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低炭水化物ダイエットは正解か? 脳が砂糖をやたら欲しがるのはなぜか? 食べた分だけ動けば確実にやせるのか? カロリーを減らせば体重は減るのか? アメリカの一流医科大学院教授が229の医学論文から導きだした「食事」の結論とは。あなたは「誰か」に太らされている!
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Posted by ブクログ
果糖の問題点をよく理解できた。筆者は、政府がジュースを低所得者に配り、肥満を招いていたことから活動を始める。肥満の原因は、患者自身にあると考えられがちだが、そうではないと筆者は言う。ホルモンが原因だという。インスリンが多ければ多いほど、脂肪も増える。低糖の食事をとり、食物繊維が豊かな食べ物をとり、同...続きを読む時に安全な脂肪を食べるようにすることが大切。朝食にタンパク質をとり、寝る4時間前から食べないようにすることや、運動も効果的。政府に対して、正しいことをするように働きかけることの大切さも筆者は訴えている。
今まで読んだ食に関する本の中で一番良かった。内分泌系から見た肥満とメタボの仕組みがよく理解できた。食品の中には本当に沢山のものに果糖や人工甘味料が含まれている。今まで食品表示を必ず見るようにしていたが、食品表示のあるもの全てが加工品という著者の見解に、まさに目からウロコ状態。また、冷凍食品やスムージ...続きを読むーも食物繊維がなくなっているので全く意味がないなど、わかっていたようで全然わかっていなかった自分に気づかされた一冊だった。
今の時代、痩せるには、「知識と思考を行動につなげること」 が最も大事だなと思わせてくれる稀有な書籍です。 圧倒的な知識量と、エビデンスの豊富さは、○○すれば、痩せられるよと唄う、 多くのダイエット本とは、一線を画しています。 今の時代における「健康」とは何かを考える上でも、 非常に参考になると思いま...続きを読むす。 ○○すれば、痩せられる、 というダイエットノウハウは、 実は、効果が非常に限られるサプリメントみたいなものです。 効果がなくなれば、次に移ります。 なぜ、効果がなくなるか、それは、死んだ知識だからです。 ノウハウというものは、ほとんど役に立たないということは、 経験したことあるかたなら、体験的にわかるはずです。 それでも、ノウハウ=快感を求めてしまうのは、 人が果糖を求めてしまうのと、構造的には同じです。 では、なぜ、そういった快感を求めてしまうのか、 効果が限定されているにも関わらず。。。 なぜなら、そういった行動には、自分自身の思考や有機的な知識の繋がりがないからです。 たくさんのノウハウを貯めても、あまり意味がないことは、 私自身ももちろん経験済みです。 結果は、自分のカラダが証明しています。 そこには、決定的に 「自分がしっかりと自分の状況と環境(他者や組織、社会)を理解する」 という視点が決定的に足りないからです。 ただ、この欠如は、自分だけの責任でないことは、 この書籍を読めば理解です。 この欠如を起こさせる、この社会の複雑怪奇な構造は、 本当に厄介だと思います。 果糖が、諸悪の根源でもありません。 また、食品メーカーもしかりです。 製糖会社もそうです。 そういう世界になってしまっていることが問題です。 つまり、創り出しているのは、自分達自身ということです。 そこに、大きな問題点があります。 果糖は危ない、だから、摂取を控えようというのは、 実は、何も意味がありません。 個人で、批判し、今の状況を嘆いた所で、何も意味はないでしょう。 大事なことは、今の情況を知り、自分のカラダの状態を理解することです。 痩せたいという欲望の歴史は、まだ始まったばかりです。 その根底に流れるものは、自分のこの世の中における姿勢そのものだと思います。 人間は今、どうあるべきか、いかに生きるべきかということを、 多かれ少なかれ、誰しもが考えていて、 その答えの一つが、 「痩せているカラダ=健康的なカラダ」なんだということです。 そういうわかりやすいものを体現している人の考え方(脳の状態といってもいい)や、 価値観、世界観や、人生観が、信用できるものとなっているからでしょう。 これに異を唱えるのは、簡単ですが、世界はますます、 それが体現できている人と、そうではない人の格差がハッキリしていく社会になると思います。
