クリュセの魚

クリュセの魚

小説・文芸
792円 (税込)

3pt

4.0

少女は孤独に未来を夢見た……亡国の民・日本人の末裔のふたりは、出会った。そして、人類第二の故郷・火星の運命は変わる。壮大な物語世界が立ち上がる、渾身の恋愛小説。

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

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    地球歴の2445年には火星の開発がかなり進んでいる。
    テラフォーミングがなされ、人が住むことができるようになり、都市ができた。
    さらに、火星の技術力は地球を超えるまでになっている。

    しかし、地球と火星間の移動には片道4日~1カ月を要し、それが交易の壁となっていた。
    そのため、地球の国家の支配を受けることもなく、火星は地球の国際法上は国家として認められていないものの、独立した存在となっていた。

    ところが、異星文明のワームホールゲートが発見された。
    地球から火星に瞬時に移動が可能となるこのゲートを、地球と火星それぞれに設置する計画が持ち上がった。
    火星の人々は危惧した。
    地球人が火星に押し寄せ、火星の資源が奪われるのではないか?
    そのため、抗議活動や独立運動が起こるようになった。

    そんな時代に、11歳の葦船彰人は火星の開星記念堂で16歳の大島麻理沙と出会い、恋に落ちる。
    それから何度か逢瀬を重ねていくが、麻理沙は謎めいた部分が多く、どこか神聖な存在だった。

    16歳になった彰人は火星軌道エレベーターでボランティアを行っており、そこに麻理沙を誘う。
    中継基地に接近する、火星の衛星であるフォボスを見るためだ。
    このときも麻理沙は不可解な言動が多く、個人認証には偽名が表示されていた。
    彰人はそれらから目をそらして、麻理沙と手をつなぎ、基地内の自分の居住区へと向かう。
    「彰人くんが選ぶなら、それが運命だったんだよ―わたしたちの」
    そうつぶやく麻理沙を抱き、朝を迎える。
    彰人に背を向ける麻理沙は、窓から火星の赤い大地を見下ろす。
    横顔は太陽にうっすらと照らされ、彰人にはその肩甲骨が羽をもぎとられた痕のように映る。
    そして、麻理沙は「きっと戦争になるね」と呟く。
    ---------------------------------------------------------------


    この軌道エレベーターのシーンがたまらなくいい。
    麻理沙のミステリアスな部分と、美しさと、「これから世界はどうなってしまうんだ!」っていうSFの壮大さが全部ぎゅっと押し込められていて、どきどきした。
    2人の出会いのクリュセの魚のシーンも情緒があって、印象的なシーンをつくるのがうまい。

    それだけに、ラストはもう少し感情的に仕上げてもよかったように思う。
    盛り上がりに欠けるとまでは言わないが、どこか静かだった。
    終盤にかけてSF用語が頻出するので、文章を読む流れが変わったことも影響しているかもしれない。

    最終的な彰人の選択には脱帽だった。
    てっきり、あの提案を受け入れるものだと思っていた。
    これこそが、本来人間がもつべき力だと感じた。

    0
    2020年10月07日

    Posted by ブクログ

    内容もさることながら、巻末の飛先生の解説が素晴らしすぎてうなりまくった。好きなテーマの作品なので楽しく読めたが、東先生の「弱いつながり」を読んでから読むと、更に理解が深まるしにやっとさせられる気がする。
    必然という言葉は私はちょっと怖いので、苦しく感じる箇所もあったけど、人間の魂や意識について、民族離散や国家について、幅広いテーマで語られる火星SFで面白かった。

    0
    2016年12月01日

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