Posted by ブクログ
2019年09月08日
放火殺人が疑われる焼死体の腹腔から焼け焦げてボール状に固まった大量の蛆が発見される。さらに奇妙なことに、死体の食道と胃が消え去っていた。炭化し死亡推定日時を特定することさえ困難な状況のなか、日本で初めての「法医昆虫学」が導入される。捜査官に任命されたのは、准教授・赤堀涼子。当初は現場が荒らされると反...続きを読む発していた刑事も赤堀のプロ意識の前に彼女を信頼し、協力し始める。
やがて、赤堀は蛆の生育状況探るうち、常識では考えられない成長を遂げた大きな個体から事件の真相を見抜いていく・・・
とまあ、のっけから焼死体の解剖シーンで始まるこの作品、蛆の描写が半端なくリアル。虫が大嫌いの私が最後まで読めるのだろうか・・・と危惧しながら読みだしたが、それは杞憂に終わった。途中からは先が気になって仕方なく、ノンストップで読み進む。
事件の真相は破綻がなく、解き明かす過程もスリリング。登場人物も魅力的で、昆虫となると周りが見えなくなる赤堀の変人ぶりと刑事たちとのやりとりに見せる無邪気さはちょっと福家警部補を彷彿とさせるし、ハードボイルドの主人公でも行けそうな岩楯刑事の渋さ、メモ魔でプロファイラーを目指す新人刑事・鰐川の鋭さもいい。
ラスト数頁に至って、「あれ、これ読んだことある」と気が付いたものの再読でも十分楽しめて二度目の星4つ。
たった一点気に入らないのは、単行本に比べて文庫の表紙がよくないこと。ともあれ、このシリーズあと6作あるので制覇めざします。