本物の食べ物、即ち腐るものを食べること。 運動すること。 食物繊維をとること。 糖分には中毒性がある。 糖分の成分である、アミノ酸、エタノール、果糖の中でも最も過剰摂取が有害なのが、果糖である。 皮下脂肪と内蔵脂肪は別であり、 皮下脂肪が身体に良く、内蔵脂肪が身体に悪い。 脂肪の8割は実は皮下脂...続きを読む肪であり、内蔵脂肪自体の量は案外少ない。 体重を落とすとしても筋肉と皮下脂肪をキープして、内蔵脂肪を落とすだけで良いので、体重の3〜5%も落とせば十分。 肥満が必ずしも悪いわけではなく、 メタボリック症候群とは別である。 1日15分の運動が3年もの寿命を延ばす。 やはり、筋トレによる基礎代謝量を増やすことが、安定した健康につながる。 運動によりまず燃焼されるのは内蔵脂肪からである。 本来、基本的に糖分というのは サトウキビ、果物、一部の野菜、蜂蜜のみであり 現代では30年前から異常に摂取量が増えており、 今や餓死よりも食べ過ぎにより死ぬ数の方が多い。
果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?。ロバート・H・ラスティグ先生の著書。果糖中毒はもしかしたらアルコール中毒や薬物中毒、ギャンブル中毒と同じくらい恐怖に満ちていて依存性も強いのかもしれません。依存性が強いだけではなくて、果糖中毒は人間の健康を着実に蝕んでいく。学校教育でもア...続きを読むルコール中毒や薬物中毒だけでなく、果糖中毒について子供たちに教えるべきです。
なぜ人類は突然太り始めたのか? カロリー過多の食事のせいか?運動不足のせいか?炭水化物のせいか?油の取り過ぎのせいか? いまや世界中のほぼすべての食べ物と飲み物に沁みこんでいる悪玉物質は糖分だ。 レプチンがカギを握っている。
成功するダイエットの共通点は「すべて低糖であること、そして高食物繊維(ゆえに高微量栄養素)であることだ」という一文を、具にかつ科学的に論じたのが本書と言っていいだろう。おまけで我々が太る理由を細胞レベルから、個人、社会レベルまで概説してくれている。特に興味深かった点は、”少女における乳房の早期発達と...続きを読む肥満に関連がある”という箇所だ。硬派な印象のある書籍だが、冒頭で「この本は食べる人のために書かれたものです。食べない人は、読む必要はありません。」とあるように、筆者のユーモアが随所に現れており、楽しみながら読み進めることができた。
【感想】 現代社会に住む私たちは肥満を「暴食」と「怠惰」の結果――つまり自己責任だと感じている。食べ過ぎてしまうのは意志が弱いからであり、いくら食事を気にしても痩せられないのは、運動を続けようとする強い決意が無いからだ、と。 しかし、果たしてそれは真実なのか?ここ30年の間に体重過多以上の成人男性が...続きを読む15%から65%に増えたのは、意志の弱い人間が異常増加したからなのか?素行と性格に欠陥を抱えた人間が、人類の過半数を占めることなどありうるのだろうか? 本書『果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』は、そうした「肥満=自己責任」という通説にメスを入れ、環境がいかに人を太らせる方向に導いていったかを、膨大なデータを交えながら検証していく一冊である。 本書で筆者が繰り返し主張するのは、「肥満は決してあなたのせいではない」ということだ。 例えば「インスリンの分泌量」について。インスリンは、簡単に言うと脂肪を増やすホルモンである。インスリンは身体の臓器細胞にブドウ糖を取り込ませ、ブドウ糖からグリコーゲンが合成されるのを促進する。グリコーゲンが作られると肝臓のエネルギー貯蔵量が増え、血液中のアミノ酸が細胞に取り込まれる。そのため、分泌されるインスリンが多いほど、エネルギーを蓄える方向に身体が働き、結果として脂肪が増える。 このインスリンの分泌量におかしなことが起こっている。