進められる
・トレンドは替え刃モデル、広告モデル、フリーミアム、サブスクリプション
→やっぱりサブスクはいろんなとこと被っている気がする、、、
→フリーミアムは限界費用がゼロのデジタルコンテンツだから成り立つ。無料と有料のバランスがとても難しく、広告モデルや全課金に移行することも
・(私見)なぜサブスクが流行る?
<SaaS>
ーはやるのもわかる。常に最新版が提供可能、初期投資が安くなるから試しやすい、クラウド機能と繋がる(複数機で使えたり保存できたり)など、便利で気軽に使えるから
<モノ>
ーわからない。UDもできないし限界費用高いから詰め合わせでもコストメリットがないから。
ーエアクロのように「プロのスタイリストが選んだ組み合わせが送られる」とかあかり安心のように「廃棄物処理リスクをパナに任せられる」みたいな付加価値がないとだめ。
→レーザーブレードに似た話だと感じた。
○その他
・全社ビジョンが曖昧でも、事業ビジョンは具体化すること!→うちの会社は誰をターゲットに何をしたいんだろう?
・比較優位:自分が全部生産性高くできるとしても、最も得意なことに集中しないといけない。ルーチンワークを外出しするのはそのため。途上国ビジネスが残るのもそのため
「弁護士が秘書を雇うのは、秘書が弁護士よりタイピングに優れているからではない。それが劣っているとしても、自分がタイピングより本来業務に特化した方が全体として儲かると分かっているから」
・結局、世の中の成功したビジネスは「計画的に成功した」ものばかりではなく、やりながらフィットさせた例が多い。結局は計画性より創発性だし、人間的要素(もちろんマインドだけでなくスキルも)が強い。
・事業責任者としての視点を持って初めて、事業への大きな貢献ができる。だから専門外の分野とも連携しよう!
→まじでおっしゃる通り
・マネジャーが自身のスキルや知識をうまく伝えられないのでは、組織力は上がらず成果も出ない!
→著者は30代を知識の再編、体系化に充てた。