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Posted by ブクログ
瑕疵物件と聞くと、事件性やホラー要素と勝手に関連付けてしまいそうだが、ひとえに"瑕疵"と言っても様々な瑕疵がある。
題名とは裏腹に良い意味で裏切られた社会派ミステリーのような、ヒューマンドラマのような短編集だった。それぞれの短編から学べる予備知識もあり、読んでみて良かった。
①土曜日のアパート(原発関連死)
②保証人のスネップ(賃借人失踪)
③百尺竿頭(かんとう)にあり(謎の自殺)
④転機のテンキー(家族の不審死)
主人公は瑕疵借りをしている藤崎達也だが、それぞれストーリーの後半くらいから登場する。
基本は各話のゲスト視点で話が進み、亡くなる人との関係性など登場人物の設定が細かいため、置かれている立場や心情が分かりやすかった。
主人公(藤崎達也)が出てくるのは、ゲストの関係者が亡くなり瑕疵物件となってから。
無愛想な割に、亡くなった人の残した謎に首を突っ込んで解決に導くアドバイスをするミステリー要素のオチがあり、死者の想いを知ることで感動するようなストーリーでした。
個人的には、『土曜日のアパート』、『保証人のスネップ』が良かった。
Posted by ブクログ
松岡圭祐『瑕疵借り』講談社文庫。
先に続編にあたる角川文庫の『瑕疵借り 奇妙な戸建て』を読み、こちらも読みたいと思っていた。しかし、2018年の刊行だと言うのに行きつけの書店には在庫は無かった。先日、読み終えた本を古本屋に売却したところ1,500円分の金券を貰い、その一部を使って、この本と年末年始用に数冊を購入した。
『瑕疵借り 奇妙な戸建て』と同様、主人公は瑕疵物件に住むことで瑕疵を軽減する『瑕疵借り』を行なう藤崎達也である。賃貸の瑕疵物件を巡るミステリー短編4編を収録。
2年前、自分も田舎に中古の平屋一戸建てを購入したが、前に住んでいた独り暮らしの男性が亡くなり、関東に住む娘さんが不動産会社に売りに出したようだ。その点が少し気になったが、不動産会社の担当から亡くなった男性は親族と温泉宿に行き、そこで亡くなったと聞き、安堵した。つまり、購入した戸建ては瑕疵物件ではなかったということだ。
『土曜日のアパート』。東日本大震災後のいわき市が舞台となる。となれば、津波被害か原発事故が関係するのではと誰もが思うことだろう。予想通り原発事故が関係するのだが、なかなか面白い人間ドラマに仕上がっていた。『瑕疵借り』を正業とする藤崎達也が初登場する。人間の誠実さというのは何にも代えがたいものだが、確かに東日本大震災による福島第一原発事故の風評被害は酷いものがあった。自分は2013年に勤続30年の特別休暇と20万円を貰い、妻とハワイ旅行に行ったのだが、自分が波乗りをすることを知った現地のガイドから、日本では放射能汚染で海に入れないんだろう、1年後にはハワイにも放射能の汚染水が到達すると非科学的なことを言われたことを思い出した。
『保証人のスネップ』。スネップという言葉は初めて聞いた。24歳以下の無職がニートで59歳以下で2日以上家族以外と会わない無職をスネップと言うのだとか。保証人紹介会社に登録し、見知らぬ女性のアパートの部屋の保証人になったスネップの男。女性が失踪したことから滞納していた家賃の支払い義務が生じる。都会で孤独であることの悲しさが伝える。
『百尺竿頭にあり』。長年無職の長男が家を出て、アパートで独り暮らしを始め、働き始める。3年後、長男はアパートの部屋で自殺を図る。さっそく、その部屋に入居した藤崎達也の元を長男の父親が訪ねてくる。『百尺竿頭にあり』というタイトルとストーリーとがミスマッチのように思う。様々な事情はあろうが、自殺は特に周囲のひとに迷惑をかけ、後々まで周囲の人びとの心をざわつかせる迷惑でわがままな行為だ。中学、高校、社会人の時代に身の回りで同期や知人が自殺を図ったが、思い出す度に未だに心の中に小石を放り込まれたような気持ちになる。
『転機のテンキー』。亡くなってから初めて知る親の有り難さ。親の気持ちを子は知らず。タイトルは駄洒落のようだが、これもストーリーとは結び付かなかった。昨年、自分も父親を亡くした。真面目で実直、曲がったことが嫌いな父親で、会社では大分損をすることが多かったようだ。それでも、穏やかな眠るような最後を迎えることが出来たのは、そうした真っ直ぐな生き方を選んだが故ではないだろうか。
本体価格660円(古本0円)
★★★★
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