現代人は“体重にかかわらず”、同じ量のブドウ糖に対して、30年前に比べて2倍の量のインスリンを分泌しているのだ。この現象は個人の意志の力では説明できない。国中の人間のブドウ糖代謝の数値が2倍も変わってしまうなど到底あり得ない。明らかに、私たちの食べ物の中に含まれる「何か」が変わってしまったのだ。 その「何か」とはズバリ「糖分」、とりわけ「果糖」である。私たちが口にする果糖の量は、過去30年間に2倍になり、20世紀の100年間では6倍になった。 果糖は、あらゆる臓器で代謝されるブドウ糖とは違い、ほぼ肝臓でしか代謝されない。肝臓に果糖が送られると、そこで速やかに中性脂肪として蓄積される。加えて、果糖の摂取はインスリン反応を刺激せず、満腹感が起こりにくい。お腹いっぱいになっても、デザートは別腹で食べられてしまうのはこれが原因だ。満腹中枢が刺激されないためどんどんと食べ続けることができてしまい、結果として肥満につながる。また、長期に渡って果糖を食べ続けると肝臓のインスリン抵抗性(=インスリンが効きにくくなる)が増し、より多くのインスリンが生み出される。これがレプチン(=食欲抑制・エネルギー消費増進のホルモン)の伝達を妨げ、側坐核のドーパミンの除去を防ぐことにより、快楽が頭に残り続ける。結果、果糖にどんどん依存するようになっていくのだ。 現代社会では、ファストフード、加工食品のせいで、果糖を含む食事を避けられなくなっている。糖分はおいしくない食品をおいしくし、見た目を良くし、食品を長持ちさせる。かつ味付けが濃いものを食べるとより多くのドーパミンが分泌されるため、消費者はますます糖分に依存していく。 以上のとおり、肥満は決して自己責任ではない。19億人もの人が体重過多に悩むのは、ひとえに食品業界が作り出した環境のせいなのである。 ――減量がこれほどまでにむずかしいのは、インスリンのせいだ。私たちが暮らしている現代社会は、インスリンレベルをどんどん吊り上げている。進化論的な観点から言うと、私たちの先祖は、飢饉に瀕して脂肪を蓄えるために、一所懸命働かなければならなかった。そしてひとたび脂肪を蓄積したら、手放すようなことはしなかった。彼らの子どもたちは、生き延びたいと思ったら、このような運命に「子宮内」にいるうちから準備しなければならなかったのだ。 ――もしあなたが「どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをするわけではない」という事実にまだ一抹の疑念を抱いているとしたら、それは次の分析で吹き飛ぶはずだ。1日に1人当たり150キロカロリーが総摂取カロリーに加えられたとしても、糖尿病の有病率にはほとんど影響が出ない。だが、もしこの150キロカロリーが清涼飲料水から来ていたら、糖尿病有病率は7倍に跳ね上がるのだ。糖分はカロリーより危険なのである。糖分は毒なのだ。議論の余地はない。 ―――――――――――――――――――――― 【まとめ】 0 まえがき たった30年という短期間に、なぜ世界中でこれほどまでに肥満が広まってしまったのか。テレビのせい?ジャンクフード?炭水化物?脂肪?それとも炭酸飲料? その犯人は、世界中のほぼ全ての食べ物と飲み物に染み込んでいる「糖分」である。 1 世界が太りすぎている アメリカに住む2000万人の子どもたちが深刻な体重過多に陥っている。アメリカだけでも、毎年10万件の肥満手術が行われているが、手術1件あたりのコストは3万ドルもする。そして現在、死亡証明書の40%以上が死因に糖尿病を挙げている。ほんの20年前、その率は13%にすぎなかった。医療費の損失は2020年までに1920億ドルに達すると見積もられている。 肥満問題はアメリカだけでなく、発展途上国でも起こっている。たった10年のうちに、世界では栄養不足の人より、肥満の人のほうが30%も多くなってしまった。2008年にWHOは、世界では約15億人の成人が体重過多(BMI25以上)で、少なくとも4億人が肥満(BMI30以上)に陥っていると報告している。そしてその数は2015年までに、それぞれ23億人と7億人に増加すると推測されている。 本書の最も重要なメッセージは、脂肪を宿命としてあきらめる必要はない、ということだ。というのも、人は肥満そのものによって死ぬわけではないからだ。