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皇族であることを知られたのちも、変わらぬ学友や軽業師ディアたちと平穏な日々を過ごすユリアヌス。だが、副帝となった兄ガルスの謀反の疑いから、宮廷に召喚され、裁かれることに……。そこで出会った皇后に女神アテナや母の面影を見出すのだった。【全四巻】 〈解説〉金沢百枝 〈巻末付録〉連載時日記(抄)
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Posted by ブクログ
前巻で、粗野ながら皇帝の親族としての誇りを見せ、性格の違うユリアヌスとは妙に気の合った異母兄ガルスは、副帝となってアンティオキア(現在のシリアとトルコの国境あたり)に向かう。巨大なローマ帝国の反乱を抑えるのだ。 しかし冒頭は、ガルスと、その妻コンスタンティア(コンスタンティヌス大帝の娘で、皇帝コンス...続きを読むタンティウス二世の妹)の残虐行為が並べられてげんなりする…_| ̄|○ 現在のローマはキリスト教を国教としているが、ガルスとユリアヌスの父はローマの多神教を信仰していたために殺された。ガルスもユリアヌスも、キリスト教に開教しているが、ローマ帝国での立場はかなり悪い。ちょっとしたことで反乱を疑われるし、もともとのキリスト教派閥からは失脚を狙われている。 もともとプライドが高く粗野なガルスは猜疑心を高めて、役人にも任地の人々へもあまりにも過酷で残虐な行為を行う。 妻のコンスタンティアは、本来兄と夫の取り持ちの役割なのだが、彼女がまた恐ろしく高慢で冷酷で自分こそが女帝になるべきだと思っている。 …もう、この夫婦、手がつけられません、目が合っただけで酷い殺され方しそう…(-_-;) 一連の残虐行為は、ガルス(と、ユリアヌス)の失脚を狙う大司祭エウセビウスたちには格好の口実となり、ついにガルスは皇帝コンスタンティウス二世に呼び出される。そんな折に、コンスタンティアが熱病で死んでしまう。もう誰もガルスを助ける者はいない。ガルスは罪人として処刑される。 ユリアヌスは、ローマ帝国の大都市ニコメディアにいた。哲学を学び、密かにギリシャ古典や宗教に親しみを感じている。身分を超えた友達もできた。金髪で明るい目のゾナス、高名な軽業師一味の花形ディア。ディアはユリアヌスを愛しているのだ。 ゾナスたち学友とはいい関係だし、ユリアヌスが知らないことをたくさん教えてくれる。しかし立場により見えているものの違いがある。ゾナスは政治論議をするが、ユリアヌスは実際に政治的理由で命も危うい。ゾナスは葡萄の収穫量から葡萄酒の相場を予測するが、ユリアヌスは葡萄相場を仕切る商人や役人たちが収穫量を減らすために葡萄畑を焼き払うことを知っている。市井の人々は一杯の葡萄酒を唯一の楽しみとし、それを巡っての争いもある。しかし取り仕切る人たちは自分たちが儲けるために手荒い真似をする。 そんな学びを行っていたユリアヌスだが、ガルスを排除したキリスト教派の次の標的はまさしく彼だった。処刑の危険に晒されるユリアヌスに運命のような出会いが訪れる。皇帝コンスタンティウス二世の皇后エウセビアだ。 この物語に出てくる女性はそれぞれが個性的です。 ユリアヌスの母のバシリナの明るさ。 コンスタンティウス大帝の娘コンスタンティアは冷酷で高慢で鋼鉄のよう。 軽業師の花形ディアが身分違いのユリアヌスに向けるまっすぐな想い。 そして皇帝コンスタンティウス二世の皇后エウセビアは、酷薄なコンスタンティウス帝を唯一動かせる妻で、性格も前向き、政治手腕もある人物。 そしてユリアヌスと皇后エウセビアはお互いを愛し合うようになる。もちろん秘密中の秘密。皇后エウセビアは、ユリアヌスを助けるために政治手腕を働かせたりコンスタンティウス帝を動かしたり尽力する。 ちょうどその頃、ガリア地方(現在のフランスとかベルギーとか辺り)ではゲルマン人との戦闘が起こっていた。皇帝コンスタンティウス二世はユリアヌスと自分の妹ヘレナを結婚させ、副帝としてガリア地方反乱の抑えとして赴任させることにする。 恋する皇后エウセビアは苦しさのあまりに政治どころでなくなる。その隙をつき、大司祭エウセビウスとその一派はユリアヌスを失敗させるために、自分の派閥の人間をユリアヌスの周りに配置する。 恋の苦しみのさなかに合った皇后エウセビアは、自分が完全に遅れを取ったことに気が付き、信頼できるサルスティウスをユリアヌスの側近として送り込むことで精一杯だった。 戦闘経験のまったくないユリアヌスが、兵訓練で経験を積む場面で彼の本質がよく見えるんですよ。 指示の失敗で軍隊が混乱したときに、自分の失策を認めて反省と更なる向上を使ったうえで「しかし兵の一人ひとりが自分と一心同体になり、自分の意志を読み取ってくれ!そうすれば等しく正しい動きができるはずだ!」と真摯に語りかける。 兵士たちは、経験もなく年も若く力も弱そうで、大帝の親族とは言え政治的には傍流であるユリアヌスの直接の言葉に、それまでの指揮官とは違ったものを感じ取った。 そしてユリアヌスは、ガリア地方を任されたからには「ガリア人の幸福」のための政治を行わなければならないと思っていた。これもいままでの指揮官とは違う考えだ。 <この若い副帝は、そうしたことを辛い境遇のなかで知らされながらも、なお人間本来の夢のような理想に憧れている。(中略) 人間が地上に生まれて、ただ一回きりの性をしか生きられないのなら、人間が果たせぬ夢と思い描いたこの美しい夢をどうして描かずに済ますことができるのだろう。あるいは、こうして夢を見続けた人間があるからこそ、ローマ帝国はこのように普遍の正義を保ち得たのかもしれぬ。(P385)> ユリアヌスは政治的には傍流だったために、むしろローマ帝国のあちらこちらに行ったり、勉学に励むことができた。そこで自分なりの宗教や政治の考えを持ち、自分で友人を選ぶこともできた。 このころのユリアヌスの宗教に対する考えは、キリスト教は人間に向いていて、ギリシャ・ローマなど他の神々は儀式や祈りだけ。しかしそんなキリスト教を信仰する人々は、政治的利用であり人々のことを考えておらず、自分の栄誉のために人を貶め蔑ろにする。 ギリシャ・ローマの神々は、昔からこの地にいた。それが急で強引なキリスト教布教により神々が消え去ることなどないだろう。(キリスト教はそれまでには激しい弾圧に合っていたんですけど) ガリア地方に向かったユリアヌスは、ローマ帝国の「疲労」を感じる。 ギリシアの神々を信仰しながらキリスト教の神にも祈るある女性が言った。「キリスト教徒は、自分を捨て、何もかも神の前に投げ出して、すべてを神の思し召しのままに委託する。そこに安らぎがある。ギリシャには美しい文章や高雅な彫刻があるが、人生の不安に怯えるときにそのようなものが何の役に立ちましょうか。キリスト教はただ真実だけで飾ることをしないのです。」 そしてアルプスを通り、ガリアとの辺境レーヌス河(ライン川)を越えてゆく旅路でユリアヌスはその地方の光景に天啓を受けた心地になる。 ついにゲルマン人との戦闘が始まる。激しい戦闘。だがユリアヌスと兵士たちは一体となり乗り越えたのだった。
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背教者ユリアヌス
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