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Posted by ブクログ
早稲田大学ラグビー部の春から大学選手権決勝に至る1年間を新入部員の草野点の視点から追ったスポーツ小説。あくまでもフィクションですが、おそらくは著者の藤島氏自身の経験(著者は元早稲田大学ラグビー部在籍)と取材を基に、描かれており、80年代の早稲田大学ラグビー部の実情をかなりのリアリティーで描いています。巻末の解説でも清宮克幸氏(元早稲田大学ラグビー部監督)が触れておられますが、本書に登場する個性あふれる部員の姿は「おそらくあの人」という、実在の選手がモデルになっているようです。
描かれているのは日常の練習風景が大部分です。冬の公式戦でのレギュラー獲得を目指して、部員一人ひとりが自らを鍛えぬく様子は、自らの実体験を通して描かれているだけに臨場感満載です。
草野点がフッカーというスクラム最前列のポジションであるがため、スクラムを組んでいる時にどんな駆け引きをしているのかという部分は非常に細かく描写されていて、本書のそれはおそらくは「やった人間にしか分からない」レベルです。
「サイドフォロー」、「ヘッドスピード」、「回転ヘッド」などの名称の各種練習メニューや菅平合宿の練習風景の描写、タックルの強化のために鉄柱に肩をぶつける個人練習を続ける先輩、後輩の指導に時折練習場に訪れ圧倒的なスクラム技術を披露するOB、多くを語ることなくラグビー部を引っ張る主将、草野点のライバル同級生の狂気じみたスクラムの様子等、魅力的な人物描写が読者を早稲田大学ラグビー部という独特の世界に誘ってくれます。
本書終盤、対抗戦終盤の早慶戦、早明戦直前のピリピリとした緊張感は読んでいるこちらまで張りつめてくる程でした。すべての試合が終了した後の懇親会のシーン。1年生部員から見て、あまりにも大きな存在で直接言葉を交わす事など1年を通じてほとんどなかった主将が「ありがとうな。俺、お前らの事、一生忘れないからな」と語りかけるシーンは印象的でした。
ラグビーを扱った小説はもともと数少ないですが、ラグビー好きの方なら絶対に一読をお勧めします。また学生時代に部活動を経験されている方なら、共感できる部分もたくさんあるのではないかと思います。私自身、弱小運動部ではありましたが、最後の公式戦に掛ける思いや、日々の練習に向けた気持ちとか、懐かしい思いを感じつつ読むことができました。
Posted by ブクログ
1970年代の最後のあたりから1980年代なかばの早稲田大学ラグビー蹴球部を舞台とした小説である。主人公は福島県出身のフッカー・草野点(くさの・ともる)。彼の大学一年生の一年間が描かれている。※「岡田次郎」という大学二年生のキャラクターが、早大学院(早稲田大学の付属高校)が昭和52年度に初めて花園出場した時に高校3年生という設定なので、時代背景としては「1979年」の要素が大きいか。
作者・藤島大は早稲田大学ラグビー部出身のスポーツライターで、卒業後はコーチを務めるなど長く早稲田大学ラグビー部に関わっているため、文章のあちこちから往時の「ワセダラグビーのリアル」が色濃く感じられる。もともと藤島大の書く記事も叙情的なスタイルであり、その文章に度々触れているせいか、フィクションであるこの小説の登場人物たちも実在するプレイヤーのように感じられるのがおもしろかった。
とりあえず今作だけでも完結はしているのだが、主人公・草野点の成長を読んでみたいなと感じさせられた。
Posted by ブクログ
硬く素っ気なさを意識したハードな文体なのに所々で甘えん坊さんのかわいい系を狙った感じが出てしまうのはなんなんだろう。早稲田大学ラグビー部での日常こそが既に非日常であり異彩を放っているので、文体で遊ぶ必要は全然ないと思うのだけど。
主人公の他者性のなさき自閉した感じで独特。ライバルとか同期とかってもっと鮮烈じゃない?先輩の最後の試合ってもっと華やかなものじゃない?中学時代に捨てた不良の仲間に対する思い入れはなくてラグビーの仲間だけがあなたの本当の友達なの?おおこわ、ドライに過去を切り捨てるのこわ。
と文句ばかりになりましたが大変面白く手が止まらな9なるので読むべし。
Posted by ブクログ
1月16日のNHK「クローズアップ現代+」では大学ラグビー日本一になった明治大学を特集していました。題して「組織大改革明大ラグビー部育成術」。イマドキ学生をどうモチベートし、どうプロアクティブ人材に育てるのか、というテーマでした。その内容は帝京大学の岩出監督の著書「常勝のプリンシパル」に相通じるものがありました。その帝京の10連覇の夢を天理が破り、それをまた明治が破るという結果は、今までの「体育会系」文化に限界を感じされるものだったりします。日大アメフト事件で顕在化したスポーツ・ハラスメント体質からの脱却とかいう以前に、そうしないと強くなれない、いや、チームが作れないのが時代の流れ。しかし、本書は早稲田ラグビーというプランドのもとに理不尽の自分事化に青春をかける若者の群像劇であります。無名校出身の実績のない、もしかしたら才能がない選手の成長物語は、とてもスィートで鼻の裏がツンと来るものがありますが、でも、オヤジの懐メロになってしまっているような気もします。イマドキ学生は、こういう物語を自分事にできるのだろうか?と心配になりました。
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