人が死ぬのは、臓器に不具合が生じるためだ。死亡診断書の死因に、監察医が「肥満」と書くことはない。そこには「心臓発作」「心不全」「脳卒中」「糖尿病」「がん」「認知症」「肝硬変」といった疾患名が記載される。正常体重の人も、こうした病気で命を落としている。つまり、肥満は慢性代謝性疾患の原因ではないのだ。肥満は、慢性代謝性疾患、すなわちメタボ症候群を抱えている「しるし」なのである。そして、あなたを殺すのは、このメタボ症候群なのだ。肥満とメタボ症候群は、重なる部分があるとはいえ、同じではない。肥満は人を殺さないが、メタボ症候群は命取りになる。 2 カロリーを減らしても脂肪は減らない 「食べたカロリーだけ動かないと太る」は間違いである。また、「どの食べ物から取ろうがカロリーは同じ働きをする」も間違いである。 食べる量を減らすと、エネルギーは燃えにくくなる。体は脳より賢いため、エネルギー消費量が、減少したエネルギーの摂取量にあわせて減ってしまうのである。 どの食べ物で取ろうがカロリーは同じ働きをする、とは言えない。なぜなら、カロリーの消費量は体にコントロールされていて、摂取されたカロリーの量だけではなく、その質にも依存しているからである。 炭水化物には2つのクラスがある。デンプンと糖分だ。デンプンはブドウ糖だけでできていて、あまり甘くなく、体内のあらゆる細胞でエネルギー源として使われる。糖分、その中でも真の悪は「果糖」だ。果糖は非常に甘く、例外なく脂質に代謝される。砂糖は表向き炭水化物だが、本当は脂肪と炭水化物が一つに合わさったものなのだ。私たちが口にする果糖の量は、過去30年間に2倍になり、20世紀の100年間では6倍になった。 燃やされるカロリーはすべて同じ働きをするが、口にするカロリーは同じ働きをするわけではない。そしてここにこそ、肥満の世界的大流行を理解する鍵がある。つまり、私たちが口にする食品の質は、食べる量に影響を与えるのだ。 肥満は自己責任なのか?体重を落とせないのは、その原因が性格の弱さにあり、「太る食生活を選んでしまった」ことに原因があるのだろうか?答えは否だ。食べ物の選択の余地の無い乳幼児まで体重が増えている例が報告されている。肥満は食生活と運動不足が原因という理論は、生後6か月の乳幼児グループについては、まったくつじつまが合わない。 では犯人は誰か?それは、私たちの生化学的反応の変化が原因であり、それを引き起こしたのは環境の変化なのである。 3 脳があなたを太らせる 食べるという行動を引き起こしているのは意思ではなく、生化学的反応とホルモンだ。 脂肪を溜め込むホルモンはインスリンだ。何かを食べると血糖値が上がり、その上昇率に合わせてインスリンを分泌するように膵臓に合図が送られる。そのあとインスリンは、グリコーゲンを作ることによって肝臓のエネルギー貯蔵量を最大にし、血液中のアミノ酸を筋細胞に取り込ませる。インスリンが多いほど脂肪が増え、インスリンが少ないと脂肪は血中に入って肝臓に戻る。そのホルモンを制御するのが脳の視床下部と下垂体である。 視床下部腹内側核は、脂肪の貯蔵と栄養素の代謝に関して、「レプチン」というホルモンとインスリンを受け取り、より長期的な戦略を立てる。それは「食欲不振誘発状態=これ以上食べ物はいらない、エネルギーを燃やせ」と「食欲増進誘発状態=食べ物が足りない、エネルギーを蓄えろ」という生理学的状態だ。 レプチンが十分に足りており機能していると、エネルギーを通常の速度で燃やすことができる。レプチン閾値が少ない人は余剰エネルギーをすべて燃やすようにレプチンが脳に伝えてしまう人だ。しかし、レプチンがうまく働かないとき(視床下部腹内側核がレプチンシグナルを検知できないとき)や、レプチン閾値が高すぎると、脳はこの状態を「餓えている」と解釈し、エネルギー消費が20%削減される。 地球上にいる19億人の太り過ぎの人間は、みな「レプチン抵抗性」問題を抱えている。つまり、これらの人々の視床下部はレプチンが検知できないため、飢餓状態にあると脳が思い込み、ブドウ糖の上昇に見合う以上の余分なインスリンを分泌しエネルギー貯蔵量を増加させ(暴食)、エネルギーの使用を節約させようとするのだ(怠惰)。 インスリンは、体のなかでエネルギーを脂肪細胞に貯めさせ、脳のなかでは、レプチン抵抗性と「脳の飢餓」を引き起こす。 通常は、「物を食べたのなら、燃やしたほうがいい。さもないと、体に溜まってしまう」と考える。この場合、体重増加は、2つの行動、つまりエネルギー摂取の増加(暴食)とエネルギー消費の低下(怠惰)の結果とみなされる。しかし、データが示しているのは、まったく逆のことだ。 エネルギーの貯蔵は生化学的なプロセスで、患者がコントロールできるものではない。エネルギーを燃やすことは、生活の質に通じる。というのも、エネルギーを速く燃やさせるもの、たとえば運動、エフェドリン、カフェインなどは、気分をよくしてくれるからだ。一方、エネルギーをゆっくり燃やさせるもの、たとえば飢えや甲状腺機能低下などがあると、気分は悪くなる。つまり、エネルギー保存の法則は、体が次のように考えているとして再解釈されるべきなのだ。「エネルギーを貯めたいのだけれど、燃やされてしまうことがわかっているので、食べなければならない」。この解釈では、生化学的プロセスがまずあって、体重増加はそのあとに来る。そして行動は、生化学的反応の結果である。 暴食と怠惰は、肥満の原因ではなく結果なのだ。この生化学的変化の要となるのはインスリンである。恐るべきことに、現代の大部分の人々は、体重にかかわらず、同じ量のブドウ糖に対し、30年前に比べて2倍の量のインスリンを分泌しているのだ。 4 糖分が脳に快楽を与える どうしてそんなに大量のインスリンを分泌するようになってしまったのか?それは食べることによる快楽物質(ドーパミン)の分泌のせいだ。 正常な状況では、十分な量を食べたあとは、レプチンがシグナルを腹側被蓋野に送って、ドーパミンの分泌を抑制する。その結果、食事による報酬の感覚が減る。 では、レプチンの共謀者であるインスリンはどうだろう?人はインスリンに対しては、十分な感受性を持っていることが普通だ。インスリンの仕事は、ドーパミンを側坐核内のシナプスから除去することにある。そのため、食事中に起きるインスリンの上昇は、さらなる食物の摂取からくる報酬の感覚を鈍くするのだ。これは、快楽経路に埋め込まれたサーボ機構として働いて、食べ過ぎを防いでいる。 でも、あなたにインスリン抵抗性があったとしたら?インスリン抵抗性は腹側被蓋野内でレプチン抵抗性を導き、側坐核からドーパミンの除去を妨げることによって、カロリー摂取の増加を促す。そして、エネルギー貯蔵庫が満杯になったとき、食べ物から、増強された快楽が得られるようになる。 ドーパミンは「身体が感じる」おいしい食べ物、つまり脂肪と糖分と塩分、カフェインを摂取すれば多く分泌される。ファストフードにたくさん含まれている物質だ。ファストフードはカロリーが高く、糖分、脂肪、塩分、カフェインが豊富に含まれている。それは、高度に加工されていて、エネルギー密度が高く、非常においしく感じるように作られている。これらを取り続ければ脳の報酬系が麻痺し、依存症状があらわれる。特に糖分は、セロトニンの輸送を助け、短時間、快楽を幸福の代わりにもたらす。 つまり、人間は快楽に毒され過ぎたのだ。快楽経路がきちんと機能していれば、エネルギーの貯蔵量が十分足りていれば、それ以上食べ物を口に入れないよう助けてくれる。しかし、レプチン抵抗性がある人は、十分な量を食べてもドーパミンが側坐核から消えず、さらに食べ続けさせる刺激が留まり続ける。 5 皮下脂肪は長生きの素、内臓脂肪は死の脂肪 信じられないかもしれないが、皮下脂肪(お尻や下半身につく脂肪)は多ければ多いほど健康にいい。一方で、内臓脂肪(腹部内部や臓器についた脂肪)は、わたしたちに常に害をもたらす。 肝心なのは、腹部だ。肥満・健康・長寿にまつわる問題はすべて、あなたの腹部の内臓脂肪、つまり「太鼓腹」の脂肪なのである。体の構成要素の1つで、全体重のたった4~6%を占めるだけの内臓脂肪が問題なのだ。ただし、この内臓脂肪の多寡は、約15年分の人生を左右する。 内臓脂肪の重さは、体重やBMIでは測れない。胴回りを測るのがもっともてっとり早い。それに近いのはベルトのサイズを測ることだ。男性では約102センチ、女性では約80センチを超えると、内臓に脂肪がついている可能性が高い。内臓脂肪は、大人でも子どもでもインスリン抵抗性と代謝性疾患のリスクと密接に結びついている。 また、もし誰か手伝ってくれる人がいるときには、お尻回りも測ってみるといい。ウエストをお尻回りで割った比率が女性で0.65、男性で1.0を超える場合は、インスリン抵抗性があることを示す警告になる。この比率が0.8以下であれば、代謝的に正常だ。 皮下脂肪をダイエットで落とすと、同じ量の筋肉も落ちてしまう。筋肉は体にいい。たとえ皮下脂肪が簡単に落ちたとしても、それは健康増進には役立たない。 また、何らかの合理的なダイエット法で、大きなお尻の脂肪を減らせると思っているなら、考え直したほうがいい。短期間なら、それも可能かもしれない。だが、皮下脂肪が落ちると、レプチンのレベルも低下し、脳はそれを飢えのサインと考えて、交感神経系の活動を低下させる。そして、エネルギー消費量を低下させ、気分を不調にして、迷走神経をオンにする。このいまいましい迷走神経は、あなたの食欲、インスリン、エネルギー貯蔵量を増加させて、失ったものを埋め合わせようとする。そして、最初に取り戻すのは内臓脂肪なのだ。 本当の問題は、体重を落とすことではなく、意味のある期間にわたって、落とした体重を維持することにある。どんな生活習慣の変化でも、たいてい最初の3カ月から半年のあいだは減量効果を発揮することを示す報告は無数にある。しかし、そのあと体重が一気に戻ってくるのだ。意味のあるレベルで減量を維持できる人の数は非常に少ない。 ダイエットが必ずしも効果を発揮しないことは研究によって判明している。運動療法はさらに効果がない。 ではどうすればいいか?短く言うと、内臓脂肪を減らすには、必ずしも減量する必要はなく、ほかの何かをすることが必要なのだ。 6 肥満界のヴォルデモート:果糖 低炭水化物ダイエット、低脂肪ダイエット、アトキンス・ダイエット、オーニッシュ・ダイエット、伝統的な和食。世界には様々な食事制限方法があり、それぞれに効果がある。だが、一つ共通項がある。全て糖分を制限しているのだ。 砂糖の成分は半分ブドウ糖、半分果糖だ。甘さを与えているのは果糖で、これこそ、究極的に私たちが追求している分子である。慢性代謝性疾患を引き起こすのは果糖なのだ。 アメリカ人は現在砂糖を1人1日約184グラム、年間にすると60キロ以上消費している。現在の果糖消費量は100年前に比べて5倍になり、過去30年間に2倍以上になった。 言いかえれば、私たちはただ単に食べ過ぎているだけではないのだ。私たちが口にする砂糖の量が増えているだけでなく、日々割り当てられた総カロリー量に占める砂糖の量も増えている。私たちが消費している総カロリーの20%から25%が、ティースプーン22杯分にあたる砂糖からきていることは、もはや避けられない事実なのだ。 世界の人口は2倍しか増えていないのに、砂糖の消費量は過去50年間で3倍になった。これは砂糖が世の中にはびこるにつれて、世界の1人当たりの砂糖摂取量が50%増えたことを意味する。 糖分にはブドウ糖、エタノール、果糖といろいろな種類があるが、ブドウ糖よりエタノールが、エタノールより果糖がより悪い。あらゆる臓器で代謝されるブドウ糖とは違い、果糖はほぼ肝臓でしか代謝されない。そのため肝臓に莫大な負担がかかり、徐々に脂肪化していく。果糖は身体中の細胞をより速く老いらせ、老化現象、がん、認知機能の低下を招く。加えて、果糖の摂取はインスリン反応を刺激しない。血糖値やレプチンレベルが上昇せず、満腹感を得にくいため、そのまま食べ続けてしまう。長期に渡ってこれが続くと肝臓のインスリン抵抗性を生み出し、慢性的な高インスリン血症を引き起こす。これがレプチン伝達を妨げ、側坐核のドーパミンの除去を防ぐことにより、快楽が頭に残り続ける。結果、果糖に依存する。 異性化糖ではなく天然の砂糖なら身体にいい、というわけではない。白砂糖、甘ショ糖、黒糖、蜂蜜、全てアウトだ。 7 果糖中毒の解毒剤1:食物繊維 食物繊維は栄養もなければ吸収もされず、身体を素通りしてウンチになっていく。だがこの性質が果糖中毒の解毒剤となる。 食物繊維は水溶性と不溶性の2種類がある。水溶性食物繊維は、消化と吸収を遅らせ、発酵してオナラになる。不溶性は全く消化されないため下剤効果があり、食物とその廃棄物が腸内を移動するスピードを増加させる。代謝の面から見ると、水溶性と不溶性の食物繊維の組み合わせは最強だ。不溶性食物繊維は、格子細工のようなものを構築して水溶性食物繊維がひっかかるようにする。一方、水溶性食物繊維はこの格子のギャップを埋めて、しっかりしたものにする。腸から血流へ向かう栄養素の流れがゆっくりになり、インスリンの量を抑制する。そのおかげで肝臓は入って来るものを完全に代謝する余裕ができるため、「オーバーフロー」がなくなる。ほか、 ・血糖値を下げ、脂肪を作らない ・悪玉コレステロールのレベルを下げる ・満腹感を感じさせる ・食事性脂肪の吸収を遅くする ・腸の善玉細菌を増やす というメリットがある。 食物繊維から最大の恩恵を引き出すには、手を加えていない全粒食品(精製、製粉、精米すると食物繊維が取り除かれてしまう)やジュースにしていない果実を取るのが良い。また、サプリメントでは意味がない。 8 解毒剤2:1日15分の運動 「食べた以上に動けば痩せる」はウソだ。身体に入れるカロリーは体重を増やすが、出ていくときに真逆の働きをするわけではない。 運動だけで有意な減量ができたことを実証する研究はただの1つも存在しない。科学的分析によって、エネルギー消費を増やして減量を促すという考えが誤りであることが最近示された。体重が減ったあとに減量し続けるには、エネルギー摂取量をさらに減らさなければならなくなるのだ。肥満の人が1ポンド分の脂肪を燃やし尽くすには、平均して3977キロカロリー分エネルギー摂取量を減らさなければならない。運動によって体重を落とすのが、まったく不可能とは言わないまでも、非常にむずかしいことがわかるだろう。 運動しても減量できない2つ目の理由は、運動すると筋肉がつくからだ。これは健康にはいいが、体重減少にはつながらない。また、軍隊のように環境がコントロールされていない状況では、不足分を埋め合わせるためにカロリー摂取が増大してしまう。 だが、運動のメリットは、体重減少以外の面にある。筋肉と骨を作り、身体を健康にすることだ。 運動すると、内臓脂肪、特に肝臓脂肪を犠牲にして筋肉がつくられる。けれどもこれは、体重計に乗っただけではわからない。運動はインスリンの感度を上げ、インスリンの血中濃度を下げることにより、レプチンシグナルがよりよく伝わるようにし、それによって、交感神経系の緊張、エネルギー消費量、そして人生の質を高めてくれる。 そして、こうした代謝作用の改善は、病気の予防に結びつく。3万8000人のアメリカ人男性を調べた研究では、運動することは、体重を正常に保つよりも心臓病の予防効果が高いことが示された。台湾で40万人以上の研究対象者について死亡率を調査した研究によると、中強度の運動を1日15分行うと、心臓の既往症がある人でも、3年間も寿命が延びることが示唆された。 ほか、 ・多くのエネルギーを燃やし、インスリン感受性を上げる ・ストレスを減らし、血圧を下げる ・肝臓脂肪に回されるエネルギー量が減る などのメリットがある。 ただ、運動のポジティブな効果は体と代謝にとっては素晴らしいものであるものの、その効果は比較的すぐに消えてしまうため、長持ちさせるには、しょっちゅう運動して効果を維持しなければならないのだ。研究によると、インスリン感度は運動を止めてから15日以内に基準値に戻る。 運動すれば減量できると考えるのはやめよう。何らかのダイエットと合わせて運動をしなければ、減量は望めない。 9 諸悪の根源――食品業界 何故食品業界は糖分を使いたがるのか?それは以下のとおりだ。 ①おいしくない食品をおいしくするため。糖分は、塩味、酸味、苦味、うまみの欠点を覆い隠し、大抵のものをおいしくする。 ②そそられる焼き目をつけ、見た目をよくするため。 ③食品をふっくら、滑らかにするため。 ④保存料として使えるため。糖分が含まれた食品は腐りにくい。逆に、食物繊維が含まれた食品は保存期間が短くなる。 あなたが食べる物の実権を握っている者たちは、全力をあげて、儲けようとしている。2010年、食品企業は1兆ドルに近い売上を計上した。あなたの健康が損なわれたとしても、食品業界はこの悪事を止めようとはしない。 10 環境を変えればやせる。でも、どうやって? 行動をコントロールしようとしても、うまくいかない。なぜなら行動とは単なる体の生化学反応の結果だからだ。行動のコントロールが長続きしない理由は、脳がレプチンシグナルを受け取ることができないと、飢えているとみなして、体重を増やす行動を体にとらせるからだ。しかし、遺伝的欠陥を持つ患者でさえ、コントロールされた環境に身を置き、食べ物の入手が制限されれば、体重を減らすことができる。 問題は、高糖分・低食物繊維の食べ物がこれほど簡単に手に入る世の中で、どうやって体重管理に役立つように環境を適切にコントロールするか、だ。 多くのダイエット法は脂肪をエネルギー源にしているものもあれば、炭水化物をエネルギー源にしているものもある。また、遺伝子によって効果的なダイエットは異なる。 ただ、あらゆるダイエットに共通していることが2つある。すべて低糖であること、そして高食物繊維であることだ。 自然界に存在する果糖は、サトウキビ、フルーツ、野菜、蜂蜜からもたらされる。最初の3つは果糖よりも食物繊維のほうが多く含まれ、最後の蜂蜜はミツバチにがっちりガードされている。自然界で糖分を手に入れるのは簡単なことではない。しかし人間はそれを簡単にしてしまった。そして、これこそ食品業界もアメリカ政府も認めたがらない真実なのである。なぜなら、一度認めてしまったら、糖分の量を減らさなければならなくなるが、彼らはそうすることができないし、そんなことをしたいとも思わないからだ。そしてこれこそ、「工業化しグローバル化した食習慣」が導入された国々すべてで、肥満率と慢性メタボ症候群の有病率がうなぎ登りに上がっている理由なのである。 具体的には次のことを実践してみよう。 ・甘い飲み物を日々の生活から除く ・食品を買う時、もし液体だったら、糖分は5キロカロリー未満でならなければならない。固形だったら、食物繊維を3グラム以上含んでいなければならない。 ・ジュースは炭酸飲料より危険(食物繊維が除かれているから) ・肉類、乳製品、野菜、魚など、本物の食べ物を買う。加工食品を控える。 ・低糖分、高食物繊維、低オメガ6脂肪酸、低トランス脂肪酸を食べる。 ・好きなだけ食べてOKなもの……全粒粉のパン、全粒穀物、加工されておらずオメガ6脂肪酸が少ない肉類、ナッツ、乳製品、豆類、フルーツ、野菜、植物油、卵 ・インスリンを減らす。食物繊維を取り、糖分を減らし、運動する。 ・グレリンを減らす。朝食にタンパク質をとり、寝る4時間前から食べない。 ・おかわりを20分待つ。 ・コルチゾールを減らす。運動する。 「安全な炭水化物」を食べればいい。つまり、インスリン抵抗性を抑制するために「低糖」の食事をとり、肝臓にエネルギーが押し寄せるのを妨げることによってインスリンの過剰分泌を防ぐために「食物繊維が豊かな食べ物」をとればいい。それと同時に「安全な脂肪」を食べるようにすればいい。 今まで見てきた様々なダイエット法に欠けているのは「本物の食べ物は、本質的によいものだ」という考えである。悪いのは、私たちが食べ物に対して手を加えることなのだ。
糖分の悪とそれへの対策。ポイントは食物繊維と思う。糖質制限や、原始人食などの各種ダイエット法を分析しているところも面白かった。
今や全世界的に問題となっている肥満について、最新の研究成果を一般読者向けに解説した一冊。 一般に肥満は食生活を含めた生活習慣の問題として片付けられることが多いが、実はその生活習慣は身体のホルモン・バランスの影響を強く受けるものであり、単純な「意志の問題」ではないと指摘する。合わせて長年その栄養価が...続きを読む無視されてきた食物繊維についてその重要性を解き、(加工食品ではなく)食物繊維を豊富に含んだ「本物の食べ物」を食べることを推奨する。糖分を過剰に添加して、人々の健康を蝕む食品業界に対しては、かつてのタバコ産業と同じ欺瞞に満ちていると舌鋒鋭い。 全体的に面白かったが、結論から言うとまだまだわからないことだらけ、と言うことらしい。
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中里京子
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